No.329「ピエロの涙!」  2003.8.2

 写真・・・ピエロコチサ1

 2ヶ月ぶりの大道芸のお仕事に復帰しました。

 いつもの日曜日、いつものステージ、顔馴染みのメンバーが顔を揃えていました。

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 ジャグラーのカズホさん

 「久しぶり、大丈夫?」

 コチサ

 「うん、もう快調、快調」

 ベリーダンスのエミちゃん

 「元気そうだね、大丈夫?」

 コチサ

 「うん、もう大丈夫。それよりエミちゃん、今日のベリーダンスはミキちゃんじゃない?」

 エミちゃん

 「うん、今日は出番はないけど、病み上がりだからお手伝いにきたよ」

 コチサ

 「ありがとう、わざわざコチサの為に無理してもらって・・・入院中はお見舞いまでもらった上にこんなことまでされたら、コチサ心苦しいよ」

 エミちゃん

 「お見舞い・・・してないけど」

 コチサ

 「うん、知ってる。だから心苦しくないってこと」

 エミちゃん

 「・・・」

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 写真・・・ピエロコチサ2

 ステージでは相変わらずの名人芸を見せてくれて、ちょっと近寄りがたいオーラを放つメンバーは、一歩楽屋に入ると、気さくなお兄ちゃん、お姉ちゃんに早変わりします。

 どこのお店の何が美味しいとか、洋服はどこがおしゃれで安いですとか・・・

 想像していた、ステージでの反省をしながら演技論を戦わせて次のステージを待つ、ような雰囲気は一切ありません。

 コチサも楽屋では、いっちょまえに「タメ口」聞きながら鼻を膨らませて盛り上がっています。

ライン

 写真・・・ジャグラーのカズホさん

 そして、無事にスケジュールが消化され、今日最後のステージとなりました。

 前フリのMC、ささやかなパフォーマンスを終え、いつものようにピエロコチサはステージを降り、客席を回っていました。

 ステージではカズホさんの、7つのボールを使ったジャグリングが佳境を迎えています。

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 おじさん

 「あんた、また戻ってきたんだね」

 コチサ

 「えっ?」

 おじさん

 「ここ2ヶ月くらい顔出してなかったろ」

 コチサ

 「えぇ、まぁ」

 おじさん

 「売れっ子になって、どっか大きいとこ行っちゃったかと思ったよ」

 コチサ

 「おじさん、コチサのこと覚えていてくれたの?」

 おじさん

 「わしだけじゃないよ、みんなで話してたよ。あのピエロの子、どうしたろうってね。そうしたら、あいつが、きっと売れてもうここには来ないんだよっていうもんだからね・・・」

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 あいつと言われた、このおじさんの奥さんらしき人が、カズホさんのステージから目を離し、手を振ってくれています。

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 おじさん

 「ここには、あんたのファンは大勢いるしな。みんなあんたの来るのを楽しみに待っているから、忙しくなっても時々は顔を出してな」

ライン

 写真・・・ピエロコチサ3

 ピエロのメイクの基本は「可笑しくて悲しくて」です。

 笑顔の中に涙があって、涙の中に笑顔が必要です。

 コチサのピエロ化粧は、笑顔ばっかりでした。

 でも今、その笑顔の化粧の顔が思いっきりゆがみました。

 頭を下げてその場を離れながら、

 「今、泣き笑いの本当のピエロの顔になっている」

 と思いました。

 こんな下っ端のピエロを待っていてくれる人がいたことが、コチサには大きな励みになりました。

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 そして、実際は手術でお休みしていたのですが、

 「売れっ子になって、どっか大きいとこ行っちゃった」

 と噂してくれた事が嬉しかったのです。

 「きっと、嫌になって辞めちゃったんだね」

 と噂する事も出来たと思います。

 そう噂しなかったということは、コチサのピエロから「ポジティブなイメージ」を感じ取ってくれていた事になります。

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 芸の無いピエロを待っていてくれている人がいた事、そのピエロから元気なイメージを感じてもらっていた事・・・

 まだまだ未熟なピエロが、初めてピエロ冥利につきる喜びをもらった瞬間でした。

 写真・・・ピエロコチサ4 次回のステージが、待ち遠しくなったコチサでした。


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