「コチシム」第7章育成作品

第7章の仮題と育成結果です

◆第7章を振り返る

 一つ大人になり、「夢を追う」から「夢を実現する」という内面の変化を遂げたコチサは、アナウンス学校を首席で卒業し、選ぶ立場としていくつかのプロダクションから専属契約先をチョイスすることになりました。
 第7章は、先輩タレントや業界のしきたりに戸惑いながらも、社会人としての「声」のプロの道を突き進むコチサを演出してもらうことが主題でした。
第7章の課題は以下のようなものでした。
◆タイトル:
第7章「才能は諸刃の剣(低迷期)」

◆テーマ:
 アナウンス学校で基礎を学んだコチサは、プロダクションに所属し、いよいよ「声のプロ」として突き進みます。
今回は成功を手にする以前の、社会人としての挫折、苦悶等を超えて一人前の自覚を持つ大人の女に成長するまでを描き出して下さい。

◆イベント:
・「妬み、嫉み、いじめ」
・「顔とスタイル事件」
・「オールスター水泳大会の水着が合わない・・」等
 の3つのイベントをうまく造って絡ませてください
(全部をむりやり入れなくても結構です)

◆参考になる実在コチサ:
有名になったときにリポーターにばれる可能性のある以下の項目は実在コチサが提供するデータを使用して下さい
・CMタレントを有するタレントプロダクションに所属
・アイドルタレントとして売り出されそうになる
・純粋に「声」で勝負させてくれるプロダクションに移籍
・整体治療の様な激しいボイストレーニングで自分の「声」の本質を知る

◆第7章の選抜作品の紹介

(博多の「S-NOJIMA」さんの作品です)
登場人物


コチサ(益田沙稚子)(20)
相沢ゆかり(23)−クメ・プロモーションタレント
山田美智子(22)−クメ・プロモーションタレント
河埜万里(21)−クメ・プロモーションタレント
結城里子(21)−クメ・プロモーションタレント

久米次郎(48)−クメ・プロモーション社長
織田哲(45)−織田コーポレーション代表

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○アナウンス学校・会議室(回想)
大きな会議室に座っている益田沙稚子(以下、コチサ)。前方にはスカウトマンと思しき男が二人、資料を前にコチサに説明をしている。

男1
「だから将来性という点では、うちが一番かと。媒体露出という点でもうちはレギュラーを抱えて・・・」

テーブルの奥には、他のプロダクションの人間達が順番を待っている。
コチサ、瞳を輝かせて各プロダクションの説明に聞き入っている。


○某テレビ局控え室・大部屋

十数人の若い女性達が水着に着替えている。ほとんどの女性達が着替え終わっている中に、まだ私服姿のコチサがいる。
鞄の中を覗き込み、ビリビリに引き裂かれた水着をぎゅっと握りしめる。
その時ノックと共にドアが開き、AD山下が顔を出す。
明るい「きゃー」という声や「エッチ」という黄色い声がこだまする。

AD山下
「着替え終わったら、さっさとスタジオに入ってください。入場式のスタジオ部分を収録したらそのまま大磯ロングビーチまで移動です。くれぐれもタレントさんにかぶらないでください」

女性たち水着姿のまま、「あたしたちだってタレントだよ」「私達にはガウン支給されないの」などと口々に言いながら部屋を後にする。
相変わらず水着を握りしめながら、その場に佇んでいるコチサ。
その姿を、出口から見やりお互いににやりと笑みを交わす、水着姿の3人、山田美智子、河埜万里、結城里子。


○クメ・プロダクション・応接室

社長の久米次郎とコチサが向かい合っている。

久米
「いいかげんにしてくれ、これで何回目だ?仕事すっぽかすの。オールスター水泳大会が嫌だったら嫌とその場で言ってくれなきゃ困るぞ。事務所の評判に関わるんだ。美智子と万里、里子が頑張ってプロデューサーの機嫌をとってくれたからいいようなものを・・・・・・・」

