No.607 「多感な世代のお年頃」 2006.8.8
 多感な世代のお年頃・・・

 マスダタカイチは、コチサとは縁もゆかりも無いくせに、マスダ姓を名乗る同じクラスの不届きものでした^-^;

 先生が変わるたび、出欠のとき

 「お前たちは親戚なん?」

 と聞いてくるのが嫌でした。

 小学校3年生は、8歳から9歳の一桁台の年齢の最後を飾る、貴重な、そして微妙な年齢です^-^;

 そんなお年頃に、決してハンサムでもなく、勉強ができるわけでもないマスダタカイチと親戚扱いされるのは、気分の良いものではありません。

 (多分、タカイチもそうだったと思うけど・・・^-^;)

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 先生
 「ヨーシ、じゃぁお前たちはマスダコンビで第一組だ、しゅっぱぁ〜つ!」

 コチサ
 「え?」

 タカイチ
 「えっ?」

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 全校登校日

 8月15日の全校登校日、恒例の「昼の肝試し大会」のことでした。

 この肝試しは、全員が校庭に出て、二人ずつ組になって順番に校舎に入り、渡された紙のチェックポイントに印を残していくものです。

 コチサは肝試しはあまり好きではなかったし、夏休みなので寝坊のクセもついていて、わざわざ学校に行くのは嫌だったのですが、行かないとお父さんに怒られるので嫌々参加していたのでした。

 最初のコースは「下駄箱」です。

 ここで指定の下駄箱から、地図と課題の入った紙を取り出すのです。

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 コチサ
 「あのさ、コチサここで待ってるから、タカイチ君、一人で行って来なよ(^o^)」

 タカイチ
 「えー、先生に怒られるんとちゃう?」

 コチサ
 「大丈夫だよ、ここで落ち合って一緒に出れば誰も気がつかないよ(^o^)」

 タカイチ
 「でも、ここに一人でいたら次の組に見つかるよ」

 コチサ
 「大丈夫だよ、コチサあの大きなゴミ箱の中に隠れて寝てるから・・・タカイチ君が戻ってきたら教えてよ(^o^)」

 タカイチ
 「でも・・・」

 コチサ
 「コチサはタカイチ君と一緒にいると、親戚とか言われて嫌なんだよ(`_')・・・タカイチ君だってそうでしょう」

 タカイチ
 「ボクはべつに・・・そう思われてもいいけど・・・」

 コチサ
 「コチサは嫌なの(`_')、じゃぁ行って来て。戻ってきたらゴミ箱開けて起こしてね。バイバイ」

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 でも・・・

 そのゴミ箱の蓋を開けてコチサを起こしたのは、タカイチ君ではありませんでした・・・

 人はおじさんを死神と呼ぶ・・・

 それはタカイチ君よりも何倍も大きな大きな手でした・・・

 身体もとても大きく、真っ黒な服を着て・・・でも影のように薄くて光が身体を通っちゃう、そんなおじさんでした。

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 コチサ
 「おじさん、だれ?」

 おじさん
 「人はおじさんを死神と呼ぶ」

 コチサ
 「ひェ〜ε=ε=┏( ・_・)┛」

 おじさん
 「待ちなさい、逃げても無駄だよ」

 コチサ
 「おおおお、お許し下さい、コチサが悪うございましたm(_ _)m、この通りです、この通りでございます┗(-_-;)┛」

 おじさん
 「なんで、タカイチ君をそんなに嫌うんじゃ?」

 コチサ
 「だって、親戚って言われるのが嫌なんだもん(>_<)」

 おじさん
 「でも本当の親戚じゃないし・・・別に親戚と言われたくらい気にならないだろう」

 コチサ
 「それが、これから10代をむかえる少女の過敏な乙女心ってヤツだよ。おじさんも死神ならそのくらい理解してよ」

 おじさん
 「・・・^-^;」

 コチサ
 「おじさん、もしかしてコチサをむかえに来たの?」

 おじさん
 「ん?」

 コチサ
 「だって死神なんだから、誰かを連れに来たんでしょ」

 おじさん
 「まぁな」

 コチサ
 「ごめんなさい。コチサ、これから良い子になります。お父さんとお母さんの言うことも聞きます。妹のおやつを食べたりしません。タカイチ君とも仲良くなります。本当です。今言った事全部守ります(泣)」

