![]() 前号(287号)より続いてます。 (まだ読んでいない方はそちらからどうぞ!) ![]() ![]() ボブとジャスミンをペースメーカーにコチサが走っています。 10.6キロの折り返し地点を過ぎて、横田基地の飛行場の周りを疾走しています。 コース誘導のボランティアの人たちは、とても陽気です。 「ヘーイ!」 「ワォァオウ」 「ギャィー」 などと大声で、誰よりも騒いでランナーを盛り立ててくれています。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: バービー人形のように美しい女性が、コース誘導の仕事を忘れて、コースに飛び出して、来るランナー来るランナーとハイタッチをして騒いでいます。 「これって、出走失格になるんじゃないの?」 と一瞬思う間もなく、 ボブとジャスミンがコチサに囁きます。 「OH!No! This is USA」 そうだ、そうだ。 「This is USA」 コチサは楽しむことに決めたんだ。 コチサもこのフランス人形に負けないくらい大きな声を出して、ハイタッチです。 「ハーイ!」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「ねぇボブ見た?、バービー人形と日本人形のハイタッチだよ。日米の「美」の競演だよ」 ボブ、ジャスミン 「・・・」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ![]() このボランティアの人たちは、ほとんど英語を話しますが、時々奇妙な日本語を使ってランナーを惑わせてくれました。 「ハーイ、モウスグ、オリカエシ、デース」 ・・・その声を聞いてから、2キロ以上ありました。 「オイシイ、ドリンク、イカカデスカァ、アマイデース」 ・・・ただの水でした。 「ミギニヨッテ、クダサーイ」 ・・・右は崖でした。 「ガンバレ、アトスコシ、ゴールデス」 ・・・延々ゴールまで3キロ以上ありました。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: でも全てボブとジャスミン曰く、 「This is USA」 なのです。 走る人も応援する人も、同じ時間、同じ場所にいるんだから同じくらい一緒に楽しまなくちゃ・・・ そんな思いがビンビンに伝わってきます。 優勝者が主役ではありません。 勿論大会参加費を払ったランナーが主役でもありません。 みんなが、その場に居る人たちが主役です。 いやもっと言えば、主役とか脇役とか全然関係が無くて、一緒に生きている、だから楽しもう! ・・・そんな感じなのかもしれません。 ![]() ![]() 汗が固まり、白い塩となって顔に張り付きます。 老廃物も混ざった塩ですが、一口手でこすって嘗めてみると、コチサにとっては、体が目覚める元気の塩となりました。 ボブの顔にも、ジャスミンの顔にも、塩が噴出しています。 15キロの表示が見えました。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ボブ 「コチサ、もう君は大丈夫。ペースメーカーはいらない。一人でアメリカを満喫できるはずさ」 コチサ 「そ、そんなぁ」 ジャスミン 「そうよ、コチサ。私たちはここでお別れ。もうコチサは一人で、この広いアメリカを渡っていける、Good Luck!」 コチサ 「な、なんで?ここまで来たんだよ。みんなで一緒にゴールしようよ」 ジャスミン 「私たちの役目はゴールすることじゃないの。コチサにアメリカを知ってもらうこと、(ハァハァ)アメリカを楽しんでもらうことなのよ」 ボブ 「そうだよ、コチサ(ハァハァ)、僕たちの役目は終わった、コチサは僕たちの国アメリカを愛してくれた。だからこれでいいのさ、(ハァハァ)Good Bye,my friend」 コチサ 「あのさぁ、時折挿入される、ハァハァって何なの?もしかしてただ疲れちゃっただけじゃないの」 ボブ、ジャスミン 「OH!No! This is USA」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 脱落したボブとジャスミンを遥か後方に残し、コチサのラストスパートが始まりました。 「へっ、ほっ、へっ、ほっ、デス、イズ、アメ、リカ」 さっきあみ出したリズム走法で、ゴールへ一直線。 ![]() ![]() ビリー 「コチサさん、おめでとう、完走だね」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサランナーズクラブのビリーが駆け寄って来てくれました。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: カポちゃん 「おめでとう」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ビリーの愛娘、さっき5キロを走った10歳がもう元気に笑っています。 とりあえず、汗をかいたので、先ず着替えなくては・・・ ![]() そして更衣室へ わおー!!! やっぱりアメリカ… 再びコチサ赤面 ![]() ビリー 「さぁ帰りましょうか」 コチサ 「・・・」 ビリー 「コチサさん、何ゴール見てるんですか?」 コチサ 「ボブとジャスミンを・・・」 ビリー 「もうみんなゴールして、走ってるランナーはいませんよ」 コチサ 「じゃぁ、ボブとジャスミンは、コチサが着替えてる時ゴールしちゃったんだ・・・失敬だな、一言くらい挨拶に来ればいいのに」 カポちゃん 「コチサさん、走ってる時、ずーと右と左見ながら一人でお話してたね」 |
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