コチサニュース No.162 2001.10.31

 

 今コチサは、大きながま口のような財布を持ち歩いています。

 もう2年近く使ってボロボロですが訳があるのです。



 ところで、新聞のチラシなどに時々入ってくる、「お金の貯まる財布」というのはご存知でしょうか?

 類似品がたくさんあるようですが、大き目の長方形、ピカピカのまっ黄色、龍の浮き彫りなどの共通項があります。

  そしてチラシには、この財布にしたとたん、お金持ちになったという人の体験談が並んでいます。

 曰く

 「宝くじに当たりました・・・」

 曰く

 「遺産が転がり込んできました・・・」

 等。

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 どれも他力本願なところがミソです。

 暗に「努力をしなくていい」という点が訴求ポイントのようです。

 いろいろケチを付けたい所がありますが、コチサにとって真っ先に引いてしまうのは、そのデザインです。

 だって、まっ黄色に龍でしょ・・・

 こんなの本当に買う人いるのかな?

 そんな折・・・



 郵便屋さん

 「益田さーん、書留でーす」

 お母さんからでした。

 現金2万円と、例のチラシが入っていました。

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 コチサ

 「もしもしお母さん、お金届いたけど、どゆこと?」

 お母さん

 「近所のおばさんがな、その財布買ったらお金が入ったわて言うんよ。お前も騙されたと思って買ってみなさい。お金はお母さんが出すからな」

 コチサ

 「あのさぁ、そんなの嘘に決まってるじゃん。それに2万円だよ。こんな黄色い龍が・・・」

 お母さん

 「そんなこと言わんの。お金が入ればそれに越した事は無い・・・」

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 コチサは、複雑な気持ちでした。

 お母さんの気持ちは嬉しいけど、そんな子供を思う気持ちをみすかしたようなチラシには悲しみが込み上げて来ました。

 「お金をあげるのは簡単だ。
 でも自分の力でお金を築きあげるようになって欲しい。
 その為にはお金を送るより、
 この財布をあげた方がいいんじゃないか」

 そんなお母さんの心の動きが、手にとるようにわかります。

 でもお母さん、この財布で入ってくるお金って全部他力本願なんだよ。

 コチサは、遺産なんかでお金が入ってきたって何にも嬉しくないんだ。

 今回のお母さんの行動の中での正解は、お金とチラシを送って来たことです。

 自分で財布を買って送ってこなかった事です。

 コチサは、お母さんの気持ちを心からくみ取り、今後もっと努力をして仕事に励むことを誓い、その2万円を大切に食費に組み込みました。



 さてその後・・・

 お母さん

 「あのな、人から聞いたんやけど、財布はな自分で買うたらいかんて。人に買ってもらわないかんのやて。それも自分よりお金持ちの人に買ってもらうんやて」

 その説ならコチサも聞いた事があります。

 自分よりお金持ちの人から財布を買ってもらえば、その人くらいお金持ちになります。

 そうしたら今度は自分が誰かに財布を買ってあげて、自分はまたもっとお金持ちの人から財布を買ってもらう。

 そうすることで、みんなが一歩ずつ裕福になっていくというものです。

 うん、これなら受け入れられる。

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 コチサ

 「了解!」

 そしてコチサは、財布を買ってもらう人探しをはじめました。

 まぁコチサの場合稼ぎが限りなく0に近いので、この場合条件的にはほとんどの人がOKなのですが・・・

 そこはこづるいコチサの事、狙うは大金持ちということで・・・

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 >Hi Bill
 >Prease give me a wallet.
 >from kochisa.

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 ちぇっ、ビルゲイツのやつめ。

 無視するとは何事だ!

 こうしてメール作戦は失敗したので、仕方なく・・・



 コチサ

 「あっ、お父さん、コチサに財布買ってぇ」

 お父さん

 「なんだ、結局わしに回ってきたか。お前には財布を買うてくれる人の輪もないのか?」

 コチサ

 「し、失礼だなぁ。たくさんの方々からの申し出を断って、あえてお父さんに頼むんだよ」

 お父さん

 「ほー、でもわしはもう山も売ったしな、お金持ちでは無いぞ」

 コチサ

 「そんな事はないよ。お父さんは立派な人だよ。コチサはお父さんみたいな、心のお金持ちになりたいんだよ。だから送ってぇ」

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 で、届いたのが冒頭でご紹介した大きながま口のような財布。

 「えー、これなら、あの黄色い龍の財布の方がまだいい」

 と思ったのですが、あの田舎から軽トラを飛ばして、わざわざコチサのために街まで財布を買いに出てくれたお父さんの気持ちを思うと涙が出てきました。



 そして2年、コチサは雨の日も風の日も、カバンより大きなこの財布を使い続けてきたのですが、いっこうにお金持ちになる気配がありません。

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 お父さん

 「お前が、心のお金持ちでもいいとか言ったから、神様もそう思ってるんじゃないか?」

 コチサ

 「コチサもう充分心はお金持ちになったから、実際のお金も欲しいよぉ」

 お父さん

 「財布にも寿命があるそうじゃ、そろそろ他を当たってみるんじゃな」

 コチサ

 「お父さんは、もう買ってくれないの?」

 お父さん

 「もう隠居の身じゃ。これから金を貯めるて言う人間に、財布を買ってやれる人間じゃない」

 コチサ

 「お父さん・・・」



 いつまでも他力本願じゃいられない。

 先ずは今度こそ、財布を買ってくれる人を見つけ出さなくちゃ。

 あれから2年、ビルゲイツさんも歳をとって丸くなっているかもしれません。

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 >Hi Bill
 >Prease give me a wallet.
 >because of my happiness.
 >thank you.
 >from kochisa

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 それから2週間。

 ちぇっ、またダメかぁ。

 ゲイツ君、度量を見せたまえ


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