No.564 「30数年ぶりの和解」 2006.1.26
 30数年ぶりの和解・・・

 コチサ
 「お正月気分が、なかなか抜けないね」

 お母さん
 「何まだそんな寝ぼけたこと言ってるの、もう一月も終わりやで」

 コチサ
 「旧正月はこれからさ^-^;」

 お母さん
 「相変わらず、減らず口やな」

 コチサ
 「で、どう最近は?」

 お母さん
 「分家のヨシオさんが入院してな、昨日はトモコさんと一緒にお見舞いに行ってきたわ」

 コチサ
 「えっ?・・・トモコさんって、あのトモコさん?」

 お母さん
 「そうや分家のトモコさんや。他にトモコさんはおらんやろ」

 コチサ
 「そりゃそうだけど・・・お母さんとトモコさんて・・・」

 お母さん
 「そうなんやけどな・・・ある時から急に仲良くしてくれるようになったんよ(^o^)」

 コチサ
 「そうなの?・・・そりゃ良かったけど・・・」

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 分家のトモコさん・・・

 分家のトモコさんは、お母さんより2歳上の、益田家に嫁いだお嫁さんです。

 お母さんは、コチサのお父さんとお見合いをして益田家に嫁いできたのですが、実はお父さんはお母さんが2回目のお見合い相手でした。

 そしてお父さんの一回目のお見合い相手がトモコさんだったのです。

 お父さんに断られてしまったトモコさんはその後、分家の益田コーハチとお見合いをしました。

 そして分家のトモコさんになったのです(^o^)

 そんな経緯があったので、トモコさんはどうしてもお母さんが好きになれなかったようです。

 一族の集まりの席は、年に数回あります。

 その度に、女性たちが集う台所の隅で、ただひたすら俯いているお母さんを見ました。

 子供の頃は、

 「こんなに楽しい集まりなのに、なんでお母さんはいつも楽しそうじゃないんだろう?」

 そう思っていたコチサですが、血気盛んで正義感溢れる小学生になった頃は、その理不尽な扱いに随分憤慨したものです。

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 血気盛んなコチサ
 「なんでお母さんがいじめられるのさ(`_')、トモコさんはお父さんに振られた腹いせしてるんでしょ、許せない」

 お父さん
 「まぁまぁ・・・」

 血気盛んなコチサ
 「それに本家の長男に振られて、分家の長男に嫁ぐのもどうかと思うよ。そもそもお父さんに振られた事実を知りながら受け入れる益田コーハチも変だじょ」

 お父さん
 「お前、おじさんをフルネームで呼び捨てにするな」

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 いつもなら・・・

 いつもなら、

 「大人の世界に子どもが口を突っ込んでくるんじゃない(`_')」

 と烈火のごとくお父さんですが、この件に関してはコチサがいくら憤慨しようが、のらりくらりと、まるで事を楽しむかのようにかわしていきます。

 なんか、自分が袖にした女性と、娶った妻との間で苦悶する色男気取りで、少し良い気分のようです(`_')

 あの時代の、それも親達が勝手に事を進める田舎のお見合いです。

 ふったもふられたもありません。

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 大叔父
 「ツヨシ(お父さんの名前です^-^;)、どうやあのトモコさんは?」

 ツヨシ
 「えぇ、良いです」

 大叔母
 「でも、川下の下条さんとこの娘さんも年頃で、相手を探してる言うてるから、決める前にちょっと会うてやって」

 ツヨシ
 「はい・・・」

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 で・・・

 で・・・

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 大叔父
 「どうやったツヨシ、下条さんとこのアイコ(これがお母さんです^-^;)さんは?」

 ツヨシ
 「えぇ、良いです」

 大叔母
 「この子は、どっちも良いって、どっちかに決めなかあかんやないの」

 ツヨシ
 「じゃ、じゃぁ、アイコさんの方で・・・」

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 嫌な時代じゃ^-^;

 大方こんな流れだったようです。

 (嫌な時代じゃ^-^;)

 でも、流れはどうあれ、結果的にトモコさんは、お父さんに断られたことになり、お父さんはちょっぴり二枚目俳優気分・・・

 誰もお母さんの立場を考えてくれません。

 お母さんだって、あの時代に拒否権というものを持っていたら、お父さんを選ばなかったかもしれません。

 (おいおい、でもそれだとコチサが産まれてこないじゃん^-^;)

