No.416 「天は自ら助くるものを助く」 2004.6.15
 アメリカ人

 駅前留学しているノンちゃんの悩みは、どうしてもネイティブにはなれないということらしいです。

 コチサ
 「そりゃ、仕方ないでしょ、日本人なんだから」

 ノンちゃん
 「でもさ学校教育とは別に、10年も真剣に勉強してるんだよ」

 コチサ
 「駅前留学10年だね^-^;」

 ノンちゃん
 「それなのにアメリカで生まれた10歳の子の足元にも及ばない・・・」

 コチサ
 「その子たちはネイティブだからね」

 ノンちゃん
 「でも私の10年は、大人になってちゃんと読み書きが出来るようになった頭での10年だよ」

 コチサ
 「?」

 ノンちゃん
 「言葉も話せない赤ちゃん時代や、社会常識を覚えるのに四苦八苦していた幼少時代を経た10歳の子供に比べたら、実質学習量はその何倍にもなると思うんだけどね」

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 そっか・・・

 先ず、生まれてから赤ちゃんが言葉を話すようになるまでは大体2年くらいかかるのかな・・・

 そして赤ちゃん言葉を経て、敬語を含めた言葉のTPOを覚えて使えるようになるのが小学校入学前くらい・・・

 それから文字を覚えて、ようやく文法を習うのは小学校3年生くらいかな・・・

 確かにこれだけでも10年はかかってる。

 一方ノンちゃんは、駅前留学をした時はすでに二十歳過ぎの大人で、それまでの学校での英語教育で文字の読み書きや文法もすでに理解する脳みそは育っている・・・

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 ノンちゃん
 「でしょ・・・だけど、発音もとっさの対応も、思わずでちゃうボディランゲージも、全然10歳のネイティブにはかなわない」

 コチサ
 「・・・」

 ノンちゃん
 「やっぱり留学しないとダメかなぁ」

 コチサ
 「まぁそれはあるかもね」

 ノンちゃん
 「だよね」

 コチサ
 「でも、10歳の子供と張り合うのはどうかな?」

 ノンちゃん
 「どゆこと?」

 コチサ
 「だって所詮は、日本人とアメリカ人なんだから、もともとの魂っていうか、そういうのが違うんだよ」

 ノンちゃん
 「そんな事無い、言葉はコミュニケーションなんだから、分かり合おうという気持ちがあって、その国を真剣に理解したいっていう気持ちがあれば超えられる」

 コチサ
 「発音がおかしくても、同じような習慣がとっさに出なくても、相手とコミュニケーションはとれるよ」

 ノンちゃん
 「でもそれじゃ、ネイティブに見えない」

 コチサ
 「だってネイティブじゃないじゃん」

 ノンちゃん
 「それが嫌、ネイティブに見られたい」

 コチサ
 「ふーん、気持ちはわからないでもないね」

 ノンちゃん
 「本当?」

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 コチサが東京に慣れてきた頃、今度はもともと東京人であったら良かったなぁと思った時期がありました。

 「出身は?」と聞かれた時「香川です」と返事をするより、「麻布十番です」とか言った方がカッコいいなぁと思ったものです^-^;

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 コチサ
 「でもさ、どんなに背伸びをして無理をしても、とっさの時に讃岐なまりが出たりするんだよ^-^;」

 ノンちゃん
 「それとこれとは話が違うよ」

 コチサ
 「コチサは東京好きだよ」

 ノンちゃん
 「でしょ」

 コチサ
 「昔、東京人に見られたいと思っていた時より今のほうがこの街が好き」

 ノンちゃん
 「香川とどっちが好き?」

 コチサ
 「香川が好きだから、本当に東京も好きになれるんだよ」

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 何かを好きになったことで、反対側が嫌いになったり関心が無くなったりすることは、すぐにその反動がやってきそうな気がします。

 コチサは、本当に大好きなことは、根っことして動かない大好きな事から派生して広がっていくことだと、今では思っています。

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 ノンちゃん
 「で、それがネイティブになりたくて発音の壁にぶつかっている私に、なんのアドバイスになるの?」

 コチサ
 「だからノンちゃんはネイティブになれないって事だよ」

 ノンちゃん
 「(`_')」

 コチサ
 「ごめんごめん^-^;、じゃぁ言い方変えてネイティブになる必要は無いって事だよ」

 ノンちゃん
 「そんなの私が決めることだよ」

 コチサ
 「そうだけどさ。ノンちゃんの最初の強い思いは、ネイティブになりたいってことじゃなくて、英語でコミュニケーションをとりたいって事だったんじゃないの?」

 ノンちゃん
 「そうだよ」

 コチサ
 「じゃぁいいじゃん」

 ノンちゃん
 「良くない^-^;」

 コチサ
 「じゃぁ、こんなお話はどうかな?」

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 昔々ある村に、日本語を30年も勉強して、日本語のことで日本人に負ける事は絶対に許せないと豪語するアメリカ人のボビーさんがいました。

