「コチシム」第12章次点作品

第12章のナイスな「コチシム」作品群

今回は最後のせいでたくさんご応募いただきました。
全部載せちゃえと思ったけど、
「今後のコチシムブック化計画」等の絡みもあり、
4編の掲載となりました。


[第12章次点作(その1)]
(ここは当然、そう「厚木のコウちゃん」の作品です)

「あれ、変だぞ」
「何が?」
「なんで、社長が横にすわってるんだ?」
「・・・・・・」
「それに飛行機、ちっちゃいぞ」
「これは特別チャーター便なんだ、お前専用なんだぞ、すごいことなんだぞ」
「でもちっちゃいのは嫌だ!」
「お前な、大統領機だってこの大きさだぞ」
「なんで、コチサ専用機に社長が乗ってるんだ」
「・・・・・・」


「チャーター便行方不明に」

本日未明「成田空港26時発特別便」が行方不明になりました。機は定刻に離陸をした後、管制塔の指示を無視し、空港上空を旋回すること数回、その後機首を西に向け急上昇をした後肉眼から消え、レーダーからも消えてしまいました。
機は乗員乗客の他、MCの益田沙稚子さんと所属事務所の社長の二人が搭乗する特別機でした。
益田沙稚子さんは、インターネットを通した世界的MCとして今回アメリカからの特別招待を受け、基調講演に向かうところでした。


「MC便失踪!乗員の生存確認!ますます深まる謎」

昨日行方がわからなくなった、MC益田沙稚子さんの搭乗した「成田空港26時発特別便」の乗員の生存が確認されました。
パイロットを含む乗員6名は成田空港フライト乗務員室内にて、睡眠状態でいるのを同僚の副操縦士らに発見されました。
外傷や薬物による事件性は無く、当人達も「何故ここで眠っていたのかわからない」と今の所、事情聴取は進展を見せておりません。
これによって、飛行機は誰が操縦して飛び立ったのかなど新たな疑問が生じています。


「MC便失踪!行方不明者は2名のみ」

MC便失踪事件について昨夜、成田署は「この事件にかかわる行方不明者は、MCの益田沙稚子さんと所属事務所の社長の二人のみ」と発表しました。


「丸亀動物園の猿山のボス交代」

香川県の丸亀動物園のボス猿が、先週7年ぶりに交代しました。新ボスになったのは雌猿の「亀千代」。動物園側では、この亀千代はいつのまにか野生猿が迷い込んでしまったものとして、詳しい年齢等は不明と発表しています。
また、今回のボス交代劇の特徴として、同時に野生から紛れ込んだ、老獪な雄猿「鶴吉」の強力なサポート体制が上げられています。これによって猿社会も人間社会並の秩序文化の時代に突入したのではという見方も生まれています。


「今日の亀千代」

お客さんから投げられたアイスクリームを独り占めして食べることで、すっかり人気者になった香川県の丸亀動物園のボス猿「亀千代」は今日も元気に相棒の「鶴吉」と声を荒げてはしゃぎまわっております。


「ウッキィー、キキキキ(何か変だぞ)」
「キャッキー、キキ?(何がだ?)」
「ウッキィー、キキキキ(何か変だぞ)」
「キュキュ、キャッキー、キキ?(だから何がだ?)」


◆コチサの寸評

おいおいおいおいおい。
これどういうこと?
コチサ本当の山猿に戻っちゃったの?
この話しの暖かいところってどこだと思う?
コチサは乗員が無事であることをいれた部分だと思う。コウちゃんは「それはミステリアスな部分を強調したかったから」って照れ隠しすると思うけど、そういう人たちのそういう部分で「コチシム」が運営されてきたことにコチサは感謝します。


[第12章次点作(その2)]
(第3回育成作品作者、代理妻1号「コースケ」さんの作品です)

