「コチシム」第3章次点作品

第3章のナイスな「コチシム」作品群

今回は仮題のせいもあり、
「フルート」を絡めた「クラブの先輩との恋」
というパターンが多かったけど、
その中から異色な作品を含めて掲載しますので
お楽しみ下さい。


[第3章次点作(その1)]
(名古屋の愛子ちゃんの作品です)

大阪に転校したアッコちゃんが夏休みに帰ってきました
「中学生のくせにお化粧している」
コチサさんはまたまたびっくらこきました

夏休みの誰もいないコチサさんの中学の校庭で、一人佇み長い髪を風に靡かせ、アッコちゃんはフルートを吹いています
その姿は瀬戸内海に潜む人魚のようだと地元の噂になりました

そしてここは瀬戸内海を望む小高い岸壁
ここにも、潮の香りというより打ち上がった魚の匂いにむせながら、潮風に短めの髪はごわごわに絡みつき日に焼けた真っ黒な肌と自転車で鍛えられた健脚をあらわに、フルートを吹く少女がいました
地元の人魚の噂に対抗心をむき出しにしたコチサさんです

あっこちゃんは大阪で子供タレントスクールに通ってるという噂です
「私が助けたことは忘れたのかい、帰省をしたのに恩人の私には挨拶なしかい」
コチサさんが渋茶を飲みながらばばあのように文句をたれていると、文句の相手のアッコちゃんが笑顔でやってきました
「中学生のくせにお化粧している」
これがコチサさんの最初の台詞です
「佐知子さん、ごきげんよう」
コチサさんには生まれて初めて聞く挨拶の言葉です
アッコちゃんはとても美しくなっていました
少し不幸せな家庭環境も美しい顔に絶妙の陰を忍ばせ、アッコちゃんは大人の女としてうまれかわりました
健康な体、幸せな家庭環境、「太陽の申し子」と揶揄されるコチサさんとは正反対の美がそこにはありました

「皮肉と罵りあい」二人の関係は復活しました
お互い少しでもひねりのきいた言葉で相手をぎゃふんと言わせようと、逢えばマシンガンのようなおしゃべり攻撃です
しかし二人は夏休みの間、一日たりとも離れることはありませんでした

夏休み最後の日曜、アッコちゃんが大阪へ帰る最後の夜、
「このままじゃ決着がつかないまま終わるから、今夜はうちで夜明かしで最終戦争や!」
コチサさんは最後の宣戦布告をしました
戦いに備えて、お母さんに作ってもらったおにぎり6個を蚊帳の中に持ち込み二人は先ず腹ごしらえとおにぎりをほおばりました

5分後、おにぎり5個を食べ、口元にご飯粒を一つ付けたまま蚊帳の中で幸福そうに大の字に寝ているコチサさんを見つめる、おにぎり一つ食べたアッコちゃんの優しい目がありました
そして・・・・・
アッコちゃんの頭の陰がコチサさんの顔の陰に重なりました。

一粒のご飯粒を大事そうに唇に挟んだアッコちゃんが蚊帳から出ようとして、一度だけコチサさんを振り返りました。一粒のご飯粒の代わりに、アッコちゃんの瞳から飛び出た涙がコチサさんの唇に届きました
「佐知子さん、ごきげんよう」

朝が来ました
目覚めたコチサさんは横にあっこちゃんが居ないのに気づきました
「アッコのヤツめ、逃げやがったな」
どこまでも元気一杯のコチサさんです
コチサさんの初恋は誰も知らず、本人さえも気が付かず、始まって終わりました


◆コチサの寸評

初めての女性投稿です!
愛子ちゃん!
なんで女の人からのメールが少ないコチサとこんなに長く関係を続けてくれていたかわかったような気がします。
でもごめんなさい・・・期待には応えられそうもないわ・・・
今回の応募作品で前回の登場人物を引き継いでくれたのは愛子ちゃんだけでした。
でも内容が・・・・・・
これじゃ主人公はアッコちゃんでしょ。
コチサのファーストキスはアッコちゃんかい。
ただ、冒頭にも書いたように「フルート関係の先輩後輩の恋」という展開が多かった今回の作品の中で愛子ちゃんの異色の着眼点は笑えます。
前回の作品もそうだけど、全体の傾向としてコチサを「3枚目路線」若しくは「間抜け路線」で育成していこうという傾向が見られます。方向の修正を強く望みます
最後に一言
「愛子ちゃん、文章の最後には”まる”を付けようね」


[第3章次点作(その2)]
(群馬県在住−支店長さんの作品です)