久米の愚痴は続く・・・


○アナウンス学校・会議室(回想)

コチサの前には、派手な衣装を着た久米が座っている。いかにも元タレントといった風貌。洗練された身のこなし。

久米
「うちは大プロダクションじゃないけど、少数精鋭でいきたいと思ってるんだ。たくさんの原石の中からダイヤを探すより、少なくても光輝くダイヤの中で暮らしたいんだ」

○クメ・プロダクション・廊下

応接室の会話に聞き耳を立てている、美智子、万里、里子。お姉さん格の美智子が冷たく笑うと、つられて万里と里子も笑う。万里、コチサの水着を引き裂いたらしいハサミをバックから取り出し美智子に媚びるように見せる。

ゆかり
「何をしているの!」

びくっと驚く3人。
相沢ゆかりが派手な衣装に身を包み、近寄ってくる。

ゆかり
「(応接室を指さし)入りたいんだけど」

ちりちりばらばらに廊下を逃げていく、美智子、万里、里子。


○同・応接室

突然入ってきたゆかりに、叱っていたコチサを紹介する久米。

久米
「3カ月前から、うちに入った益田沙稚子君だ。(コチサに向かって)相沢ゆかり君だ。知ってるよな、押しも押されもしないうちのエースだ。ダイヤモンドの集まりのうちの中でも一際、光輝くスーパースターだ」
ゆかり
「ダイヤの集まりなんて何処にあるのかしら。(コチサの腹を突然触って)優しい先輩達でよかったわね(腹をつねる)」

驚いて部屋を飛び出すコチサ。


○同・玄関

勢い飛び出してくるコチサ。
突然前に立ちはだかる、美智子、万里、里子。

美智子
「首になったかしら?」
コチサ
「(首を横にふる)」
万里
「しぶとい、まだ居座る気?」

里子、遠くの何かに合図を送ると、急発進した黒塗りの車がやってくる。3人有無を言わせずコチサを引っ張り、車に強制的に押し込む。
あっという間に車に乗せられ両脇を3人娘に抱えられ連れ去られるコチサ。


○同・応接室

久米とゆかりが話してる。

ゆかり
「首にしたの?」
久米
「いや」
ゆかり
「何で、さっさと首にしてよ」
久米
「どうしたんだ、是が非でもうちに取れっていったのはお前だぞ」
ゆかり
「そうよ、だから首にしてよ、いっぺん首になった人間はどこの事務所も取らないわ、欠陥商品だもの」
久米
「何言ってんだかわかんないぞ」
ゆかり
「ともかくもういいの。あの子は首にしてちょうだい」
久米
「いや、待ってくれ。この俺も一応はこの道20年の人間だ。最近気が付いたんだけど、あいつはしゃべりに関しては光るものがあるような気がするんだ。もしかしたら拾いものかもしれんぞ」
ゆかり
「このお間抜けさん。知らなかったのはあんただけだよ」

怒って部屋を出ていくゆかり。残された久米は現状をよく理解してない。


○走る車

連れ去られるコチサが後部座席に乗っている。両脇を固める3人娘。
コチサから見る運転席には人の姿が無い。自動運転なのか?訝しがるコチサ。運転席の人間が伸びをしてコチサを振り返る。
人がいたんだとほっとするコチサ。しかしその人間は小さい、あまりにも小さい。その小ささから何かを思い出すコチサ。


○アナウンス学校・会議室(回想)

テーブルの下に隠れるくらい小さい男が、コチサに事務所の説明をしている。

織田
「うちは、貧しいあるよ。でも声を、人を感動させる声を作りたいあるね。でもその為、みんな辞めて行っちゃいうよ。辞めない覚悟でうちに来るよろし」

すでにこの男に感心を無くしたコチサ、半分聞いていない。


○走る車

「あの時の男だ」と気づくコチサ。言い様のない不安が襲ってくる。


○秘密地下室

廃墟のような地下室に連れ込まれるコチサ。あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
暗さに目が慣れてくると、無造作に並べられたベッドの上で若い男女が折り重なるようにして声を出している。
世紀末の地獄絵図のようだと震えるコチサ