 「何であんたが国際線に乗っているんだい?」
 威圧的な言葉がコチサの耳に飛び込んできた。これからアメリカに向かうために、飛行機の座席で待っていたら思いがけない声が耳に入ってきた。そう。幼少の頃のライバルとして、競ってきたあのアッコちゃんである。
 「あら、何で山猿が一般の人達に混じって飛行機に乗っているんだ。山猿が乗るのは貨物機じゃないのかい。」
 これにカッとしたコチサが、文句を言おうとしようとした口をあっこちゃんは指で押さえ、コチサが声を出す前にあっこちゃんがまた喋りだした。
 「フン。知っているよ。これからアメリカに行くんだってね。世界メディア評議会や3大ネットワークのTV出演等色々活躍するんだって。あんたがねぇー。
 いいかい。ちょっと有名になったからって自惚れるんじゃないよ。現実はもっともっと厳しいんだから。少しでも気抜いたり手抜きしたら、あっというまに潰されたり、下から抜かされたりするんだからね。あんたがどこまで耐えられるから楽しみだねー。ハッハッハッハー。」
 と高笑い。

何コイツ好きかってに喋りやがって。それとスチュワーデスは何やってるだ、これから離陸するのに通路に立ちっぱなしだゾ。早く来てコイツを何処かへ連れってくれ。と、コチサは思っているが、そんなことはお構いなくあっこちゃんは喋り続ける。
 「そうそう。それから、なんだかあんたを慕う連中が見送りに来てるよ。何考えて、いるのやら・・・・・・じゃぁなっ!」
 と、出口に向かって歩きはじめた。こちらも言いかえそうと座席のシートベルトを外し、通路へ出てた。
 「あっ!」
  もうそこには、あっこちゃんの姿は消えていた。
 「何今の?」
 と思った瞬間いきなり窓の外が昼間のように明るくなった。
 「今度は何なの」
 と窓を覗くと、火の玉が宙に舞っていた。いや、正しくは舞い降りていた。よくよく見ると照明弾がゆらゆらと降りていた。今度は一気に5発の照明弾が打ち上げられてた。で、よくよく目をこするとそこには・・・・・・。
性風俗への行ってしまったゆみちゃん、アルバイト時代にお世話になった清掃のおばちゃん達や証券会社の人々、クメ・プロモーションの社長久米次郎や、タレントの相沢、山田、河埜、結城、また織田哲など、今まで知り合ったあの人やこの人がたくさんたくさん居た。
 この人達の中には手を振っている者。大きな旗を振っている者。手をメガホンの形にして叫んでいる者・・・・・・。
しかも、皆のコチサへの熱い応援歌が聞こえる。物理的ではなく精神的に。なんて素敵な人達なんだろうと思いつつ、皆の声援さえあれば、あまりにも大きい地球を相手にがんばれると思った。

そこへ、スチュワーデスが来て、もうすぐ離陸するからとのことを告げられ、コチサは席に戻りシートベルトをした。飛行機のエンジン音が高まり、そろそろと離陸位置に飛行機は移動した。ギュイーンとさらにエンジンは高まり離陸へと、いっきに加速しタイヤが地上から離れた。大きな夢を描く小さな少女を乗せて。
飛行機は地上から離れるとグングングングンそのまま高い空へ・・・・・・。高い高い空へ・・・・・・。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「あらぁ。いつのまにか寝てしまったわ!それもそうねもう夜8時だもの」
 「疲れてんのよこの娘。もう1ケ月前からコチサおばあちゃんが来るんだぁ〜って凄いはしゃぎようだったのよぉ。お母さん。ちょっとこの娘ベットに寝かしてきますからね。」
 と、コチサの娘、真美子はコチサの孫を抱いて部屋を出ていった。
 ここはコチサが生まれ育った四国。今、コチサは休暇の為戻って来ているのである。故郷はいい。一番おちつく。自分の娘を寝かしに行ったコチサの娘が戻ってきた。
 「お母さんゴメンなさいね。帰ってきてそうそう娘の相手させて。」
 「いいのよ。かわいい私の孫ですもの」
 「で、それからどうしたの?」
 「どうしたって?」
 「さっきの続きよ。私もよく子供のころお母さんから聞いたけど、いつもすぐ寝てしまって最後まで聞いたことが無いのよ。だから聞かせて」
 「そうだったけぇ?まぁ夜はまだまだ長いし」
 「わぁ〜い嬉しい。そからどうなったの?」
 「それからねぇ・・・・・・・・・・・・」