 いま順風満帆のコチサからは想像もできないことだが、コチサは、この仕事を始めて数年間は全然売れず辛い日々を送っていた。
 外見ばかりが目立つ後輩に仕事を横取りされて、クサったことも一度や二度ではないしエステに負けない強い身体を呪ったことだってあった。
 そんなときはいつも、コチサはアパートでひとりフルートを吹いた。
 古びたケースからていねいに布で包まれたフルートを取り出すとコチサは軽く目を閉じ、静かに一人だけの演奏を始めるのだった。
 その様子は、まるで恋人が隣にいるように見え、誰か大切な人に聴かせているようでもあった。
 困難に立ち向かうとき、コチサのそばにはいつもそのフルートがある。演奏するのは決まって、思い出のアイネ・クライネ・ナハトムジーク・・・。

 中学生のコチサは自転車に乗って学校に向かう。
 晴れた日には青い海の向こうに小豆島が見える。
 コチサの家は小さな丘の上にあり学校まではほとんど下り坂だ。
 坂の途中に教会がある。神父さんがそこにいてもいなくても「おはよう!」と声をかけてゆくコチサは、最近教会にあまり行ってないことをちょっぴり気にしている。
 そんなこんなで、元気がよくてクチがよく回るコチサには毎日楽しいことばかりだった。
 あの日までは・・・。

 それは、2年生になって間もない頃。
 学校からの帰り道でコチサは美しいフルートの音を聴いたのだった。
 コチサはペダルを踏みながら松田聖子の「スウィート・メモリー」を口ずさんでいたのだが、妙に気になって、その美しいメロディーにひかれるように音のする方へと向かって行った。

 小道を抜けると、その先は地元で「青春の丘」と呼ばれる場所だ。
フルートを吹いていたのはひとつ上の先輩で、学生服を着て海に向かって腰をかけ無心にフルートを吹いていた。
 コチサの足音に気付いた先輩は、
「だれだ?」と、振り返った。
「あっ・・・」と、その先は声がでないコチサ。
「君か・・いつも昼休みにDJやってる子だな。興味があるなら聴いて行けばいい・・・」
 再びフルートを、何事もなかったように演奏し始める。
 コチサはなぜかその場所から立ち去りがたくてじっとしていた。
「座ったらいい・・」
「はい・・」
 コチサは先輩の隣にすこし離れて座ったが、なぜか一言もしゃべれない自分がもどかしかった。
 フルートの、その甘く切ない音色は初恋を自覚するには幼なすぎるコチサの心を意地悪く、ちょっぴり揺さぶった。

 瀬戸内海はいま夕陽に赤く染まりかけ、そしてコチサの顔も負けずに赤く染まっていた。
 その晩コチサは誰とも会話をせず、生まれて初めての不思議な気持ちに眠れない夜を過ごしたのであった。そして(髪を伸ばそう!)そう決心した。

 嘘つき、ハッタリといわれて異端時扱いされていたコチサも、ほんとうは純粋で感受性の鋭い女の子だった。
 この先輩の耳にもコチサの噂は届いていたが、彼はコチサの素直な心を理解してくれた。
 そして、ぶっきらぼうではあったがコチサを妹のようにかわいがった。
 兄を持たないコチサはまるで兄のように彼を慕った。それがいつしか恋心へと変わっていったことには誰も異論を挟めないだろう。

 五色台へのサイクリング、コチサ手作りの「押し抜き寿司」、小豆島探検など二人の淡い関係は、豊かな大自然の中で、(歩みはとてもゆっくりだったが)続いた。

 そして、その年の9月。そろそろ秋の気配が漂う頃、悲しみは突然に訪れた。
「コチサ、俺は親父の手伝いで船に乗る。来週帰ってきたらフルートのテストをしてやるよ。それまで練習しとくんだぞ」
「うん」
 課題曲はアイネ・クライネ・ナハトムジーク。コチサは彼にほめられようと必死で練習したのだった。
 そして約束の日、「青春の丘」に来てみると、いつもは必ず先に来ているはずの彼の姿がない。
 30分たち、1時間がたち太陽が沈み始める頃コチサのお父さんがやって来た。
「コチサ・・・ここだったか。あのな、○○君は・・・死んだそうだ。おかあさんから電話があったんだ。コチサに伝えてくれって・・・。○○君は今日コチサに逢うのをとても楽しみにしてたそうだがこんなことになってしまって」
 人手が足りないので手伝いで乗った漁船が時化のため沈没し、彼を含めて乗組員全員が絶望だという。
「コチサ・・・」
 コチサは、なにか言いたげな父の前を離れ海に向かった。
 そして涙をこらえてフルートを吹いたのだった。彼の前で演奏するはずだったその曲を。
 本当なら目の前に彼がいて、腕組みをしてコチサを見つめているはずだったのに・・・。

