暑さは、毎日楽しみにしているランチまで「出不精」にしてくれちゃいます。 赤坂、六本木と、美味しいランチには事欠かない環境で、それが目的で出社してきていると言っても過言ではなかったコチサですが・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「暑い・・・」 社長 「どうでもいいけど、首から汗たらすのやめれば?子どもじゃないんだから」 コチサ 「そんなこと言ったって、出ちゃうんだから仕方ないでしょ」 社長 「それで首に黒い線でも出来たら、まるで蝉取りから帰ってきた、きかん坊って感じだよ」 コチサ 「どうでもいいけど、今時「きかん坊」なんていわない方がいいよ。歳がしのばれるよ」 社長 「・・・」 コチサ 「お昼だね・・・暑くてもお腹が空くよ」 社長 「じゃぁおいらは、冷やし中華でも食べて来るか」 コチサ 「行ってらっしゃい」 社長 「あれ、行かないの?」 コチサ 「行くわけないじゃん、太陽ギラギラだよ」 事務所の前には、「○○○○」というお弁当屋さんがあります。 これまでも時々利用させてもらっていたのですが、ここのところは毎日通うようになり、受付のおばさんとかなり仲良くなってしまいました。 ところがあんまり仲良くなると、お互い引くに引けなくなる事件が起こるものです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「こんにちは」 おばさん 「いらっしゃい、今日は何?日替わりは酢豚よ」 コチサ 「酢豚かぁ・・・じゃぁのり明太に」 おばさん 「はい。のり明太ねー」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: のり明太が出来るまでの間は、しばしこのおばさんとの会話の時間になります。 おばさんはご近所情報に詳しいので、コチサもいろいろ参考になる話が聞けます。 そしてお弁当が出来あがって・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: おばさん 「はい、毎度、のり明太」 コチサ 「はい450円」 おばさん 「はい、ありがとうございます」 コチサ 「どうも、あれ?」 おばさん 「(目で追い払うように)いいから、いいから、行って行って」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: のり明太の入ったビニール袋には、サラダが1パック入っていました。 これが始まりでした。 それからおばさんは、コチサが買いに行くたびに、まるでそれが使命かのように、店長の目を盗み何かをおまけしてくれるようになりました。 おにぎり、パック味噌汁、惣菜1品・・・ コチサは、後ろにいる店長の目が気になり、「ありがとうございます」の一言も言えず、おばさんはおばさんで、ヒヤヒヤしながら手を震わせて「おまけ」を隠します。 なんでただのお昼が、いつからこんなにスリルとサスペンスの展開になってしまったんだろう? そしてそんなにもドキドキしながらも、おまけを楽しみに毎日お弁当を買いに行くコチサもコチサです。 でもコチサにも言い分があり、別におまけを楽しみにしているわけではなくて、そんな戦いを繰り広げているおばさんの気持ちを思うと、急に行かなくなるのは、「脱落者」のような気持ちになるのです。 そしてある日・・・ レジを打ち、お弁当を詰めるおばさんの背後には、腕を組んで怖い顔をした店長が睨んで立っていました。 のり明太を手渡すおばさんは、口パクで「ごめんね」と言いました。 おばさん、見つかっちゃったんだ。 怒られちゃったんだ。 しかしコチサとしては、ここで急に行かなくなってはなんだかおまけを狙っていたようなので・・・行かないわけにいきません。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: それから暫くは、お互い不自然な笑顔と会話で、お昼のお弁当の時間が過ぎて行きました。 おばさんは、「毎度ありがとう」の代わりに「ごめんね」と言い、コチサは「いいえ」と応えて、お弁当の入った包みをもらう。 結構心苦しい、それでもやめるにやめられない、複雑な時間が過ぎました。 そして・・・ おばさんの目が、また輝き出しました。 もらった包みに、またお味噌汁や、お茶が入ってきました。 おばさん、どうしたんだろう? みそぎは終ったのかな・・・ おばさんのまなざしには、何か吹っ切った人間の力強さがありました。 おばさんに何があったかわかりませんが、でもコチサには必ずおまけをつけようと決めたようです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: しかし・・・ おまけのストックの無い日だってあるはずです。 そんな時でも、おばさんは・・・ 昨日の事でした・・・ お弁当のケースに、ご飯だけが山盛り詰められたもう一ケースが追加されていました。 通常のお弁当に、もう一人前ライスだけが付いてきたのです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: これは難しいです。 おかずとご飯の割合が違うし、いくらコチサと言えども白米だけ一人前食べることは出来ません。 そこには「おまけ」という枠を超えた、戦いの戦利品がありました。 結局、その白米は冷凍し、家に持って帰って夕食になりました・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: それでも・・・ 今日も少しの恐怖と楽しみを持って、お昼時間になると、お弁当屋さんに呼び寄せられてしまうコチサです。 |
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