芸人修行の仲間が集まると、先ず「なかなか芽が出なくてさ」とか「限界かな、壁にぶつかってさ」などの窮状から始まり、最後には「お互い頑張ろう」「まだまだくじけちゃダメさ」などと明日に期待をしながら終わるというのがパターンです。
こうしてお互いに、愚痴を聞いてもらって励まされることで、夢を確認しながらやる気を維持させていくことになるのです。
同じ境遇の仲間っていいな(^o^)
ところが今回は季節もゴールデンウィークということで、最初から暗い話は無し、「ゴールデンウィークはどうするの?」という話で盛り上がりました。
本来ならゴールデンウィークこそ稼ぎ時、その時期に仕事が無い事は通常時よりも落ち込んでいいはずなのですが、そこにさえ考えが至らず和気藹々としているのが、コチサとその仲間たちです^-^;
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コウくん
「おいらは自転車で山登りするんだ」
エリちゃん
「わたしは大道芸フェスタを見に行く」
など、安上がりでどこかに仕事の名残を残した連休計画が飛び交います。
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コチサ
「コチサはとりあえず、家で寝てるよ」
あっさり場の雰囲気を壊したコチサですが、忙しかった3月からずーとそれだけを励みにやってきたので、これは譲れません^-^;
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シンタロー
「でもさ、一度くらい、「ハワイです」とか「ゴルフ」ですとか言ってみたいよね」
コウくん
「誰かハワイ行ったことある?」
一同
「シーン」
エリちゃん
「ゴルフやったことある?」
一同
「シーン」
コチサ
「あるよ」
一同
「えっ?嘘ぉー」
コチサ
「コチサ、ゴルフバック持ってるよ」
コウくん
「寸劇の小道具?」
コチサ
「ううん。ちゃんとボール飛ばせるよ」
一同
「・・・」
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お金のかからないスポーツ「マラソン」こそ、いかにもコチサ的だと思っていたみんなは、コチサとゴルフの不釣合いに驚いたようですが、コチサ自身も「そうだ、コチサはゴルフセットを持っていたんだ」と思い出し唖然としました。
もう十年以上も前の話です。
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当時コチサは、ゴルフ番組のスタッフをしていました。
その番組は、黄月琴プロがゴルフレッスンをする番組だったので、毎回スタッフは黄プロと打ち合わせを重ねる事になります。
すると自然に会話はゴルフの話になり、ゴルフの腕を上げてこのバブル期を謳歌したい制作スタッフは、ちゃっかり黄プロに教えを願ったりしていました。
黄プロもまた人が良くて、明らかに才能の無いスタッフにも懇切丁寧に教えてくれました。
盛り上がったスタッフは、ことの成り行きで一同ゴルフセットを購入することになりました。
そして・・・
何故かコチサのもとにもピンクのゴルフバックが・・・^-^;
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コチサ
「えー、同じバックなら、通勤用のバックの方がいい」
ディレクター
「そう言わないでさ。ゴルフは腰をひねるからウエストのシェイプには最適だよ」
コチサ
「本当?・・・じゃぁやる」
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ということで、黄プロ指導の下(?)、本格的なゴルフレッスンが始まりました。
黄プロ
「上手よ、それでいいの」
コチサ
「本当ですか?ありがとうございます」
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コチサもようやくやる気が出てきました。
「コースへ出る日も近いぞ!」
スタッフの盛り上がりも最高潮でした。
ところが・・・
プロデューサー
「制作、終了です」
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一同
「えー!!!」
エリちゃん
「で、どうなったの?」
コチサ
「それだけだよ」
コウちゃん
「コースに出たの?」
コチサ
「番組が終わったんだからおしまい。コチサは出なかったよ」
シンタロー
「それって、ゴルフがそんなに好きじゃなかったってことじゃない?」
コチサ
「まぁ楽しみを見出すまでにはいかなかったって事かな」
エリちゃん
「でも、今もゴルフセット持ってるんだ」
コチサ
「うん、記念にね」
コウちゃん
「じゃぁさ、そのゴルフセットを使った新しい芸を考えようよ」
コチサ
「こういうのはどうかな?」
一同
「?」
コチサ
「よくさ、おでこに棒をたててバランスをとる人いるでしょ、それをゴルフクラブでやるんだよ」
エリちゃん
「ありがちぃ」
コチサ
「一本ならね。でも一本でバランスをとったら、そのままもう一本を足で蹴り上げてその上に乗せていくんだよ。それを何本も重ねて見事18本をおでこの上で一直線に立てるの」
コウちゃん
「出来るわけないじゃん、そんなの」
コチサ
「できるよ、だって風呂桶を頭に積み重ねる人だっているじゃん^-^;」
一同
「・・・」
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自宅に戻り、コチサは10年ぶりにゴルフバックを開けてみました。
毛糸の帽子をかぶったアイアンがカタカタ音をたてました。
その音は、
「放っとかないで、使って下さい」
と言っているようでした。
コチサは少し可哀想になってきました。
もしコチサが、ゴルフアイアンに生まれたとして、10年以上も使われずに押入れに入れられていたらどうだろう?
・・・きっと寂しい気がすると思いました。
でも・・・
今後コチサがゴルフをやると言うことは、まず考えられません。
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そうすると・・・
やっぱり、ゴルフクラブを使った「芸」を考える事が、寂しいアイアン君たちを救い出す道のような気がしてきました。
そんな事を考えながら、お風呂のお湯をためていたので、つい熱湯になっていたことに気がつきませんでした。
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アイアンで湯船をかき回しながら・・・
「風呂桶を頭に乗せる人もいれば、アイアンを風呂桶代わりに使う人間もいる・・・発想を変えればきっとこのアイアン君にも新たな道が見つかるはずだ」
そう確信したコチサは、背中がかゆくなったので、パターで孫の手代わりに背中をかきました。