万里
「(にやっとして)この娘、勘違いしてない」
里子
「きっとエッチなことで頭がいっぱいなのよ」
美智子
「(コチサに)ベッドの上の人たちの顔見てごらんなさい」

目を凝らすコチサ。
そして驚いて3人娘を見る。

美智子
「そう、アイドル歌手のM。それに若手俳優のK、女優のSさんもいるわね。でも同じアイドルのKさんはここにはいない。同じ理由でTさんもJさんもいないわ。この違い解る?」
万里
「ああやって限界まで、お腹を押して声を絞り取るんだって。ああして3分も声を出し続けられるようになってるのよ」
里子
「こんな苦しい思いをしてまで声を出そうと思わない人は、ここでは練習しないの。それに練習したところで才能のない人はそれまでだって、織田先生が言ってた」

まだよく事態が飲み込めていないコチサ。
万里、バックからハサミを取り出す。続いて画鋲も。


○コチサの回想・フラッシュで

下駄箱で靴に画鋲を入れられ怪我をするコチサ。
お弁当箱にゴムの虫を入れられているコチサ。
間違った教室を教えられ一人置き去りにされるコチサ、等


○秘密地下室(元の場面)

美智子
「でも、助けてあげた事もあるのよ」

万里、バックから今度はコチサの破れた水着を取り出す。
その水着を近くの水を張ったバケツに投げ込む。
水着が水に溶け出す・・・・・・

里子
「私達が破かなかったら、あなたテレビカメラの前で丸裸になってたのよ(おかしそうに笑う)」
美智子
「ここまでお金をかけてまで、あなたを抹殺したかった人もいるのね」
万里
「くやしいけれど、あなたの才能はみんなが認めてる。あの事務所にいたんじゃ飼い殺しにされる。だからいじめて追い出せって、織田先生が」
美智子
「勘違いしないでね。あなたの為じゃないのよ。交換条件なの。あなたがこの事務所にくれば、私達も訓練だけは受けさせてもらえるの。自分の才能があるかないか教えてもらえるの」

溶けた水着を見ているコチサ。

美智子
「でも、水着を溶かすいじめをして再起不能にしてしまおうっていう人がいるくらいだから、それだけの交換条件をつけてもらっても当然よね」

楽しそうに笑う3人娘。優しそうな笑顔に戻ってる。
つられて笑ってしまうコチサ。
人の声がして、織田がやってくる。

織田
「コチサさん。ごめんある。わたし話し下手。みんなこの子達が話してくれた。でもこれ大事、どこ首になってもコチサさん、わたし育てる。いまの事務所だめ。コチサさん才能みんなのも。だからわたし強引、許される」
美智子
「先生、多分この子は先生のこと一生許さないと思うよ。でも訓練は受けると思う。先生の発声法に興味を持ったはずだから。才能のある人って貪欲だもん」

○織田コーポレーション・玄関(朝)

ポスターが貼ってある。「人気大爆発・エコロジーガールズ/コンサート」というタイトルの下に笑顔でポーズする、美智子、万里、里子。
そしてその玄関を勢いよく押しあける手。

コチサ
「おはようございまぁ〜す!」


◆コチサの寸評

そう来たか
でも、単に企画倒れだったらコチサは載せないよ。余計厳しく審査するもん。
コチサが月刊シナリオ愛読者と知っての挑戦、しかと受けとめました。
構成もエピソードを絞っての一本道にして、短編としてわかりやすいし、その中でも今回のポイントは、コチサを最後のシーンまで一言も話させなかったという展開に新しさを買いました。
話すのが仕事のコチサの物語で、コチサの台詞が「おはようございます」だけとは・・・・
女優としてのコチサの将来性には一抹の不安を持ったのか?
コチサネームに「S-NOJIMA」を希望するところなど、結構マニアね。