コチサ 「悪いね、付き合ってもらって」 社長 「いや、とんでもない、ご招待にあずかって」 コチサ 「いや、招待をしてくれたのは、会長だから」 社長 「このたびは・・・」 会長 「なんの、なんの」 というわけで、コチサ回復記念、しますえよしおさんのシャンソニエ「蟻ん子」ツアーが開催されました。 今回はいつものコンビに加えて、家庭の事情で夜のお付き合いは全て断るという社長も特別に参加させてしまいました。 四谷三丁目の異空間「蟻ん子」・・・ 「四国の山猿がシャンソンなんて」と自分でも思うのですが、コチサはしますえさんの歌声に元気を呼び起こされます。 今回は一応手術を経ての快気祝いなので、個人的に感無量、感動もひとしおです。 そんな事情は知らないしますえさんですが、コチサにはコチサの為にお祝いしてくれているように感じる熱唱でした。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: しますえさん 「こんばんは、ようこそ」 コチサ 「なんの、なんの・・・あの、これ、つまらないものですが、うちの社長です」 しますえさん 「ようこそいらっしゃいました」 社長 「すてきなお声をありがとうございます」 しますえさん 「ここは初めてでいらっしゃいますか?」 社長 「いや、20年くらい前にお邪魔した事が・・・」 しますえさん 「そうなんですか」 社長 「ええ、その頃はこういうスクール形式のテーブル配置じゃなくて・・・」 しますえさん 「そうなんですよ・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: おいおい、君たち。 今日の主役はこのコチサですぞ。 それに、過去に蟻ん子を知ってたなんて聞いてないぞ。 じゃぁ、今までのコチサの自慢話はどうなっちゃうんだ。 「銀巴里」時代から知っているという事で、しますえさんも懐かしさが募ったのか、その後のステージでは、そんな会話も交えて、ノリもよく歌ってくれている気がしました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「良かったね、しますえさんと旧交を温めあえて」 社長 「なんの、なんの」 コチサ 「リクエストまで歌ってもらってさ」 社長 「君だって、大好きな「街灯」歌ってもらったじゃない」 コチサ 「あれはコチサがリクエストしたわけじゃない、偶然さ」 社長 「でも、結果的には同じでしょ」 コチサ 「ちょっと違う」 社長 「あのさ・・・」 コチサ 「何?」 社長 「子どもの頃、小学校に活動写真が来てね、夜、校庭で上映するんだよ・・・」 コチサ 「?」 社長は東京生まれの東京育ちですが、大都会東京でもそんな時代があったそうです。 外国の映画がやって来て、小学校の校庭を使って上映会が開かれる。 近所からは、一風呂浴びたおじさん、おばさん、子どもたちが、浴衣や雪駄履き、思い思いの格好で集まってくる・・・ でも、娯楽なんて考えもしたことのない時代、いきなり海外の映画スターが奏でる銀幕の舞に、大人も子どももすぐに興味を失ってしまうそうです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 社長 「あまりにも世界が違うから、理解できないし、わけわからないんだろうね」 コチサ 「もったいない話だね」 社長 「でもね、そんな中に、ひとりかふたり、たいてい小学校1年生か2年生くらいの子どもなんだけどね・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: もうポカーンと口をあけて、食い入るようにスクリーンを見つめて、よだれが垂れているのも気がつかず、目を爛々と輝かせ、その世界に入っている子どもがいるそうです。 そうなると、もうその子の周りは特殊なオーラで包まれ、映画もまさにその子のためだけに上映されているような強い光をその子に浴びせます。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 社長 「そんな時にね、おじさんおばさんたちは言うんだよ。この子には芸術を理解する力があるのかも知れない。こんな田舎のクソガキが、世界の映画を理解しているよって・・・猿股に手を突っ込んで、股のあたりを掻きながら、おじさんはそう一席ぶつんだよ」 コチサ 「それが何か?・・・なんか嫌な予感がするんだけど」 社長 「いや、しますえさんを一心に聴いている君の姿を見たらね・・・」 コチサ 「ポカーンと口をあけて、よだれが垂らしている田舎の芸術家を思い出したっていうのかい」 社長 「まぁ、そういうこと」 コチサ 「コチサそんな間抜けな顔して、聴いてるの?」 会長 「いや、コチサさんはいつもそうですよ。間抜けなんじゃなくて、魂が吸い取られたような顔をしています。本当にシャンソンが好きなんだなぁって・・・私はその顔を見るのが嬉しくてご招待をしてるんですよ」 コチサ 「それは、かたじけない」 病室のベッドで、しますえさんのシャンソンは元気の素になってくれました。 退院したら、また生で聴ける、だから今は辛抱して、良くなるように過ごそう・・・ 心の中では、巴里祭の7月14日をその日と決めて体調を戻して来ましたが、実際は予定より10日ほど遅れてしまいました。 でも10日遅れのコチサの巴里祭は、新しいコチサの誕生と元気を呼び覚ましてくれました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: しますえさん 「今日は、ありがとうございました」 コチサ 「こちらこそ、ありがとうございました」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 「長い間、歌っていると、いろんなお客さんが来てくれる。喜び悲しみ、たくさんの人生を見聞きする事になる。だから何があっても、めったに平常心を失うことはないよ」 ステージの合間に、しますえさんが楽屋で言った言葉だそうです。 しますえさんの歌声に、今日もたくさんの人たちの、たくさんの人生の回転木馬が回りました。 |
<BACK | NEXT> |