No.270「朝を称える天使の歌声!」  2002.10.28

 写真・・・いい天気

 早起きの朝のひとこま・・・

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 コチサはいまだに二層式の洗濯機を使っています。

 部屋の室内にはちゃんと洗濯機置き場があるのですが全自動用なので、二層式の洗濯機しかないコチサは、ベランダに出して使っています。

 だからコチサにとって冬の洗濯は、真冬に頭から滝の水をかぶる修行僧の方々の気持ちがわかるような気分です。

 手先から伝わる水の冷たさが、頭のてっぺんまで届き、体の芯まで「シャッキ!」と締まります。

 こんな時、コチサは外郎売を大きな声で練習します。

 何か声を出さないと冷たさに負けてしまうからです。

 修行僧の方々が滝をかぶりながら念仏を唱えるのは、それが修行だからもあるでしょうけど、何かを叫び続けていないと意識が無くなってしまうからだとわかりました。

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 コチサ

 「うわぁー・・・拙者親方と申すは・・・うわぁー」

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 などと一人で大騒ぎをしながらやっています。

 写真・・・洗濯もの

 でもこれが本当に真冬になると、コチサは本物の修行僧ではないので、お湯を沸かしてバケツに溜めておいて、時々そこに手を入れるなどという「技」も使います・・・

 寒さの中、ベランダに飛び出して発声練習をしていると、冷たい水の事など忘れて少し良い気分になれます。

 早朝の冷気の乾いた空を突き破るように、コチサの声は天に向かって一直線に進みます。

 時折、鳥の声が混ざるくらいで当たりは静かそのものです。

 そういう時、コチサは天の神様に外郎売を届けている気になります。

 最近では、神様もストレスが溜まっているような状況にあるかもしれません。

 一日が始まる朝を、神様だって気持ちよく迎えたいと思っているはずです。

 そう考えると、洗濯の水の冷たさを紛らわせる為の発声ではなく、この早朝の清々しさと厳しさに応える、爽快さの中に威厳のある発声を届けなくてはならない使命感が沸いてきます。

 そして洗濯も無事終了・・・

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 コチサは事務所に向かう為、元気に胸を張って外に飛び出します。

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 コチサ

 「おはようございます」

 道路をお掃除をしてくれる近所のおばさん

 「おはよう。朝から元気ね」

 コチサ

 「はい、それだけが取り柄ですから・・・」

 おばさん

 「朝、大きな声で歌ってるのもあなたでしょ?」

 コチサ

 「はい。すみませんご迷惑でしたか・・・つい調子に乗って声が大きくなっちゃったのもしれません」

 おばさん

 「いいのよ、きれいな声だから、迷惑にはならないわ」

 コチサ

 「ありがとうございます。それだけが取り柄ですから」

 おばさん

 「でもあなた、声はきれいだけど音階がないわ」

 コチサ

 「へっ?」

 おばさん

 「あれじゃ、歌を歌ってるんじゃなくて、お経をあげているみたいよ」

 コチサ

 「あれは、外郎売りで・・・」

 おばさん

 「頑張ってね。せっかく声はきれいなんだから、後は音程さえ取れればね」

 コチサ

 「はぁ・・・」

 おばさん

 「大丈夫よ。人間もとから音痴な人っていないんだって。こないだテレビでやってたわよ」

 コチサ

 「行ってきます・・・(・・;)」

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 写真・・・ニコニコがいっぱい

 これまで歌を歌って音痴と言われたことは数知れず・・・

 しかしまさか「外郎売」でも言われるまでになるとはね。


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