 外には過去から現在、さらに未来へと照らし続ける月の光が、彼女らの会話を邪魔しないように静かに降り注いでいる。


                            - 完 -


◆コチサの寸評

「コチシムフィナーレ」に相応しい、なつかしのキャラ総登場ですね。
ここでも、おだやかな晩年コチサを演出してくれました。
どうも「コチシム通」の人たちは、晩年のおだやかなコチサに「ストーリーの完遂」を求めているようです。
それだけ、今のコチサが走り過ぎ、急ぎ過ぎってことかぁ?
まぁ今のコチサからは「コチサばあさん」なんて考えられないけどね。


[第12章次点作(その3)]
(長編作家、「PEACE」さんの作品です)

その時、彼女は奇跡を見た。
ハッキリと目の前で本物の奇跡を見た。
目から止めど無く涙があふれた。
「私達は勝ったんだわ・・」

1970 セブ島

この美しい海と珊瑚礁に囲まれた南の島で一人の少女が生まれた。
彼女の名はリサール・ルンナリン。
艶やかな黒髪と、吸い込むような黒い瞳をもつこの少女は、いつも海の遠くを見つめていた。
ローマカトリック教徒の両親をもつ彼女は、いつも協会でお祈りしていた。
「神様、どうか私をここから出してください・・海の向こうに・・」

漁師の父は、暇を見つけては娘を抱きかかえ、港を歩きながら娘に話かけていた。
「ほら、みてごらん、、あれがパパのお船だよ」
少女は心の中でいつも思ってた。
(いつか私も船をもつわ、、そして、この島から出るのよ)


1970 四国香川県

瀬戸内海に面した美しい町で、一人の少女が生まれた。
彼女の名は益田沙知子。
いつも海の向こうを眺めていた・・・・


1983 マニラ

ベニグノ・アキノ暗殺される


1983 セブ島

少女は初めて恋をした。相手は年上の男だった。
たくましい体をした青年と、一緒に海をわたろうと誓い合った。
だが、たまたま父と男の会話を聞いてしまった彼女は、目の前が真っ暗になった。
「あんたの娘は上玉でっせ、こいつは高く売れますよ」
彼女は深く傷付き、家を飛び出した。

それから1ヶ月後、13才の少女は初めて島を出るチャンスを手に入れた。
母親が反対する中、彼女の決心は変わらなかった。
初めてもらった仕事をするために船に乗り込んだ。
一人の男が彼女に念を押した。
「本当にいいのか?もう帰ってこれないぞ」
美しい少女は、厳しい目で住み慣れた街を振り返りながら答えた。
「私の決心は変わらないわ」
船はルソン島に向けて出発した。
この国の首都、マニラ目指して。


1983 四国香川県

コチサは初めて恋をした。
そして深く傷ついた。


1986 マニラ

首都は、ゲリラによる爆弾事件があいついでいた。
少女はテロリストとしてはプロ級の腕を身につけていた。
公会堂、バス、公園、スタジアム、道路のゴミ箱、いたるところで仕事をこなしていた。
爆弾ルンナ、、これが彼女のあだ名になっていた。
「2月の大統領選挙さえ終われば日本に行ける・・」
彼女は口癖のようにいつも唱えていた。

運命の日はやってきた。
開票速報がニュースで流れる。
「ウソだ!」
誰もが口々に騒ぎ出した。
「でたらめだ!こんな選挙あるか!」
全国民の怒りは頂点に達した。
街は抗議のデモで半狂乱状態になった。

ルンナリンは、怒りが沸々と込み上げるのをこらえながら、ボスの声を無線でじっと聞いていた。

「今こそ立ち上がる時が来た!
 本日、この時をもって、我々はテロリストではない!
 我等こそ国家なり!
 ここに反マルコス政府軍を旗揚げし、大手を振って戦線を布告する!
 同士達よ、銃を天高く掲げ上げろ!
 生きとし生けるもの全ての為に!
 我等の自由と未来の為に!
 死んでいった同士達の為に!
 我等の命の続く限り、最後の血の一滴が尽きるまで!
 断固として戦おうではないか!
 諸君と勝利の美酒を交わす時まで、しばしのおわかれだ。
 幸運を祈る! アディオス!・・・・・」

彼女は祈った
(勝利の女神よ、我等に微笑みたまえ)

