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FILE23-傷ついたイタリアの子供
22/30days
コチサのペッパーフレンズ●益田沙稚子 


コチシムで傷を背負ったのがバンビーノさんです(以下バンちゃん)。バンちゃんは前半の育成作家でしたが、話しに味付けした「ゴルフ場建設問題」でクレームを受け、不本意ながらも弁解せず貝になってしまったのです。
概要はこうです。コチサが上京する時に村では「ゴルフ場建設」問題が起きます。放送部のコチサは村人を前に、一言もしゃべれず村を去ります。放送室にはフィリピンの民衆革命に沸く声が流れています。バンちゃんのシナリオでは若いコチサは現実問題に理論武装が役立たないことを知り、いつか目覚める日まで敗者として無言を通すという長期的展開の一部だったようです。
しかし短絡的な「ゴルフ場建設は悪なのか」という論争に巻き込まれ、主旨を説明する意欲を失ってしまったようです。コチサのメールへも沈黙は続きました。
しかしコチシムは続きます。歳月を経て最終回を迎えました。あれから一年近い時が経っています。
バンちゃんからの作品が届きました。内容は−その後東京で社会の渦に巻き込まれ、哲学に傾斜し、また生きることに貪欲になるコチサ。コチサの中で理論では無い生き方が形成されていきます。世界へ向けて旅立つ夜、送りに来た空港で村人は言います。「ゴルフ場は収まるべくして収まったよ、畑を続けている人も、キャディーとして働いている人もいる。ただ皆笑ってる、あんたのおかげだ」そしてコチサはやはり無言です。その無言は村を出てきたときの無言とは明らかに違っています−というものでした。
物語の中のコチサの無言は、バンちゃんの無言です。何を言われても言い返すことなく、ルール通りにコチシムの問題はコチシムの中で答えたのです。
コチサは泣きました。バンちゃんの一年間の気持ちにどう答えていいか解らなかったからです。
でも事は単純です。一言言えばいいのです。「バンちゃん、ありがとう」って。


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手相に喜ぶコチサ