コチサニュース No.148 2001.9.28

  久しぶりの「コチサ哲学」を一席。



 コチサのジョギングは、一回10キロから12キロ。

 よたよたヘナチョコで走っています。

 一周12キロ弱のコースを選ぶと、だいたい63分から65分の間で走りきった時が気持ちの良い時です。

 過去に数回60分を切るときがありましたが、これはたまたまよっぽど気分が良くて、レースペースで走った時のことです。



 その日は何を思ったか

 「今日は60分を切ることを目標にしよう!」

 と決めて走りはじめました。

 もう数年も60分を切った事がないので、ペース配分がつかめず、最初からハイペースで飛ばしました。

 周回コースを5週して、それから2キロ先のトラックに駆け込んで2週してゴールのコースです。

 コチサは、腕時計「セイコースーパーランナーズ」の周回目標ラップタイムを9分15秒に設定しました。

 周回コースの入口でラップボタンを押せば、もし次のラップボタンが押されるまでに9分15秒以上かかれば、アラームが鳴って知らせてくれます。

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 1周2周のハイペースのツケが3周目にやってきました。

 周回のかなり前でアラームが・・・

 「まずい、貯金が無くなった」

 ペースを上げようと思いましたが、体が思うように動きません。

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 テレビで見た、小出監督が有森選手にアドバイスをしている声が思い出されました。

 「手を大きく振れ!」

 「腿を高くあげろ!」

 まるで、コチサが指導を受けているように、その指示を実践します。

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 その内、頭がボーっとしてきて、いつもの夢遊状態に入りました。

 コチサはこの時に、いろいろな考えが出てきます。

 「このペースなら、61分台はいくな、目標に対して1分遅れか、上出来だね」

 「目標ってなんだろう?そうかぁ、わざと大きな目標を設定して、少しでもそれに近づけば成功なんだ」

 「でも、それって目標なのかな?」

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 それから今度は、「走れメロス」の話が浮かんで来ました。

 「もしこれがメロスだったら、1分違いが大きな違いになるよね。いや一秒違いでも天と地ほどの差があるね」

 メロスが59分59秒でゴールしたら、、自分自身や相手や周りに対して誇りを持てます。

 でもそれが61分01秒だったら、たとえ自分がどんなに頑張ったとしても「自分を褒める」事なんか出来ないでしょ。

 それどころか、わざと遅れた作戦だとさえ思われかねません。

 頑張った努力なんて報われなくなってしまいます。

 まぁ走っているときは、結構辛いから、コチサも極論で考えてしまうのですが・・・

 「本来目標って、達成できなかったら意味をなさないんじゃないの?近づいたって、それは61分01秒のメロスなんだよ・・・」

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 この時、何かコチサの中で弾けるものがありました。

 目標を設定すること、実行することに対する、これまでとは全く違った意識が湧きあがったのです。

 「目標」という言葉が付いていても、「努力目標」なんて言葉があります。

 これまでのコチサは、「目標」と「努力目標」の違いを、たいして考えもせずに「目標」って言ってきて、ほとんどの場合「努力目標」の気分でいたんじゃないか?

 本来「目標」は、達成する為に設定するのであって、達成しなかったら「目標」自体は失敗であって、「よく頑張った目標」とか「あとちょっとだった目標」とかは無いんじゃないか?

 コチサはこれを「走れメロス論」と名づけ、学会で発表しようかと思いました。
 (MC学会ね)

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 ・・・と、ここまでなら、良くあることです。

 眠っている夢で思いついた「名案」は、得てして目覚めると忘れていたり、覚えていても大したものじゃなかったりします。

 コチサが夢遊状態で走っている時に考えることもそんなもんなので、結局はその場だけの大発見なのです。

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 ところが・・・

「目標は達成しなけりゃ目標じゃないんだ・・・1秒遅れも3時間遅れも同じだい」

 と、どうやらコチサは必死で走っていたようです。

 周回コースを終わってグラウンドのトラックに飛び込んだのが、57分01秒。

 あと2分59秒あります。

 残りはこのトラックを2周です。

 過去に3分を切った例はありません。

 悲鳴のような唸り声を上げながらコチサは疾走しました。

 その後は時間を見ることもせずに、ゴールに駆け込みラップボタンを押しました。

 暫くは草に倒れこみ、息が出来ませんでした。

 「あーぁ、ほんの数秒、ダメだったろうなぁ」

 ようやく息が楽になりタイムを確かめると・・・

 59分59秒97

 こんなこと計ったって出来ません。

 100分の3秒です。

 この100分の3秒が、「努力目標」を本当の「目標」にしてくれた気がしました。

 そしてこの100分の3秒が、コチサの中で「走れメロス論」が、確かな哲学として信じるに足るものになった気がしました。



 コチサ

 「・・・って言うことなんだよ、わかる?」

 社長

 「まぁね」

 コチサ

 「まぁね、なんて軽いものじゃなくて、100分の3秒の神様が、コチサに「走れメロス論」は正しい、頑張れって教えてくれた気がするんだよ。だから明日からはチェックリストの80%が終わったからよくやったなんて、自分を誉める生き方はしないんだよ」

 社長

 「ほうー」

 コチサ

 「チェックリストは100%こなして初めて達成なんだよ。それ以外だったら1個も10個も同じなんだよ」

 社長

 「で、明日からはチェックリストの項目を半分にするってわけだな」



 フン、こういうひねくれた人間には、人生の光は永遠に見えまい


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