そしてまもなく、彼女は軍との力の差を歴然と見せ付けられた。
バリケードはまるでオモチャのように戦車に踏み潰され、完全に戦車部隊に周囲を包囲されていた。
弾も手榴弾も底をつきた時、悪魔の爆音が空から響いてきた。
ヘリコプター部隊が空まで包囲した。
(私はここで死ぬのね・・・)
悪魔の爆音は徐々に徐々に上から近づいてくる。
(さぁ、蜂の巣にしてちょうだい!)
全身が恐怖でガタガタと震えだし、顔からは血の気が引いていた。
まるで刑の執行を直前に待っている死刑囚のように、体を震わせながらじっと目を固くつむっていた。
ヘリコプターの爆音と突風が全身に痛いようにぶつかってくる。
目を開けたら、顔の直ぐ前にヘリコプターが飛んでいるかのような錯覚におち、おそるおそる目を開いてみた。

その時、彼女は奇跡を見た。
ハッキリと目の前で本物の奇跡を見た。
目から止めど無く涙があふれた。
「私達は勝ったんだわ・・」


1986 四国香川県

コチサは放送室で中継を見いていた。
コチサは一言も語らず、マイクのスイッチを切った。
モニターの音量をスピーカーにつなぎボリュームを上げる。
「ニーチェス、東京へ行こう、、、」

つづく(^^;


さて、この二人の運命はいかに!
空港で運命の出会いがまっているのか?
それとも、アメリカで出会うことになるのか?
それは次回のお楽しみ、、、

バッハハ〜い(^O^)/~


そして、待つこと数日・・・・・(コチサ談)


わぁーーーー!!!

ごめんなさい!
ごめんなさい!

締め切り間に合いませんでしたm(__)m

え?忘れてたんでしょ?って?

ブルブル!そそそ、そんなことは決してございません。
もう、朝から晩までコチシムのことは一度たりとも
頭の中から離れたことはありません。
忙しかったなんて言い訳しません。
ごめんなさいです。

そんでもって、あのつづきですが、
え?もういい?締め切った?
いいんです。締め切ってもボツになってもあのまま
尻切れとんぼではバーチャルコチサさんがかわいそうです。
で、どうしましょうか、、つづきは、、、
え?いまから考えるのかって?
んだんだ、いまから考えるんだけろ(^^;
って、話は変わりますが、HPリニューアルするんですね!
わお!楽しみですぅ、、、
さて、
えーと、、、


長い弁明だなぁ〜(コチサ談)



「成田空港26時発特別便」 まずこれだ!(^^;
と、特別便・・・・・・・・なぬ?

とりあえずパス、、、
「涙の大合唱」
よし、これからだ!
大合唱でしょ?

なぬ?


んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そうだ!
コチサさんは社長とわかれて大きなトランクを転がしながら搭乗口へと消えていくんですよね、、
そう、実はその時、ボロボロ泣いていたんです。
社長の前では涙はみせまいとして、わざとそっけなく別れたんですが、でも本当は別れ惜しくてしょうがなかったんです。
「一緒に来て」
この一言が言えなかったんですねぇ、、もう強がりなんだから、、
社長も社長で、本当は一緒に付いてってやりたかったんです。
でも、そこはぐっと我慢したんです。
コチサさんは、振り向きたい衝動を必死に押さえながら搭乗口へと消えていきました。

コチサさんの田舎では、その日は朝から大騒ぎだったんです。
両親からコチサさんがアメリカに行ってしまうと聞いた近所の人達がなんとしてもお別れを言いたいと言い出したんです。
あのゴルフ場の一件以来、村の人達はコチサさんに希望を与えてもらったといって、コチサさんはある種の教祖的な存在になっていたんです。
「我々に希望を与えてくれたコチサになんとかお礼をいいたい」
村の人々はみんなで朝から話し合いました。
そこで
「今から東京さ行くべ!」
そして村の人達全員で東京へ、、、行かない!