 ・・・とまぁそんなわけで、分家のトモコさんの存在は、お母さんにとっては嫁いだ時点からの宿命のように、長く苦しい重い憂鬱になっていたのです。

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 コチサ
 「でもなんで、そんなトモコさんが急にお母さんと仲良くなったりしてきたの?」

 お母さん
 「わからんわ・・・でも、良かったやないの」

 コチサ
 「不思議だ」

 なんでお父さんが出てくるのさ(ーー;)

 お父さん
 「わしが教えよう」

 コチサ
 「わっ、なんだハゲオヤジ、いきなり出てきて・・・」

 お父さん
 「お前、親に向かって今なんと(`_')」

 コチサ
 「何にも言ってないよ^-^;、で、なんでお父さんが出てくるのさ」

 お父さん
 「つまりそういうことだ。どんな問題も時が解決するんだ。人の心の憎しみ、恨み、そして嫉妬も、時という薬が癒してくれるんじゃ」

 コチサ
 「わかったから、お母さんに代わって」

 お母さんに代わって・・・

 お母さん
 「なんや?」

 コチサ
 「トモコさんは、仲直りしてきたとき、なんて言ったの?」

 お母さん
 「別に何にも言わんかったな・・・ただお互い歳を重ねたから、これからは過去やなくて前を見ていきましょうみたいなこと言うとったな」

 コチサ
 「それだよ、それ」

 お母さん
 「何が?」

 コチサ
 「うちのお父さんは若い頃は、髪の毛もふさふさしていたし、眉毛も濃くてまぁキリリとした顔だちをしてたよ」

 お母さん
 「まぁそうやな、それが・・・」

 コチサ
 「益田コーハチは、どちらかというとヌボーとした、何か言っても返事が三日後に返ってくるような人だったよね^-^;」

 お母さん
 「お前、またおじさんを呼び捨てにして・・・」

 コチサ
 「トモコさんとしては、お父さんにふられたとは思っていなかったと思うんだ。だって当時はみんな、複数回のお見合いを平行してやってたんでしょ。それを村の元締めが管理してうまく割り振っていた・・・」

 お母さん
 「お前、なんか随分勝手に想像して作ってないかい^-^;、うちの村にそんな元締めなんておらんわ^-^;」

 コチサ
 「トモコさんには女としての嫉妬があって、ツヨシとコーハチを密かに比べてたと思うんだよね」

 お母さん
 「(こいつ勝手に話を進めてる・・・^-^;)」

 コチサ
 「で、ある時点までは客観的に見て、ツヨシの方がまぁ男前だったから、お母さんに辛くあたった」

 お母さん
 「(展開が読めてきたで^-^;・・・お父さんを電話口から引き離した方が良さそうな気がしてきた^-^;)」

 コチサ
 「でも、いつの頃からはツヨシのフサフサだった髪は消え、濃くてキリリとした眉毛は、おさげ髪のようにだらりと下がってきた・・・そして腹も出てきた・・・」

 お母さん
 「・・・」

 コチサ
 「対するコーハチは、髪はロマンスグレーになり、「ヌボー」という表現は年とともに「飄々とした」という良いイメージで見られるようになった・・・そして痩せっぽちがスリムといわれる時代になった・・・」

 お母さん
 「・・・」

 コチサ
 「トモコさんは、「勝った」と思ったんだよ(^o^)、で、そう思ったとたん過去のわだかまりがいっぺんに消えた・・・どう、そういうことだと思わない?」

 お母さん
 「まったくお前は・・・親をなんだと思っているんだろうね。お父さんが聞いたらどう思うか・・・」

 コチサ
 「ちゃんと人払いはしてくれたんでしょ^-^;」

 お母さん
 「そりゃ当然するでしょ、お前が何を言い出すかわかっていたからな^-^;」

 コチサ
 「まぁとりあえず、トモコさんとの仲直りおめでとう(^o^)」

 お母さん
 「ありがとう」

 コチサ
 「じゃぁね」

 お母さん
 「ちょ、ちょっと待ってや」

 コチサ
 「な、何?」

 お母さん
 「お父さんはもう、昔のようにカッコよくは戻らんのか?これからはコーハチさんに負けっぱなしなのか?」

 コチサ
 「たぶん・・・ね」

 お母さん
 「わかったわ・・・じゃぁ・・・(;o;)」

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 ガンバレ、ツヨシ!

 ガンバレ、ツヨシ!

 愛する妻の為に、一念発起して身体を鍛え、過去の栄光を取り戻すのじゃ。

 再びトモコさんが、お母さんに冷たくあたる日を目指して!

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