 ノンちゃん
 「ふんふん・・・」

 村の長老たちは、そのボビーさんの偉そうな態度が気に入らず、なんとかボビーさんを負かしてやろうと思いました。

 ノンちゃん
 「そりゃ思うね」

 長老は村の物知りたちを集め、ボビーさんとの物知り対決をしました。

 村の物知りの中には、都会の大学を出たものもおり、長老はこれでボビーさんの鼻をあかしてやれるとほくそえみました。

 ノンちゃん
 「負けるなニッポン!」

 ところが日本史の問題、日本語の言語学の問題など、物知りたちが知恵を絞って考え出した問題はことごとくボビーさんに駆逐され、反対に一歩進んだ問題で切り返される始末でした。

 物知りたちは惨敗しました。

 「仕方がないよ。我々は都会の大学を出たけど、ボビーさんは都会の大学院を出て専門の勉強をしてるんだ」

 物知りたちはそういって自分たちを慰めました。

 ノンちゃん
 「でしょ。だから私も一生懸命英語を勉強して、アメリカでボビーさんみたいになりたいのよ」

 長老たちも、「やはり勉強したものには勝てない、これからはそういう時代だ」と妙に納得したりしました。

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 ところが大長老の千代の介翁は違いました。

 「この村には村のしきたりがある。人の暮らしに溶け込むには知識を勉強してひけらかすことではなく、謙虚に土をなめるように体に村を染み込ませることだ」

 と言いました。

 ノンちゃん
 「いるんだよねどこにでも。そういう理屈っぽい年寄りが・・・」

 千代の介翁は村の子供たち4人を集め、ボビーさんと勝負をさせました。

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 千代の介翁
 「第一問。犬は何て鳴く?」

 ボビーさんも子供たちも「ワン」と応えました。

 ボビーさんは言いました。

 「なるほど擬音語・擬態語ですね。確かに他国言語取得者にはもっとも大きな落とし穴かもしれませんね。しかし私にとっては朝飯前、ましてや子供たち相手に・・・」

 ノンちゃん
 「確かに盲点ね。犬はアメリカだとバウバウだよ^-^;」

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 千代の介翁
 「では次の問題じゃ。川上から大きな桃が流れて来おった。さてなんと音をたてて流れて来おったかの?」

 ボビーさんは頭をフル回転させました。

 大きな桃はどのくらいの大きさだろう?

 桃は実が柔らかいから反響する音より吸収する音になるだろう・・・

 川を流れるといえば「サラサラ」とか「ユラユラ」だけど、この場合は桃の質量もあるだろう・・・

 たまには桃が川底に接するかもしれない・・・

 そういう条件下で日本人が好む擬音語・擬態語を考えると・・・

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 コチサ
 「でね、ボビーさんはコロリゴロゴロと書いたんだ^-^;」

 ノンちゃん
 「・・・」

 コチサ
 「ノンちゃんだったら何て書く?」

 ノンちゃん
 「どんぶらこ、どんぶらこ・・・」

 コチサ
 「そう。4人の子供たちもそう書いたんだ^-^;」

 ノンちゃん
 「で、ボビーさんはどうなったの?」

 コチサ
 「前よりおしゃべりになったんだ。特に擬音語・擬態語に関しては勝手に日本語と英語をあわせたものを作ったりしてね。そしたら何故だか急にみんなから好かれるようになってね。ボビーさん発音変だけど面白いって」

 ノンちゃん
 「ふーん」

 コチサ
 「ふーんって?」

 ノンちゃん
 「それとっさの作り話?」

 コチサ
 「ううん。オチのネタは前から考えていたんだけどね。タイミングを見計らってたとこ^-^;」

 ノンちゃん
 「・・・」

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 どうあがいたって、どんなに嫌がったって、自分の根っこは変えられません。

 でもその根っここそ自分の中で一番太くて頑丈なものです。

 どんなに大きな台風や大地震が来ても、そこにしっかり捕まっていれば飛ばされることはありません。

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 コチサ
 「コチサ曰く、天は自ら根っこを愛するものを助く、ヘブン ヘルプス ゾーズ フー ラブズ、ゼムルーツ!!!」

 ノンちゃん
 「Heaven helps those who help themselves.・・・まぁ英検3級程度の人間が思いつく駄洒落だね」

 コチサ
 「失敬だな(`_')」

 ノンちゃん
 「じゃぁ何級?」

 コチサ
 「はい3級です(;o;)」

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