って、ちょっとまてよ、、
いや、違う、、、あーーーーーーーーーーーーー!
いいこと思い付いた!
今のナシね、、、
搭乗口に消えるコチサからやりなおし、、、

コチサの目からは止めど無く涙があふれ出した。
(社長、ありがとう・・)
心のなかで何度も繰り返し叫んでいた。
コチサは知っていたのである。
全ては社長が自分の為に仕組んでいたことを。
(コチサ、頑張れよ!オマエに俺の夢をたくしたぞ!)
社長も泣きながら、心の中で叫んでいた。
コチサは後ろを振り向きたい衝動を必死に押さえながら歩いた、、、
(社長・・・)
こちさはこらえきれずに振り向こうとした瞬間
「振り向くな!早く行け!山猿!」
そう叫んだ社長の顔は涙でぐっしょりだった。


まって、、、
やっぱり特別機は無理だよ、、、(^^;
でも、このままいくと、あの謎のフィリピンねーちゃんはどこで登場するんだべ?
まいっか、、(^^;

つづきね、
社長の顔は涙でぐっしょりだった。。。


機内に腰を下ろし、あふれ出る涙をぬぐうコチサの脳裏には、今までの沢山の出来事が走馬灯のようによみがえってきた。

体育館で初めて人前でしゃべったこと。
阿部君と二人で放課後までフルートの練習にいそしんだこと。
放送室でアナウンサーになることを決心したこと。
さらわれそうになったとき、お父さんが助けてくれたこと。
つぼ八で掃除のおばさん達が送別会を開いてくれたこと。
万里、里子、美智子達のポスターに写った笑顔。
後藤久美子のバックで流れた自分の声。
初めて自分のオフィスを構えたこと。
自分のホームページから送られてきた自分のウィンク。

全てが、まるで昨日のことのようによみがえってきた。
(私がここまでこれたのも、社長のおかげだわ・・・)

機体がゆっくりと動き出した。
コチサは必死に窓にしがみつき、遠くのロビーの窓から社長を探そうと目を凝らした。
その時、大きなガラス窓に横一列に並んで、こちらを見ている集団に気が付いた。
一生懸命こちらに手を振っている集団の一番右側に忘れもしない親友の姿を見つけた。
「アッコちゃん!」
遠くて顔がハッキリ見えるわけではないが、
コチサにはそれがアッコちゃんであることがしっかりとわかった。
その隣にはアッコちゃんのお母さんがいる。
あの時、学芸発表会で歌ったメンバーが勢揃いしている。
山田先生もいる。
「みんな見送りに来てくれたのね!」
ロビーでは、みんなが一生懸命あの時の歌を合唱していた。
その歌声はコチサまで聞こえないが、コチサも同じ歌が自然と口からこぼれてきた。


見送ってくれる人は誰もいないルンナリンは、ゆっくりと滑走路を動き出した飛行機の窓から外を見つめ、日本に来てからの苦しかった日々を思い出していた。
この偏見と差別に満ちた国には未練はなかった。
夢と希望に胸を膨らませて初めて日本に降り立った時、彼女を待ち受けていたのは売春婦のバイヤー達だった。
恋人に騙されそうになったとき、彼女が逃げる術は命をかけて戦うことだった。
やっと溜めたお金を全財産叩いて日本まで来た彼女を待っていたのは、彼女を騙そうとした恋人と同類の人種達だった。
休みなく店で働き、身を削って稼いだお金を惜しげもなく実家に送金し続けた彼女の運命を変えたのは母の死だった。
自分を売ろうとした父の為に仕送りをするつもりはなかった。

飛行機は速度を上げてゆっくりと離陸しはじめた。
二人は別々の思いで遠ざかる街の灯かりを見つめていた。

 今度こそ自由の切符を手に入れたんだわ!
 私は絶対にやってやる!スターダムにのしあがるのよ!
 あいつらを全員私の前にひざまづかせてみせるわ!
 奇跡は本当に起きるってことを思い知らせてやるわ!

 いよいよ世界にはばたくのよ!
 わたしは負けないわ!
 私の声を世界中に轟かせてみせる!
 いいえ!私の言葉を世界中の人に聞かせるのよ!

