No.151 2001.10.5
「コチサに牛を丸ごと一頭食べさせる会」が発足以来の危機を迎えています。
大ピンチです。
会長
「もしもしコチサさん、今月の会合どうします?」
コチサ
「やっぱり、少し気になりますね」
会長
「そういえば国会議員が、牛を食べよう!なんてパフォーマンスをしてましたね」
コチサ
「でも、食中毒とは違って、発病するまで30年とかかかる場合もあるっていうのに、あれ意味あるんでしょうか?」
会長
「パフォーマンスですな」
コチサ
「グルメ番組で、食べるシーンにおしゃれな俳優さんや女優さんを使う意味がやっとわかりました」
会長
「親父が肉食べてる姿を映してもねぇ」
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と、ひとしきり政治談義(?)に花を咲かせた所で・・・
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会長
「もしもしコチサさん、今月の会合どうします?」
コチサ
「やっぱり、少し気になりますね」
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どうどう巡りの会話が続きます。
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会長
「焼肉屋、結構空いてますね」
コチサ
「吉野家さんもそうでしたよ」
会長
「困っている方たちが大勢いるんでしょうね」
コチサ
「それに比べたら私たちなんて贅沢な事で悩んでますね」
子供の頃、大路さんという、牛を飼っている家がありました。
コチサは牛が大きくて恐くて、いつも遠くから見ていました。
小学校のスケッチ大会で、コチサは大路さんの牛を描きました。
「ほら、そんな遠くから見とらんで、大丈夫やからもっと近くで描いてみぃ」
そういって大路のおじさんは、コチサを牛のそばまで連れて来て描かせてくれました。
コチサが恐がる為、「大丈夫だ、大丈夫だ」といいながら、大路のおじさんは最後までそばについていてくれました。
「おじちゃん、ありがとなぁ」
描き終わった事と、恐い牛から離れられてほっとしたのか、コチサは逃げるように帰っていきました。
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そして
「おじちゃん、コチサの牛の絵が金毘羅写生大会に貼り出されるんよ」
信じられない出来事に、コチサは両親よりも先に、この大路のおじさんに報告に行きました。
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大路のおじちゃん
「そりゃ、良かった、ムツ姫も喜んでいるやろ」
コチサ
「ムツ姫?」
大路のおじちゃん
「あぁ、さっちゃんが描いた牛の名前じゃよ」
コチサ
「ふーん、じゃぁムツ姫にお礼を言ってくる」
大路のおじちゃん
「おらんよ」
コチサ
「・・・」
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その時コチサは初めて、牛がどうなっていくのかを知りました。
母牛と子牛がいて、子牛は1年から2年でいなくなっていく事を・・・
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大路のおじちゃん
「さっちゃん、焼肉大好きだったな?」
コチサ
「・・・」
大路のおじちゃん
「これからは、もっと好きになってくれなくちゃな。ムツ姫にお礼を言うためにもな」
コチサ
「?」
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大路のおじちゃんの心配をよそに、コチサは「肉は食べない」なんていう神経の細い子には育たずに、相変わらず焼肉大好きに育ったのですが・・・
今ごろ大路のおじちゃんも、牛が高く売れずに困っているのかも知れない。
コチサ
「会長、やっぱり焼肉は食べなくちゃいけません。牛の落札価格が下がって困る人がいるんですから」
会長
「そうですか、じゃぁ今月も決行という事で・・・」
コチサ
「い、いや、今月は、蟹の取引相場を下げないようにすることも大切なんじゃないかと思うのですが」
会長
「・・・ははーん、そういうことですか」
余談
コチサの鉛筆書きの牛の絵は評価されたみたいで、先生に
「これは、金毘羅写生大会に出せるぞ、色をつけて来い」
と言われたのですが、色彩感覚が乏しかったようで、色をつけた作品は、
「こりゃ、ダメだな。教室の後ろに貼っておいてやる」
と言う事になったのでした。
金毘羅写生大会は「一時の夢」で終わったのでした
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