コチサニュース No.049 2001.2.5

  ほぼ一年前にお話しした、コチサの実家の建て替えのお話し。

 真っ黒になったかつてのお家の大黒柱と、ぴかぴかの新築用の大黒柱を見比べて、お父さんへのねぎらいの言葉と弟へのエールを綴ったものでした。

 その立て替えの実家が、この度ついに完成。

 お披露目の集まりを催したとの連絡が入りました。

 なんと着手から10カ月、それでもまだ外壁は今後にゆっくり作っていくそうです。

 田舎ならではの、のどかな話しです。



 コチサ

 「本当に長かったね」

 お母さん

 「やっと、とにかく電気が通じて家の中で生活が出来るようになったんよ。だからお披露目だけでも先に済ませておこうと思ってな・・・」

 コチサ

 「いったい全部がちゃんと完成するのは、いつになるんだろうね?」

 お母さん

 「夏くらいには終わるやろな」

 コチサ

 「東京の人たちに話したら、そんなに時間かけてお城でも建てているのか?って言われたよ」

 お母さん

 「まぁ、大工さんが一人やからな・・・」



 コチサの実家を建てているのは、近所の大工の中尾のおじさん。

 この近所の、歴史ある家は全て中尾のおじさんの手によるものです。

 「中尾の建てた家は100年持つ」

 それが町の人たちの言葉です。

 去年の年末の帰省で、コチサは中尾のおじさんとお話をしました。



 コチサ

 「おじさん、ご苦労さまです」

 おじさん

 「おう、お帰り、さっちゃん」

 コチサ

 「春には出来るかな?」

 おじさん

 「頑張るけどな、まぁおじさん一人で建ててるからな」

 コチサ

 「なんで、職人さん雇わないの?」

 おじさん

 「分け前、減るからな」

 コチサ

 「へっ?」

 おじさん

 「冗談だよ冗談、隅から隅までおじさんが全部作らないと心配なんでな」

 コチサ

 「へぇー職人だね」

 おじさん

 「さっちゃんのお父さん、お母さんに気持ちよく住んでもらいたいからね」

 コチサ

 「でもなんか頑固職人って感じ・・・お客に文句つける寿司屋の親父みたいだね」

 おじさん

 「そ、そんなことはないだろ・・・」

 コチサ

 「なんか、出来上がっても、玄関は右足から入れとか言うんじゃないの?」

 おじさん

 「相変わらず無茶苦茶な言いぐさだな、さっちゃんは。子供の頃のまんまだな」

 コチサ

 「早く新しいお家が見たいだけだよ」

 おじさん

 「でも、いい加減に作るより、しっかりと建てた方があとあと良いだろ」

 コチサ

 「中尾の建てた家は100年持つ」

 おじさん

 「おっ、知ってるねぇ」

 コチサ

 「みんな言ってるからね」

 おじさん

 「なんだか照れくさいねぇ」

 コチサ

 「でも誰も見た人いないんだよね」

 おじさん

 「へっ?」

 コチサ

 「おじさんいくつ?」

 おじさん

 「いくつって、お父さんとたいして変わらないよ」

 コチサ

 「本当に100年持つか、誰も見てないってことだよね」

 おじさん

 「まっ、まぁね」

 コチサ

 「100年経って初めて、あぁ本当に中尾の家は100年持つんだなって言われるよね」

 おじさん

 「まっ、まぁね」

 コチサ

 「そんときおじさんは150才くらいかな?」

 おじさん

 「まっ、まぁね」

 コチサ

 「時におじさん、相談なんだけどね・・・」

 おじさん

 「へっ」

 コチサ

 「この家、80年くらいで手を打たない?その分早く仕上げるという事で・・・」

 おじさん

 「さっちゃん、何かそんなに早く建てたい訳でもあるの?」

 コチサ

 「いや別に無いんだけどね・・・いつまでもお父さんお母さんに仮住まいさせておくのもねぇ」

 おじさん

 「すまないねぇ、おじさんも頑張るから、お父さんとお母さんにももう少し辛抱してもらうように、さっちゃんからもお願いしておいてよ」

 コチサ

 「うん、いいよ」



 結局、あっさり言いくるめられたコチサはニコニコと東京に帰って来ました。

 そしてお母さんから電話が・・・



 お母さん

 「お前、中尾のおじさんに、80年ものにして早く建ててくれって言ったんだって?」

 コチサ

 「お父さんとお母さんに、早く新しい家に住んでもらいたっかたからだよ」

 お母さん

 「おじさんな、120年ものにするって言ってたわ」

 コチサ

 「な、なんだ?協定違反か・・・それともすねたのか?」

 お母さん

 「さっちゃんは、子供の頃と何にも変わってない。あれなら150才くらいまで生きるだろ、そん時何言われるか考えたら恐くなる、だから今までで一番しっかりしたもんを作ります・・・そう言っとったわ」

 コチサ

 「おちゃめなおじさんじゃないの」



 そして、旧正月に合わせた、コチサのお父さん邸披露会は、晴天に恵まれ、多くの人たちの暖かい祝福の言葉を受けて無事終了したそうです。

 そこにはもちろん、これまでの中で一番の作品と胸を張る中尾のおじさんもいました。

 たった一人でこつこつと、素敵なお家を建ててくれた中尾のおじさんに心から感謝致します。

 そしてコチサはおじさんのお心に報いるよう、精進を重ねて150才の誕生日を元気いっぱい迎えられることを約束致します。


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