「コチシム」第12章育成作品

第12章の仮題と育成結果です

◆第12章を振り返る

 いよいよ「コチシム」は最終回です。
 当初の目論見通りに「実在コチサ」は世界に旋風を巻き起こせなかったけど「バーチャルコチサ」は、着々と「世界」を掌中にしつつあるようです。
 さぁ感動フィナーレです。皆様の頭の中にある、コチサの最終型を思いを込めて綴って下さい。(泣かせてちょ)
第12章の課題は以下のようなものでした。

◆タイトル:
「世界へ羽ばたくコチサ」

◆テーマ:
 海外に出向き、コチサは新しい人生観を得ます。そしてそれは愛し応援してくれる人たちとの別れであり、新たな出会いでもあるかも知れません。
 いよいよ完成される、コチサの人格と成功。世界中を平和と感動の渦に包んだコチサとその余生・・・・・第1章から11章までの様々なキーワードを網羅しながらなんとか一つの美しい物語に終結させて下さい。
 

◆イベント:
・「成田空港26時発特別便」
・「涙の大合唱」
・「旋回し別れを惜しむ特別機」
 の3つのイベントに第10章の謎解きをうまく絡ませてください
 (全部をむりやり入れなくても結構です)

◆参考になる実在コチサ:
もう、今回から未来の話しになるので、実在コチサは参考になりません。
よって、この部分は自由演出となりました。

◆第12章の選抜作品の紹介

(最後はこの人、「グッド、ぐっど!さん」の作品です)

その美しい姿が、もう見納めだってのか!今日まで手塩にかけて育ててやったことを、とやかく言ってるんじゃないんだ!!俺がおまえを、ほんとうに愛しているってことは、おまえにもはっきりわかっていたはずだろう。。ああ、おまえと別れるくらいなら、いっそのこと。。。

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定刻より4時間も遅れたことを詫びて、機長はアルコール類を始めとするドリンクやフルーツ、デザートなどをすべて乗客に無料開放する旨アナウンスした。その理由について彼は第三エンジンの部品交換のため、としか言わなかったのだが、これもいたしかたあるまい。
「爆弾を仕掛けた」なんて電話があった事を告げたら、いたずらに不安を煽るだけなのだから。だいたい、空港警察と乗員・整備士が機体を隅からスミまで入念に点検しても、何も見つからなかったのだし。。
副操縦士が計器類に異常の無いことを確認した。操作系も順調に作動している。ナリタの管制官からA滑走路への進入許可がおりた。流線形の機体は、身震いするように誘導路を進み始めた。。

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もうアイスクリームの在庫が底をついたので、と謝るスチュワーデスに、コチサは「バニラがなくなってもまだ抹茶アイスが残っているはずだ」と喰い下がっていた。コチサにいわれたとおり、庫内上段右奥の冷凍ピザの山のうしろに抹茶アイスクリームのカップを発見した彼女は、いったいあの山猿はいつのまにこんなところまで覗いたんだろう、と首をひねった。最近の客ときたら、まったくもう、油断もスキも。。。

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管制官からの連絡を受けて機体はアプローチに停止した。空港ビルの方からハデな赤色灯を点滅させて緊急車両が数台走ってくる。また同じイタズラ電話が入ったらしい、まったく人騒がせな。。機長と副操縦士は顔を見合わせた。
そのとき、機内電話の呼び出し音が鳴って、チーフ・パーサーがわけのわからんことを言ってきた。え?ヤマザルが、なんだって?。。

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空港署の係官は、コチサのいうとおり、前輪の格納扉の裏側に発火物らしきものを発見した。コチサからの事情聴取と機体の再点検のためにフライトはさらに遅れ、結局出発は深夜を廻り込んだ。。。

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コチサが自分で、人間の声だけでなく機械の声まで聞きとれることに気づいたのは最近である。とはいえ、そんなことを人にいってみても気違い扱いされるくらいがオチだ。さっきの空港警察の人みたいに、怒りだしちゃう人だっている。しかたないよね、自分だってこないだまでなら、きっとそう思ってたろうし。とにかく最初に前輪を点検した、あの整備士さえちゃんと取り調べしてくれれば、今回の事件は一件落着だわ。

コチサは気をとりなおして、最後の抹茶アイスにとりかかった。彼女が自分の才能の真の意味を悟るのは、まだまだ先のことであった。。

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「彼女」は美しかった。

これが、記念すべき最後のフライト。サン・フランシスコ国際空港に到着後は、ナパの航空学校付属博物館に払い下げられることが決まっている。就航当時には最新鋭を誇った性能も、いまや後継機とくらべればやはり見劣りもするし、機体のあちらこちらには修理のあとが見え隠れする。それでもなお、「彼女」は美しかった。この国に本格的な航空時代の幕開けを告げた女神の気品は、今なお凛と輝いていた。

ちょっと出発が遅れてしまったけど、ゴミも払ってもらったし、あとは太平洋をひとっとびだわ。

いつものようにきれいな線を描いて飛び立つと、「彼女」は旋回しながら銀の翼をわずかに上下させて、エプロンに並んだ同僚たちに別れの手を振った。

成田空港で待機していた各機のエンジン音が一瞬高くなった。
それは、去り行く「女王」を見送る涙の大合唱のようでもあった。


◆コチサの寸評

「コチシム」は過去11回の育成作品を経て、こんなにも手の届かない「作品」として完結してしまいました。
手前味噌になりますが、これだけ皆さんが力を注いでくれ、始めの冗談ぽい文章のやり取りが、独自の文学作品として成長を遂げてくれたことに深い感謝と誇りを感じます。
そして、最終章の育成作品は「グッド、ぐっど!」さんの返り咲きという「コチシム史上に燦然と輝く」栄誉を手にしました。おめでとうございます。
味わえば味わうほど深く感じる作品です。女性名詞である飛行機を「彼女」と記することで、「旅立つコチサ」との対比で「栄光に突き進むコチサ」と、「おだやかな皺に包まれたコチサの晩年」をそれとなく演出してくれる・・・・・・
「コチシム」はこれにて天上へと夭逝しました。
ありがとうございました。