No.504 「目覚めよチャッキー!」 2005.4.18
 ジャグリングチャッキー

 久しぶりに元師匠チャッキーの依頼により、大道芸のステージでピエロMCの仕事をさせていただきました。

 馴染んだ場所での、定例イベントのステージなので、アットホームな雰囲気満載です^-^;

 コチサも3ヶ月ぶりの登場にも関わらず、覚えていてくれたお客さんたちからたくさんのお声をもらいました。

 おかげで緊張することもなく、無事ステージを全うすることができました。

 集まってくれたお客様、お声を掛けてくれた皆さん、本当にありがとうございました。

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 さて・・・

 久しぶりのチャッキーとの仕事です^-^;

 現師匠の厳しい指導の中、生活改善に努めているコチサにとって、チャッキーの「ユル〜イ」スタンスは、再びコチサにぬるま湯の気楽さを思い出させるのではないかと、いささか心配でした^-^;

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 ところで・・・

 この日のイベントには、ベテラン俳優の佐藤允さんがお客様でいらしてくれました。

 開演前、元師匠チャッキーと佐藤さんは、旧交を温めあっていました。

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 コチサ
 「やぁやぁ、コチサです^-^」

 佐藤允さん
 「今日は、久々にチャッキーのマイムを見せてもらおうと楽しみにやってきましたよ」

 コチサ
 「あらま!」

 佐藤允さん
 「?」

 コチサ
 「チャッキーはもうマイムはしませんよ」

 佐藤允さん
 「えっ?そうなの?」

 コチサ
 「かつて日本一とうたわれたチャッキーのマイムですが、元弟子の私でさえ、お仕えしていた4年間、一度も見た事がないのです」

 佐藤允さん
 「えっ、なんで?どうしちゃったんだよチャッキー?」

 コチサ
 「チャッキーは風船を覚えてしまったんです。風船で花や動物やらをチョコチョコっと作る技を覚えてしまったんです」

 バルーンでコチサが作ったお花たち

 佐藤允さん
 「?」

 コチサ
 「マイムは毎日の厳しい鍛錬が必要です。でも風船は覚えてしまえば簡単です。毎日、酒を飲んで歌って遊んで過ごしたいチャッキーにとって、風船は甘い汁を撒き散らす麻薬になってしまったんです」

 チャッキー
 「おいおいコチサ、そこまで言うなよ^-^;」

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 本番15分前、チャッキーの姿が消えました。

 そして5分前、CDを片手に戻ってきました。

 チャッキー
 「CD屋3件目でやっと見つけたよ。ボクの出番の時、今日はこれかけてね」

 コチサ
 「ん?・・・恋人よ?・・・五輪真弓さんじゃん・・・」

 そしてチャッキーは、久々に本来のチャッキーの衣装であるチャプリンのスタイルに着替えました。

 コチサ
 「いったい何がどうしたんだい?これから何が起こるんだい?」

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 佐藤允さんの話

 チャッキーとはじめて会ったのは1981年、もう25年にもなるね。

 パリの広場だった。

 たくさんの大道芸人が観光客を楽しませていて、チャッキーもその中の一人だった。

 ただチャッキーの周りには、観光客より現地フランスの人、そして当時のボクのようなパリに居候をして貧乏暮らしをしている邦人が多く集まっていたな・・・

 チャッキーのパントマイムは、世界的にもトップクラスだったから、ぼくらは大いに笑って楽しんだもんだよ。

 それだけでも充分に満足だったんだけどね。

 最後の最後にチャッキーは、BGMをシャンソンから変えたんだよ。

 今でも鮮明に覚えているよ・・・

 あのイントロからすでにぼくたちはチャッキーに・・・いや故郷ニッポンに強烈に襲い掛かられたんだね・・・

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それが、五輪真弓さんの「恋人よ」だったそうです。

 あのメロディーに、あの五輪さんの心をえぐるような歌声・・・

 その音楽と沈みゆくパリの夕暮れを背景に、物悲しそうにマイムを踊るチャッキー・・・

 チャッキーのマイムが、人々に感動を超えた心をえぐる衝撃を与えたそうです。

 邦人の留学生たちは、郷愁の思いに涙を流したといいます。

 佐藤允さんは、胸をおさえ「ここが痛くて痛くて、涙が止まらなかった」と振り返っていました。

 現地の人たちにもその光景は胸を打つものがあったようで、賑やかな大道芸広場が、水を打ったように静まりかえり、チャッキーの一挙手一投足に注目をしたそうです。

 そして万来の拍手!!!


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 25年の時を経て、この日本の大道芸の会場に、佐藤允さんが来てくれています。

 そして五輪真弓さんのCDをコチサに手渡したチャッキーが、出番を待っています。

 コチサは少し震えながら、スイッチを押しました。

 耳馴染みのある「恋人よ」のイントロが流れました。

 そしてチャッキーが・・・

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  ♪チャッキー

 
  枯葉散る 夕暮れは
  来る日の寒さを もの語り
  雨に壊れた ベンチには
  愛をささやく 歌もない
  恋人よ そばにいて
  こごえる私の そばにいてよ
  そしてひとこと この別れ話が
  冗談だよと 笑ってほしい


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 コチサには見えました。

 25年前のパリが・・・

 夢と希望に燃える、若き日の佐藤允さんとチャッキーの姿も・・・

 いつもの風船おじさんと違うチャッキーに、お客さんも驚いた様子です。

 あの日のパリのように、この会場も水を打ったように静まり、人々の視線がチャッキーの一挙手一投足に集まりました。

 そして・・・やはり万来の拍手!!!

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 佐藤允さんは、チャッキーと固い握手をされて帰って行かれました。

 後に残ったチャッキーは、両足の筋肉がプルプル痙攣して立つことさえ出来ません。

 本来なら、ここで突っ込みがコチサの役割なのですが、そのコチサをしても言葉が出ませんでした。

 「ここが痛くて痛くて・・・」

 胸を押さえた佐藤允さんの言葉が蘇ります。

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  ♪チャッキー

 
  利路(じゃりみち)を 駆け足で
  マラソン人(びと)が 行き過ぎる
  まるで忘却(ぼうきゃく)望むよに
  止まる私を 誘ってる
  恋人よ さようなら
  季節はめぐって くるけれど
  あの日の二人 宵の流れ星
  光っては消える 無情の夢よ

  恋人よ そばにいて
  こごえる私の そばにいてよ
  そしてひとこと この別れ話が
  冗談だよと 笑ってほしい


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 目覚めよ!チャッキー!!!

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