企画書を書くなど去年の12月から関わっていた、某施設の展示設計の仕事が竣工を迎えるということで、コチサも「どれどれ」と、海を臨む葉山まで、立会いに出かけていきました。 コチサ 「竣工、おめでとうございます」 理事長 「コチサさんのおかげで立派なものが出来ました、ありがとうございました」 コチサ 「なんの、なんの」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ・・・というのは真っ赤な嘘で、外様のコチサは館内の端っこに小さくなっていました。 そして腹時計も「グゥー」となる頃・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 親分 「じゃぁ、昼でも行こうか」 コチサ 「がってんだい!」 メンバーは7名。 コチサチーム(制作側)は大将の親分を筆頭に5名、それに仕事をくれる立場(クライアント側)の代理店の所長と営業君の7名です。 地元であるという代理店の所長のお奨めで、美味しいといわれる「お蕎麦屋」さんに出かけました。 あいにく店内は混み合っていて、4人掛けのテーブル二つに、4人と3人で別れて座ることになりました。 奥方のテーブルには、代理店の2名と親分、子分2号の木綿君が座りました。 そしてもう一方のテーブルには、コチサを含めた子分3名が座っています。 メニューが配られました。 こういう時、コチサは気を使います。 多分ここは、制作側として親分が支払う事になるでしょう。 ということは、コチサにとっても身内の支払いとなるわけです。 遠慮して一番安いメニューを頼むと、接待される代理店側も気にするはずです。 かといって高いものを頼むのも、問題ありです。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「ここは向こうに先に注文をしてもらって、同じモノを頼む事で問題を回避しましょう」 子分ども 「なるほど、名案ですね」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサは注文を聞きに来るお姉さんを無視してメニューを覗き込むフリをしながら、耳をそばだてていました。 しかし混雑する店内、なかなか聞き取れません。 もうダメかぁと思った時、かすかに「天せいろ」という声が聞こえました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「聞こえた?」 子分1 「うん、確か天せいろって」 コチサ 「あっ、やっぱり。コチサも聞こえた。じゃぁ間違いないね。(お姉さんに向かって)天せいろ3つ!」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 無事難関を乗り越えて、コチサも子分たちもほっと一息です。 ところが・・・ 先に運ばれて来た、奥のテーブルを見てびっくり・・・ ただの「せいろ」です。 えっ? どゆこと? 天せいろは? 親分も、子分2の木綿君も、代理店の営業君もせいろをすすっています。 そんな中で所長だけが「天せいろ」を広げていました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「じゃぁ、聞こえた声は所長の声だったんだ・・・どうしよう、オーダーチェンジか?」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: などと悩む間もなく、コチサたちのテーブルに「天せいろ」3つが並べられてしまいました。 奥のテーブルより明らかに豪華です。 (だって向こうは所長以外は全部ただの「せいろ」なんだもん) そして何故かコチサの前の海老だけが妙に大きく輝いて見えます。 いつもなら喜ぶ事ですが、こんな時は肩身が狭いっす。 まいったね・・・ 取り合えず、コチサは奥のテーブルと目をあわさないように、急いで天ぷらを頬張りました。 でも・・・ 先に料理が運ばれた方が、先に食べ終わるというのは自然の摂理で・・・ コチサが最後の海老を口に頬張った時に、親分がコチサのテーブルに現れ、スーッとレシートを取って行きました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 親分 「先に車に行ってるから、ゆっくり食べて来なさい」 コチサ 「(口から海老の尻尾が飛び出た状態で、目を白黒)」 せいろ-750円 天せいろ-1.300円 べっ、別に、天せいろが食べたかったわけじゃないやい。 周りを考え、立場を考え、気に気を使っての選択が、たまたま失敗をしたわけだい! 海老を詰まらせ、涙目になったコチサの無言の訴えは、親分に届いたでしょうか? |
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