達人とのインタビューより… コチサ 「…よくわかりました。で達人、巷では仏の達人と呼ばれていますが、人に腹を立てることはないんですか?」 達人 「そういえば、最近は腹が立つ事もなくなりましたね」 コチサ 「っていう事は、仏の達人も昔は腹が立っていたとか?」 達人 「そうですね。結構しょっちゅう腹が立っていたかも知れません」 コチサ 「なるほど、ではかつてはそれを我慢していたわけですね。そしていつの間にかそれが身についた。という事は仏の秘伝は我慢に有り!ですね」 達人 「違いますね。我慢してたら体に良くないでしょ。長生きできないでしょ。私は腹が立ったらそれをスーっと治める方法を身に付けたんですよ、きっと」 コチサ 「あるんですか、そんな方法。是非コチサにも教えて下さい」 達人 「でも人それぞれですからね。それに今の世の中じゃどうかなぁ…」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 子供の頃の達人は喧嘩早くて力自慢… わがまま放題でいじめっ子だったそうです。 達人が中学一年生の時の運動会の時のことでした。 お昼休み、生徒たちは校庭で思い思いにお弁当を広げ騒いでいました。 いつもは給食なので、こういうお弁当の時は何故かみんなのテンションも上がります。 達人もお母さんが作ってくれたお弁当を食べていました。 その達人の隣には、クラスメートの森屋君が座っていました。 森屋君は、ちょっとそそかっしくて要領が悪いところがあって、達人にとっては格好のいじめ相手だったそうです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 若かりし達人 「おう、森屋。お前何食ってんだよ」 森屋 「俺、天ぷら。…俺さぁ天ぷら大好きなんだよなぁ…天ぷらにすると嫌いなものでも食べちゃうんだよ。だから母ちゃんが何でも天ぷらにしてくれるんだ…あーうめー」 達人 「…」 森屋 「ん?お前は何食ってんの?」 達人 「あ、あぁ、俺はソーセージ」 森屋 「ふーん、ソーセージが好きなんだぁ」 達人 「…」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: この時、達人ははじめて、自分だけではなく森屋君にも親がいるということに気がついたそうです。 いや、ご両親がいるという事は当然解っている事ですが、実感として気がついたそうです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 達人 「森屋の事が誰よりも可愛くて、だから朝早くから起きて子供が喜ぶようにって天ぷらを揚げているお母さん…その姿が見えたんですよ」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 達人はそれっきり森屋君をいじめたりからかったりしなくなったといいます。 いや森屋君だけじゃなくて、他のみんなにも… それ以降、社会人になって嫌なことがあっても、嫌な人間に出会っても、たとえ理不尽な目に合わされても、「森屋君のお弁当」を思い出すと不思議と相手に対する怒りや憎しみが消えたといいます。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 達人 「自分にとってはものすごく嫌なやつだけど、こいつにも親がいる。こいつを無条件に愛する親がいる。ここで喧嘩したり戦ってやり込めたりしたら、こいつを愛する親が悲しむ…反対に自分がやり込められたら、自分の親が悲しむしね…いつの間にかそうやって相手を見ないで、この相手を愛する親の方を見るようになってね…そうするとなんかその相手もそんな悪いやつじゃないのかって気がしてね…」 そういえばこんな話を聞いた事があります。 「子供が生まれた時、親はとても幸せになる。 それに勝る幸せなんかない。 だからその幸せをくれたあなたが この先どんな苦労をかけようと私はかまわない」 そんな親の言葉です。 命名「サチコ」 墨で書かれた半紙が、コチサ邸でも貼られていたのでしょう。 親の期待があるから道は踏み外せないし、無茶は出来ない。 それが足かせになることもあるけど、でも名前を付けてくれた時の気持ちを考えたらそんなもの何でもない。 達人は万人に共通な「親子愛」を逆手にとって、自分なりの人を憎まない方法を考えたのでしょう。 達人 「でも最近は、万人に共通な親子愛っていうのも疑問になってきてますね」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: そう。 だからこそ、そういう気持ちを持ち続けなくちゃいけない気がしました。 「森屋君のお弁当」と「命名サチコ」。 コチサもこの二つのイメージを頭に刻み込んで、交渉ごとに臨んでいこうと思いました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 達人 「MCの世界もそんなに人間関係が大変なんですか?」 コチサ 「いや、そういうわけじゃなくて。とりあえず心得ですよ、心得」 達人 「そうですか」 コチサ 「で、達人は、ソーセージが好きなんですか?」 達人 「いや嫌いじゃないんですけど。実は私も天ぷらのお弁当が大好きでね。だからこそあの時の森屋の気持ちがよく伝わってきたのかもしれません」 コチサ 「天ぷらのお弁当、コチサも好きです。もしかしたら万人に共通なものって「天ぷらのお弁当」の方かも知れませんね」 |
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