No.288「治外法権物語その2」  2003.1.16

 写真・・・カメラに手を振る余裕(!?)のコチサ!

 前号(287号)より続いてます。
 (まだ読んでいない方はそちらからどうぞ!)


ライン

 写真・・・間もなくゴールのコチサ!(コチサはどこだ?)

 ボブとジャスミンをペースメーカーにコチサが走っています。

 10.6キロの折り返し地点を過ぎて、横田基地の飛行場の周りを疾走しています。

 コース誘導のボランティアの人たちは、とても陽気です。

 「ヘーイ!」

 「ワォァオウ」

 「ギャィー」

 などと大声で、誰よりも騒いでランナーを盛り立ててくれています。

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 バービー人形のように美しい女性が、コース誘導の仕事を忘れて、コースに飛び出して、来るランナー来るランナーとハイタッチをして騒いでいます。

 「これって、出走失格になるんじゃないの?」

 と一瞬思う間もなく、

 ボブとジャスミンがコチサに囁きます。

 「OH!No! This is USA」

 そうだ、そうだ。

 「This is USA」

 コチサは楽しむことに決めたんだ。

 コチサもこのフランス人形に負けないくらい大きな声を出して、ハイタッチです。

 「ハーイ!」

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 コチサ

 「ねぇボブ見た?、バービー人形と日本人形のハイタッチだよ。日米の「美」の競演だよ」

 ボブ、ジャスミン

 「・・・」

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 写真・・・もうすぐゴール!(コチサはわかる?)

 このボランティアの人たちは、ほとんど英語を話しますが、時々奇妙な日本語を使ってランナーを惑わせてくれました。

 「ハーイ、モウスグ、オリカエシ、デース」

   ・・・その声を聞いてから、2キロ以上ありました。

 「オイシイ、ドリンク、イカカデスカァ、アマイデース」

   ・・・ただの水でした。

 「ミギニヨッテ、クダサーイ」

   ・・・右は崖でした。

 「ガンバレ、アトスコシ、ゴールデス」

   ・・・延々ゴールまで3キロ以上ありました。

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 でも全てボブとジャスミン曰く、

 「This is USA」

 なのです。

 走る人も応援する人も、同じ時間、同じ場所にいるんだから同じくらい一緒に楽しまなくちゃ・・・

 そんな思いがビンビンに伝わってきます。

 優勝者が主役ではありません。

 勿論大会参加費を払ったランナーが主役でもありません。

 みんなが、その場に居る人たちが主役です。

 いやもっと言えば、主役とか脇役とか全然関係が無くて、一緒に生きている、だから楽しもう!

 ・・・そんな感じなのかもしれません。

ライン

 写真・・・ゴールは目の前!

 汗が固まり、白い塩となって顔に張り付きます。

 老廃物も混ざった塩ですが、一口手でこすって嘗めてみると、コチサにとっては、体が目覚める元気の塩となりました。

 ボブの顔にも、ジャスミンの顔にも、塩が噴出しています。

 15キロの表示が見えました。

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 ボブ

 「コチサ、もう君は大丈夫。ペースメーカーはいらない。一人でアメリカを満喫できるはずさ」

 コチサ

 「そ、そんなぁ」

 ジャスミン

 「そうよ、コチサ。私たちはここでお別れ。もうコチサは一人で、この広いアメリカを渡っていける、Good Luck!」

 コチサ

 「な、なんで?ここまで来たんだよ。みんなで一緒にゴールしようよ」

 ジャスミン

 「私たちの役目はゴールすることじゃないの。コチサにアメリカを知ってもらうこと、(ハァハァ)アメリカを楽しんでもらうことなのよ」

 ボブ

 「そうだよ、コチサ(ハァハァ)、僕たちの役目は終わった、コチサは僕たちの国アメリカを愛してくれた。だからこれでいいのさ、(ハァハァ)Good Bye,my friend」

 コチサ

 「あのさぁ、時折挿入される、ハァハァって何なの?もしかしてただ疲れちゃっただけじゃないの」

 ボブ、ジャスミン

 「OH!No! This is USA」

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 脱落したボブとジャスミンを遥か後方に残し、コチサのラストスパートが始まりました。

 「へっ、ほっ、へっ、ほっ、デス、イズ、アメ、リカ」

 さっきあみ出したリズム走法で、ゴールへ一直線。

 写真・・・ゴールです! そして、感動のゴール!!!

ライン

 ビリー

 「コチサさん、おめでとう、完走だね」

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 コチサランナーズクラブのビリーが駆け寄って来てくれました。

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 カポちゃん

 「おめでとう」

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 ビリーの愛娘、さっき5キロを走った10歳がもう元気に笑っています。

 とりあえず、汗をかいたので、先ず着替えなくては・・・

 写真・・・ゴールしトボトボ歩くコチサ^^;

 そして更衣室へ

 わおー!!!

 やっぱりアメリカ…

 再びコチサ赤面

ライン

 ビリー

 「さぁ帰りましょうか」

 コチサ

 「・・・」

 ビリー

 「コチサさん、何ゴール見てるんですか?」

 コチサ

 「ボブとジャスミンを・・・」

 ビリー

 「もうみんなゴールして、走ってるランナーはいませんよ」

 コチサ

 「じゃぁ、ボブとジャスミンは、コチサが着替えてる時ゴールしちゃったんだ・・・失敬だな、一言くらい挨拶に来ればいいのに」

 カポちゃん

 「コチサさん、走ってる時、ずーと右と左見ながら一人でお話してたね」


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