香川県○○郡の実家は、勤労感謝の日、コチサの曾おじいちゃんの法事です。 しつこいようですが、コチサが生まれた時、益田家は両親の祖父母・曽祖父母が健在と言う、大賑わいの神さまに感謝したい恵まれた家族構成を作っていました。 今回の法事は、その父方の曽祖父「益田沙稚七」の年忌です。 お母さん 「お前の名前は、沙稚七じいちゃんの沙稚をもらってるんやからな」 コチサ 「知ってるよ。沙稚七じいちゃん、良い人だったよね」 お母さん 「お前、覚えているんか?」 コチサ 「いや・・・ただそう言っておけば無難だなと思って・・・」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 田舎の法事は賑やかです。 数ヶ月前から大騒ぎをして、親戚一同にお触れを回します。 この日の為に、遠路はるばる親戚縁者が、本家益田の敷居をまたぐ為に都合をつけます。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: お母さん 「やっぱりお前は来れんのか?」 コチサ 「うん」 お母さん 「仕事か?」 コチサ 「ううん。そうじゃないんだけど、距離がねぇ。簡単に行って帰ってって距離じゃないからね」 お母さん 「で、何か送ってくれたんか?」 コチサ 「何かって?」 お母さん 「法事によ」 コチサ 「ううん。でもどうせお母さんがコチサの名前でお花とか出してくれているんでしょ。だから安心してるんだよ」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: やっぱり本家の長女が帰ってこないと、いろいろお母さんは嫌味を言われるのでしょう。 だから、コチサの名前でお花を出して、 「あの子はどうしても仕事で帰って来れんので申し訳ありません。その代わりと言っては何ですが、お金を送って来てお花を飾って下さいと言っておりました。また親戚の皆さまにはくれぐれも申し訳ありませんでしたとお伝え下さいと、連絡がありました」 とか言って頭を下げるのでしょう。 お金を出したのも、くれぐれも申し訳ありませんと言ったのも、全部お母さんなのに・・・ 東京に出て来て10年。 だんだん田舎の習慣が重く感じられるようになってきたのか、仕来たりに縛られ右往左往するお母さんが可哀そうに思えてきました。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: お母さん 「何言ってるんや、田舎に住むっていうのはそういうことやし、母さんは田舎しかしらんのやから、お前にかわいそう思われるスジはないわ」 コチサ 「コチサ、すっかり東京もんになってしまったから、もう実家には住めないね」 お母さん 「何言ってるん、近所のみんな言ってるわ。サチコちゃんは、東京に行ってるんのに全然都会っぽくならないで、年末に半纏来て香川弁話してる姿は昔のまんまやなって」 コチサ 「それどゆこと?コチサが垢抜けないってこと?」 お母さん 「田舎を忘れん、良い娘ってことやろ」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: うぅー(>_<) でも悔しいけど、飛行機を降りて高松空港に出ると、いきなり言葉も香川弁に戻ってしまうし、その町ではお母さん手作りの半纏が一番着心地がいいのも事実だ。 そういえば、今年の正月は、その半纏にお父さんのジャージを着た姿で、周りには晴れ着姿が賑わう金毘羅さんにお参りに行ったんだ。 なんだ、誰よりも垢抜けてないじゃん。 田舎の法事には「お膳」というのがあって、一人用の料理が添えられた小さな食卓が、各自に配られます。 今年はお膳一人が¥8.000-だそうです。 50人くらいが集まるそうだから大変な事です。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「ふーん、本家の嫁も大変だね」 お母さん 「昔に比べたら大したことは無い。昔は100人くらい来てくれたし、お母さんはお前を負ぶって切り盛りしてたんやから、それに比べたら随分楽になった」 コチサ 「じゃぁさ、今回も100人来たつもりになっちゃおうよ。お父さんにはさ、100人分のお膳を用意しましたって言ってさ。浮いたお金を折半っていうのはどうですかね?」 お母さん 「お前はどうしてそんな子に育ったんかの?母さん育て方間違えたのかねぇ」 コチサ 「沙稚七じいちゃんの名前をもらったのが悪かったのかもね」 平成13年11月23日、益田家では、益田沙稚七じいちゃんの法事が営まれました。 期待の曾孫、沙稚子は都合により参列できませんでしたが、遠く離れた東京の空の下より、沙稚七じいちゃんの思いを胸に手を合わせ頭を垂れました。 その心意気に感謝して、本家益田家より長女沙稚子には、法事で余ったお供え品の数々が臨時食料として送られる事になりました。 まぁこれも供養の一つだって。 気にするな、沙稚七じいちゃん |
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