コチサニュース No.048 2001.2.2

 2月3日は節分です。

 今年も全国の神社では、お相撲さんや著名人に囲まれた神主さんによって、集まった人たちに夢と希望の豆がまかれます。

 もう随分前のことです。



 コチサ

 「豆まきですか?」

  当時の事務所の担当

 「うん、長野県の○○寺」

 コチサ

 「そんなとこまで一人で行くんですか?」

 担当

 「うん、ほら、うちの場合ギャラ安いからさ・・・」  コチサ  「それって、コチサが安いってことですよね」

 担当

 「うん、そうなんだけど・・・
いや、そんなことないけど・・・
本来うちはタレントっていうよりはナレーターの事務所だからね、こういうイベントに出す事はないんだけどね。
実は去年、ナレーターの○○さんが、初めて行って豆をまいたら、ご存じのようにあんな有名になっちゃったでしょ・・・
だから縁起モノだから今年もって、神社の方から連絡があってね・・・
それで我が事務所としてもイチオシのナレーターとしてコチサ君にね・・・」

 コチサ

 「そんな、単なる偶然ですよ。二度も無いですよ」

 担当

 「うん、そうなんだけど・・・」

 コチサ

 「だからコチサが選ばれたんですね」

 担当

 「うん。あっ、いや、そんなことは・・・」



 そして当日・・・

 朝5時起きでした。

 地図を頼りに、電車とバスを乗り継いで、目指すお寺にようやく到着しました。



 タレント控え室は、神社の中の大きなお部屋を使います・・・

 そこに招かれたタレントの方たちが、炬燵を囲んで待機することになっていました。

 おいおい・・・

 ドラえもんの大山のぶ代さんと砂川啓介さん夫妻・・・

 俳優の浜田光夫さん・・・日活青春スターだ!(古いよね)

 女優の伊佐山ひろ子さん・・・

 そして・・・

 居並ぶビックネームたち・・・

 まいったな・・・

 いくらずうずうしいコチサとはいえ、さすがに炬燵に入る勇気は無く、すきま風吹く部屋の隅に縮こまっていました。

 見ると、反対側の隅にもう一人、縮こまっている可憐な少女が・・・



  コチサ

 「おはようございます」

  可憐な少女

 「おはようございます」

 コチサ

 「一人で来たんですか?」

 可憐な少女

 「えぇ、あなたも?」

 コチサ

 「えぇ・・・多分マネージャも無しで、電車とバスを乗り継いで来たのは二人だけみたいだね」

 可憐な少女

 「あなた、お笑いの方?」

 コチサ

 「失礼だな、ナレーターだよ。去年○○さんがここで豆をまいて売れたからって、二番煎じで来たんだよ」

 可憐な少女

 「あたしは歌手なの・・・○○○って言うの」
 ※ごめんなさい、もうしっかり名前忘れてる  コチサ

 「コチサです。よろしく・・・は、はっくしゅん」

 大山のぶ代さん

  「あなた達、そんなところに座っていたら寒いわ、こっちで炬燵に入りなさい。ミカンもあるわよ」

 コチサ(のび太の声で)

 「あ、ありがとう、ドラえもん!」
 ※これは嘘、当時のコチサにそんなこと言える度胸は無い。ただ、そのくらい感謝したい気持ちだったという事さ

 コチサ・可憐な少女

 「ありがとうございます」
 ※これが現実



 そして、いざ豆まきの時はやってきた。

 なんか、五重塔の欄干みたいなところに一列に並ぶコチサ一行。

 元気な神主さんの声が響く

 「福はぁーうち」

 ドラえもんが続く

 「福はぁーうち」

 眼下からは、来場者の歓声が響く・・・

 不思議だ・・・

 初めは恥ずかしかったんだけど、いったん声を出すとなんか病みつきになる・・・

 大きく豆を投げると、キャーキャー言って取り合いをしてくれる



 可憐な少女

 「福はぁーうち!・・・ねぇなんか偉くなった気分」

 コチサ

 「福はぁーうち!・・・うん、確かに」

 可憐な少女

 「鬼はぁーそと!・・・芸能界の魔力ってこういうのかなぁ」

 コチサ

 「鬼はぁーそと!・・・うん、きっとこの何十倍も何百倍も、そんな気分になるんだろうね」

 可憐な少女

 「なんだか恐いね」

 コチサ

 「うん、ただおまけで呼ばれているだけなのにね」

 可憐な少女

 「勘違いされているうちに、自分まで勘違いしちゃうのかな」

 コチサ

 「ドラえもんに声かけられたりすれば、つい勘違いしちゃうよね」

 可憐な少女

 「あたしね、実はまだレコードデビューも決まってないんだ・・・福はぁーうち!」

 コチサ

 「コチサだって、まだまだ外郎売りの修行中だよ・・・福はぁーうち!」

 可憐な少女

 「あたし、レコード出したら連絡しようか?」

 コチサ

 「うん、コチサも世界のMCになったら連絡する」

 可憐な少女

 「福はぁーうち!・・・こういうの虎の威を仮る狐って言うんだよね」

 コチサ

 「福はぁーうち!・・・寄らば大樹の陰とも言うけど・・・」



 宴はたけなわで、それぞれが自分のサインをしたゴムボールを投げている。

 「大山のぶ代」とか「浜田光夫」とかのサインボールを楽しみしている人たちが、「益田沙稚子」と書かれたボールをキャッチする。

 それでもキャッチ出来たことで大喜びしている。

 きっと家に帰って思うんだろうな・・・

 「誰だ、こいつ?」

 でも、縁起もんだし・・・

 捨てるに捨てられないんだろうな・・・

 こうして、益田沙稚子サインボールは、部屋の隅っこで暫く生きながらえ、年末の大掃除に紛れて、うまい具合に消えていくんだ。



 可憐な少女

 「鬼はぁーそと・・・自分のサインボール投げるのに、申し訳なくて福はぁーうちなんて言えないよね」

 コチサ  「鬼はぁーそと・・・ごもっとも、でもそんな優しい気持ちじゃ、もしかしたらなかなか生き残れないのかもね・・・鬼はぁーそと」



  可憐な少女からのレコードデビュー(今ではCDデビューだ)の連絡は、まだ無い。

 そしてコチサの方も、ご存知の通り。

  この地球いっぱいに、「福はぁーうち!」


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