それぞれの思いを乗せて、機体はゆっくりと夜の空へと
吸い込まれて行った。


く、くるしーーーーーーー!!!
けど、まぁいいや(^^;

またね〜


◆コチサの寸評

またね〜
って、これどういう意味かしら?
「爆弾ルンナ」に比べてこちさは、「白馬のルンナ」って感じ?
深読みすれば、民衆蜂起のパワーに対する平和ぼけニッポンというPEICEさんのメッセージって取れ無くもないけど、「おまぬけコチサ」って感じも・・・・・
でももしかしたら、「前半の書き出しに比べて後半の辻褄合わせに泡食ったPEICEさん」っていうところが正解かも知れないし。
でも相変わらずのパワー押し切りの後半に比べて、前半はちょっと違う「グッド、ぐっど!」さんテイストのPEICEさんって感じで別な一面を堪能させて頂きました。


[第12章次点作(その4)]
(第4回育成作品作家、大垣のバンビーノさんの作品です)

空港でごった返す人々。
全てがコチサを送りに来てくれた人たち。
数珠なりにコチサを囲む人たち。
「この人達見たことがある」「この光景も見たことがある」

それは、コチサにとって最も触れられたくない部分、思い出したくない部分の突然の覚醒だった。


あぜ道を歩くコチサ。もう付いてくるものはいない・・・・・
「東京へ行こう、ニーチェス」

そうコチサは、あの日こういう数珠なりの人をかき分け、一言も言葉を言えずに故郷を後にしたのだった・・・
(コチサ註:第4章育成作品参照)
その後の人生の中でコチサが唯一気がかりな、落とし前をつけていない、いわばコチサの傷跡だった。

数珠なりの中から人が出てきた。
見覚えのある人だった。
恐かった。何も言えずに口をぱくぱくするコチサがいた。

あの日、成す術を失った村人達の指示を求める姿に一言も発しなかったコチサに、その後の「村の会」は紛糾した。
コチサが一言、以前のように「ゴルフ場建設への弊害」を口にしていたら、怒りの矛先は一気に行政に向かい、フラストレーションのはけ口として村の会は行政攻撃を始めただろう。
あの時、何故コチサは一言も発しなかったのか?
以前のように、どうして村人一人一人に言葉を投げかけなかったのか?

「それが、このごろやっとわかってなぁ」
見覚えのある顔は、空港には場違いな格好をむしろ誇るように、コチサに語りかけた。
「立派なゴルフ場ができたけん、見に来るとよか」
そして、
「わしらはもう迷わんよ」とも・・・・・

村の会は荒れ果てた土地を前に、「ゴルフ場がもたらすもの」「ゴルフ場が破壊してしまうもの」を自分たちの問題として考えることから始めた。
コチサの歩んだように、今の問題として切り取らずに時間の流れの中で、自分たちの考えが熟成するのを辛抱強く待った。
そうすることが、コチサが自分たちを前に何故一言も語らずに姿を消したかの回答に繋がるとみんなわかっていた。

「誰も最初から、あんたが私らを捨てて、逃げたなんて思ったことはなかったよ」

ゴルフ場は、当初の予定の規模を半分にして着工された。村の会の意向でその土地は全くの横半分、縦半分ではなく複雑な形を残しての半分ではあったが、今ではかえって、その複雑な地形が、コース設定に彩りを添えていると喜ばれている。

「畑を相変わらず、続けて居る奴もおるし、ゴルフ場に家族で雇われておる奴もおる。でもみんな自分で決めたことじゃけん、泣いてる奴はおらん。そうそうあんたのお母さんも建設中は、壁塗りのアルバイトに来なさってよくアイスクリームを買って帰っていきおったわ」

「「これが答えだ」そうなんだね、ニーチェス」
答えがでない答えもあるって思っていたけど、これも答えなんだね。
コチサはなんか重りが取れた気分で大きく息を吸い込んだ。

「おいおい、もうニーチェスは、あんただけの友達じゃないんだから、独り占めしたらいかんよ」
その男が笑った。


◆コチサの寸評

コチサ嬉しい。
前回の育成作品で「ゴルフ場問題」が槍玉に上がったきり何の音沙汰もなかったバンビーノさん。
こういう形でちゃんと覚えておいてくれて、結論を出してくれるなんて。
ここでもバンビーノさんは、何が良くて悪くてという結論を出してないけど、コチサは良くわかるよ。
前回の時も何も言わなかったこと、そしてこういう形で答えを委ねてくれたこと。
ここでも一つ、コチシムのドラマが完結しました。