 おじさん
 「ダメだな、キミは守れない」

 コチサ
 「守ります、絶対に守ります!こう見えても嘘と坊主の髪は結(言)った事はないんです」

 おじさん
 「(こいつはいつの時代のおばあちゃん子だ^-^;)」

 コチサ
 「本当です、本当に守れます」

 おじさん
 「それが守れないんだよ・・・だっておじさんはタカイチ君を連れにきたんだから・・・キミがタカイチ君と仲良くなることは出来ないんだよ」

 コチサ
 「えー!!!!がーん!!!」

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 さっきの死神のおじさんが・・・

 そしてコチサがパニック状態でゴミ箱から救出されたのと、タカイチ君が理科室の人体模型の骸骨に首を挟まれて窒息したのが発見されたのは、ほぼ同時の事でした・・・

 ゴミ箱から救出されたコチサもショックのあまり意識喪失状態で・・・

 実はこの時、コチサの魂はコチサの身体から離脱して、校舎の上空を浮遊していたのでした。

 だからコチサは、この時の校内のパニック状態を、俯瞰的に観察することが出来ていました。

 ゴミ箱から先生に抱きかかえられるコチサ・・・

 ぐったりして白目を剥いて少しブサイクだったので、風を起こして髪の毛が顔にかかるように隠したのも、実は幽体離脱したコチサのお手柄です(^o^)

 担架で運ばれたタカイチ君に、さっきの死神のおじさんが空から急降下で襲い掛かります。

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 幽体離脱中のコチサ
 「おじさん、待って!」

 おじさん
 「なんだ?」

 幽体離脱中のコチサ
 「タカイチ君を連れていったら、あかんと思う」

 おじさん
 「なんでじゃ?これは決まりごとなんやぞ」

 幽体離脱中のコチサ
 「でも、なんかあかんと思う」

 おじさん
 「うるさい、お前は黙っておけ(`_')」

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 ついに死神は・・・

 ついに死神はその本性を剥き出しにしました。

 コチサの説得に耳を貸しません。

 コチサは校舎の頭上にそびえる椎の木の枝を二本ばかり引きちぎると十字に交差し、給食室にあったニンニクと共に投げつけました。

 ニンニクに怯えひるんだおじさんに、椎の木の十字架が太陽の光を受けて光線を発し、おじさんの体を焼き尽くしました。

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 おじさん
 「うぅ、無念。死神とドラキュラを混同しているこんな小娘にやられるなんて・・・バタッ!」

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 そして再び、コチサの小学校にも平和が訪れたのでした^-^;

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 まさかボクの命の恩人だったとはね^-^;

 マスダタカイチ(成人)
 「そんなことがあったんだぁ。じゃぁボクの今があるのもコチサのおかげなんだぁ^-^;」

 コチサ
 「そうだよ。今幹事としてこうして恒例の同窓会の連絡が出来るのも、あの日のコチサの活躍があったからなんだよ」

 マスダタカイチ(成人)
 「毎年、幹事のヤツが、コチサは絶対に参加しないけど、電話連絡すれば面白い話を聞かせてくれるって聞いてたけど・・・まさかボクの命の恩人だったとはね^-^;」

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 ちぇっ、冗談だと思ってる・・・

 ちぇっ、冗談だと思ってる・・・

 あの夏、死神を退治した後、今度は一気に天まで上り、天の神様と時間を戻す交渉をして、一気に肝試しのメンバー発表まで時間を巻き戻しのだってコチサなのに・・・

 天の神様は、

 「それだと誰もキミの活躍を記憶に留めることなく、タカイチ君もキミへ感謝をすることがなくなってしまうけどいいのかな?」

 と聞いてきたけど、

 コチサは

 「誰に感謝されたくもありません。コチサはただこの町が平和で、人々が笑顔で過ごせたらそれでいいのです」

 と応えたんだ・・・)^o^(

 実はコチサの活躍はこれだけじゃない・・・

 過去にはタカイチ君以外にも、たくさんの人がコチサの愛と崇高な魂の・・・

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 マスダタカイチ(成人)
 「はいはい、わかった、もういい、楽しかったよ・・・それと来年の幹事はヤマヒロアオイだから・・・一年かけてまたおもしろいネタ考えといてやってね」

 コチサ
 「はい、わかりました(*^^*)」

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 そして今年も・・・

 そして今年も・・・

 コチサの出席しないクラス会が、あの小学校ではじまる・・・(^o^)

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