コチサ 「もしもし、お父さん?」 お父さん 「おぅ元気か?」 コチサ 「元気だよ」 お父さん 「今日は何だ?」 コチサ 「そろそろ桜の季節だからさ」 お父さん 「お前は子供の頃は、花なんか興味なかったじゃないか」 コチサ 「あの頃は、桜にひそむ日本人の侘び寂びの心がわからなかったんだよ」 お父さん 「ほう、お前も花を愛でるようになったか」 コチサ 「まぁね!」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: しかし実は、コチサは子供の頃、東京でするようなお花見の経験はありません。 家の周りは山ばっかりだったし、季節になればいろいろな花が咲くのは当たり前の事で、桜の花といってもそのうちのひとつに過ぎなかった記憶があります。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「だから東京に出てきた時、みんなが桜の花でお花見お花見って騒いでいるのが良くわからなかったよ」 お父さん 「そうやろな。こっちではテレビで見るような花見はようやらんしな」 コチサ 「うちの庭には、今頃は、椿が咲いていたよね」 お父さん 「そうやな、お父さんの好きな花や」 コチサ 「お父さん、椿の花を川にポトンと落として、椿三十郎だってよく言ってたね」 お父さん 「それは、お父さんが好きだった黒澤明の映画のシーンや」 コチサ 「コチサは椿はあんまり好きじゃなかった」 お父さん 「花が咲いたままポトンと落ちるからな。お前は怖がってた」 コチサ 「美しい花が枯れないで美しいままに落ちるところが、当時から美しい子供だったコチサは何か嫌だったのかなぁ?」 お父さん 「・・・。お前、何の用や?つまらん事言っとると電話切るでぇ」 コチサ 「何よ。寂しいかなと思って電話してあげたのに」 お父さん 「わしは、別に寂しくないぞ」 コチサ 「椿咲く春なのにぃ、娘は帰らないぃーんだよ」 お父さん 「だから別に帰らんでええって」 コチサ 「たたずむぅ、瀬戸内海に、涙の雨が降っちゃうよ」 お父さん 「・・・」 コチサ 「一人この胸に顔をうずめて、もう一度幸せかみしめたくないの?」 お父さん 「大丈夫か?お前?」 コチサ 「♪トラワヨープサンハンヘ、会いたいあなたぁ〜」 お父さん 「お前、香川に帰らんでいいから、釜山港に帰れ!」 すいません。 桜の花の話から、故郷の郷愁を父と娘が語る話を書くつもりでしたが、椿の話から、頭の中に、チョーヨンピルさんの「釜山港へ帰れ」が鳴り出して、話が脱線してしまいました(*^^)v ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: そういえば、渥美二郎さんはどうしてるんだろう。 何年か前の夏、新宿で、大きく「渥美二郎」と染められた着物を着ている、年配のご婦人の集団に遭遇した事がありました。 コマ劇場かどこかでコンサートをしていたのかも知れません。 知り合いもいないから釜山港にも帰れず、瀬戸の花嫁にもなれないコチサは、さぁどこへ行く? |
<BACK | NEXT> |