 コチサはいつまでもいつまでもフルートを吹いた。
 夕陽は初めて彼に逢ったあの時のように、瀬戸内海を赤く染めていた。
 それは決してうまいとはいえないけれど地球上の誰よりも心のこもった演奏だった。
 コチサには、そんな過去がある。


◆コチサの寸評

ん〜(唸るコチサ)。
支店長さん連続のランク入り。
さすが年の功−話の進め方が筋が通ってます。でもこれはコチサの勝手な信念だけど、殺しちゃダメ!死んだらホントに終わっちゃうんだもん。バーチャルコチサの登場人物はみんなそれぞれに生きていてそれぞれの人生ドラマを進行しているの・・・・・だからコチサのドラマの中で誰の幕も引き下ろせないの。
えっ?「産婆のウメ」は死んだって?
うぅっ(唸るコチサ)


[第3章次点作(その3)]
(横浜市在住−カルボナーラさんの作品です)

コチサの恋はフルートの音色のように儚い。
コチサの恋は波の彼方に突然生まれて、潮が引くように消えていく。

「芸能人が来るぞ!」
そのニュースはあっという間に学校中に広まった。
「誰?また村田英雄?」
「違う違う、今度は本物」(コチサ註:おいおい、じゃぁ村田先生は何なんだ!)

♪サチコと言う名は皮肉だぁとぉ〜、自分に宛てた手紙燃やして〜
♪サチコぉ〜思い通りに、サチコぉ〜生きてごらん♪

大スター「バンバン」が自分のために唄ってくれている。
町内公民館でギター一本で囁くように唄う「ばんばひろふみ」はコチサの女に火を付けた。
「かっこいい」
「彼は私を知っててくれていたんだ」
「私の歌だ!」

逃げるものと追いかけるもの。
いつ果てるとも知れない、激しいチェイスが始まった。
公民館を出た「ばんば隊」はバンで次の移動地に向かう。
そしてそれを追いかける「香川県にわか親衛隊」−あるものは軽トラで、またあるものは素足で、またあるものは鍬を片手に、本物の芸能人を追いかけた。
最初の曲がり角で鍬を持った親衛隊が、次の曲がり角で裸足の親衛隊が脱落した。

[中略]

船着き場までの直線、残ったのは軽トラ親衛隊と併走するチャリンコ親衛隊。
チャリンコ親衛隊の隊長は勿論コチサだ。
「毎日の山道通学はだてじゃないわ」
筋肉の固まりと化したコチサの足が一層ペダルに力を込めると、一気に軽トラに幅寄せし、軽トラを田圃に突き落とした。

唯一残ったコチサことチャリンコ親衛隊が船着き場に着いたとき、次の公演地に向かう渡し船に乗り込む「ばんばん」が見えた。
「待ってつか!」
驚いたように振り向くばんばん。
「ここまで、しかも自転車で追いかけてくるヤツが居たのか!」
「サイン下さい。ファンなんです」(嘘ではない、さっきファンになったのだ)

笑顔で装うばんばんとの甘い一時が二分ほど続いた・・・・しかしそれはコチサには永遠に続く芸能界の第一歩であった。
「よく追いかけてきたね。その根性があれば君は何をしても成功するよ」
この言葉をコチサは
「君は素敵だ。一緒に芸能界で生きていこう」
と解釈した。
渡し船が起こす、波の後を見ながらコチサはいつまでも手を振っていた。

その後コチサは深夜ラジオで「ばんばん」が、ブサ○ク(コチサ註:おいおい−自主規制伏せ字にします)な男として谷村新二らと読者投稿のネタになっていることを知る。
寝床で大笑いするコチサを見つめる神棚には「村田英雄」と「ばんばん」のサインがあった。

「恋は麻疹(はしか)」
自分の名を呼びかける美しい歌声に魅せられた盲目の恋は、本人の知らぬ間に生まれ知らぬ間に終わった。
深夜放送に笑い狂うコチサの目からは笑いすぎて、間抜けな真珠が一粒・・・・


◆コチサの寸評

やめて欲しいな、メールで少し話した話を針小棒大に広げて展開するのは・・・
ただコチサの田舎に芸能人が来ることは大変な騒ぎなんだ。
だから必要以上に気持ちが入れこんじゃってファンになっちゃったりする事はよくある。
この話はコチサが東京に飛び出す布石としては使えますよね。
でも選外!
ばんばさん、ごめんなさい。この作品は選外にしましたから・・・
コチサは今でも大ファンです。