多分、今年最後の新年会が、某高層ビルの某料理店で厳かに行われました。 主催者は、我がパントマイムの師匠「チャック」 招待客は、可愛い愛弟子、不肖の子「コチサ」 コチサ 「やぁやぁ、コチサです。師匠、本日はご招待に預かりましてありがとうございます」 師匠 「やぁやぁ、愛弟子のコチサ君。本来なら弟子の方から招待してしかるべきのところ、なかなか招待が来ないから自分ですることにしたよ」 コチサ 「賢明な選択。このまま待っていたら春どころか夏になっちゃいますからね」 師匠 「まぁ、好きに食べてくれ」 コチサ 「いただきます。師匠、今日はおしゃれに決めてきましたね」 師匠 「まぁね。コチサ君も早くこんな衣装を着て堂々と胸を張って入り口を入れるくらいにならなくちゃだめだぞ」 コチサ 「はぁー・・・まぁもう暫くの時間と勇気を下さい」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 本日の師匠の衣装・・・ 何と言えばいいんだろ・・・ 一言で言えば、芸人さんのステージ衣装って感じです。 でも本当に不思議なのは、師匠が着るとこの衣装が馴染んでしまって誰も違和感を感じなくなるということなのです。 例えばチャプリンさんが、あの衣装を着て町を歩いてもきっと違和感が無く受け入れられます。 でもあの有名なチャプリンさんの衣装をチャプリンさん以外の人が着て町を歩いたら、きっとみんなは振り返ります。 師匠にも全く同じ事が言えます。 50年余の歳月が、師匠をして、オリジナルの自らの衣装を確立させたということです ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 師匠 「じゃぁ乾杯。あけましておめでとう」 コチサ 「おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」 師匠 「もう今年になって何回も顔を合わせて稽古をしているのに、今更新年の挨拶も変だね」 コチサ 「なんの、なんの、今日は旧暦ではまだクリスマスですよ」 師匠 「なんで旧暦なんて知ってるの?」 コチサ 「旧暦カレンダーがあるんです。あと月の満ち欠けカレンダーもありますよ。それによると2月の満月は27日の一日だけなんです」 師匠 「満月だと何かあるのかい?」 コチサ 「いや別に、ただ欠けているより満ちている方が良い気がして・・・ほら『この世をばわが世とぞ思う望月のかけたることもなしと思へば』という道長さんの歌もあることだし」 師匠 「そうだね。一応こういう無意味な会話も、何かに役立つんだったよね」 コチサ 「えぇ、コチサニュースに・・・おぉコチサニュースってなかなか勉強になるなって・・・」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 年末、風邪をこじらせ2ヶ月寝込んでしまった師匠はようやく通常の元気を取り戻してきたみたいです。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「いやー、あの時は本当に2ヶ月も風邪かなぁ?もしかしたら新しい弟子が出来てコチサ首かなぁなんて思っちゃいましたよ」 師匠 「あぁ、ユカちゃんのことね」 コチサ 「へっ?」 師匠 「なかなか筋は良かったんだけどね。こっちはもうすっかり弟子を乗り換える気でいたのに、ユカちゃんの方から辞めて行っちゃったんだよ」 コチサ 「ほ、本当ですか、それ?」 師匠 「冗談に決まってるだろ」 コチサ 「時に師匠、今宵のこの豪勢な祝宴へのご招待は何か意味があるんでしょうか?」 師匠 「別に・・・まぁ、年末倒れて稽古が滞ったお詫びかな」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: やっぱり気にしてたんだ、師匠。 毎週、今週こそはと思って連絡すると、やっぱりまだ起き上がれないという返事。 仕方なく、一人で黙々とジャグリングの練習をしていたのだけど、そんなコチサに師匠は師匠の立場で申し訳なく思ってくれていたようです。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 師匠 「稽古が出来なくても、一人で練習していたからな」 コチサ 「まぁ、それは当然です。弟子の務めです」 師匠 「一向に上達しないのは置いといても努力は買う」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 努力は買われても、技術が買われなければ何にもならない・・・ あぁ、コチサのマイマーへの道は遠く厳しい。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「あー食べた。もうお腹一杯。デザートが入らないなんてコチサにしては前代未聞です」 師匠 「それより、この食べっぷりでデザートが入る方が前代未聞だと思うよ」 コチサ 「さっ、師匠。夜も更けたし長居は無用、帰りましょう」 師匠 「長居は無用ってどういうこと?」 そして師匠とコチサは、いつもの2台のママチャリに乗り、夜の新宿の街を後にしました。 高層ビルの間に珍しく星が輝いていました。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「この高層ビルの明かりに負けないくらい輝くのって大変なんだろうなぁ」 師匠 「月に着陸するロケットが一番エネルギーを使うのっていつか知ってる?」 コチサ 「?」 師匠 「地球を離れるほんの数分の間に使うエネルギーなんだって。全体の90%近くのエネルギーをそこで使うらしいよ」 コチサ 「ふー、お腹一杯」 師匠 「じゃぁなー」 コチサ 「じゃぁねー」 夜空に自転車のベルが響きます。 続けるということ・・・ 自分の習慣にするまでのエネルギー・・・ コチサはまだ地球の引力と戦っているところなんだな、きっと。 |
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