2ヶ月ぶりの大道芸のお仕事に復帰しました。 いつもの日曜日、いつものステージ、顔馴染みのメンバーが顔を揃えていました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ジャグラーのカズホさん 「久しぶり、大丈夫?」 コチサ 「うん、もう快調、快調」 ベリーダンスのエミちゃん 「元気そうだね、大丈夫?」 コチサ 「うん、もう大丈夫。それよりエミちゃん、今日のベリーダンスはミキちゃんじゃない?」 エミちゃん 「うん、今日は出番はないけど、病み上がりだからお手伝いにきたよ」 コチサ 「ありがとう、わざわざコチサの為に無理してもらって・・・入院中はお見舞いまでもらった上にこんなことまでされたら、コチサ心苦しいよ」 エミちゃん 「お見舞い・・・してないけど」 コチサ 「うん、知ってる。だから心苦しくないってこと」 エミちゃん 「・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ステージでは相変わらずの名人芸を見せてくれて、ちょっと近寄りがたいオーラを放つメンバーは、一歩楽屋に入ると、気さくなお兄ちゃん、お姉ちゃんに早変わりします。 どこのお店の何が美味しいとか、洋服はどこがおしゃれで安いですとか・・・ 想像していた、ステージでの反省をしながら演技論を戦わせて次のステージを待つ、ような雰囲気は一切ありません。 コチサも楽屋では、いっちょまえに「タメ口」聞きながら鼻を膨らませて盛り上がっています。 そして、無事にスケジュールが消化され、今日最後のステージとなりました。 前フリのMC、ささやかなパフォーマンスを終え、いつものようにピエロコチサはステージを降り、客席を回っていました。 ステージではカズホさんの、7つのボールを使ったジャグリングが佳境を迎えています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: おじさん 「あんた、また戻ってきたんだね」 コチサ 「えっ?」 おじさん 「ここ2ヶ月くらい顔出してなかったろ」 コチサ 「えぇ、まぁ」 おじさん 「売れっ子になって、どっか大きいとこ行っちゃったかと思ったよ」 コチサ 「おじさん、コチサのこと覚えていてくれたの?」 おじさん 「わしだけじゃないよ、みんなで話してたよ。あのピエロの子、どうしたろうってね。そうしたら、あいつが、きっと売れてもうここには来ないんだよっていうもんだからね・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: あいつと言われた、このおじさんの奥さんらしき人が、カズホさんのステージから目を離し、手を振ってくれています。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: おじさん 「ここには、あんたのファンは大勢いるしな。みんなあんたの来るのを楽しみに待っているから、忙しくなっても時々は顔を出してな」 ピエロのメイクの基本は「可笑しくて悲しくて」です。 笑顔の中に涙があって、涙の中に笑顔が必要です。 コチサのピエロ化粧は、笑顔ばっかりでした。 でも今、その笑顔の化粧の顔が思いっきりゆがみました。 頭を下げてその場を離れながら、 「今、泣き笑いの本当のピエロの顔になっている」 と思いました。 こんな下っ端のピエロを待っていてくれる人がいたことが、コチサには大きな励みになりました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: そして、実際は手術でお休みしていたのですが、 「売れっ子になって、どっか大きいとこ行っちゃった」 と噂してくれた事が嬉しかったのです。 「きっと、嫌になって辞めちゃったんだね」 と噂する事も出来たと思います。 そう噂しなかったということは、コチサのピエロから「ポジティブなイメージ」を感じ取ってくれていた事になります。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 芸の無いピエロを待っていてくれている人がいた事、そのピエロから元気なイメージを感じてもらっていた事・・・ まだまだ未熟なピエロが、初めてピエロ冥利につきる喜びをもらった瞬間でした。 次回のステージが、待ち遠しくなったコチサでした。 |
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