No.145 2001.9.21
打ち合わせ先での雑談で、子供の頃の勉強の話が・・・
コチサ
「担当さんも、子供の頃「塾」に通ったんですか?」
担当さん
「えぇ、小学校、中学校とずーと」
コチサ
「どんな机、持っていったんですか?」
担当さん
「は?」
コチサ
「机・・・持っていかなかったんです・・・よね」
コチサが中学の1年の頃。
村の青年団の事務所の2階を、子供たちの勉強の為に使おうという話が決まりました。
そこを塾にして、週に2回、町から先生を呼ぶことになりました。
村では、画期的なことで大騒ぎです。
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お母さん
「お前も塾に行くか?」
コチサ
「行かん」
コチサは断ったものの、町の学校に通う村の子供たちは、みんなその塾に通うような流れが出来ていて、お母さんもその流れに逆らうことは出来なかったようです。
お母さん
「申し込んできたよ。座布団はあるから、みんな机を持ってくればいいそうや。おじいちゃんの机、借りような」
そして、塾の初日。
村の子供たちが、続々と集まって来ました。
コチサもお父さんの車に乗って、華々しくも初めて村に誕生した「塾」に向かいます。
おじいちゃんの「和机」は年代もので、木がつやつやに輝いています。
きっと今の時代なら「お宝」な品物だったと思います。
お父さんは、その重くて頑丈な「和机」を肩に担ぎ、青年館の階段をひょいひょい登って行きます。
お父さん、力持ちぃ!
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お父さん
「こんにちは、よろしくお願いします」
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青年館2階の「塾」は、もうすでに顔なじみの子供たちで埋っていました。
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おかちゃん
「あーコチサ、こっちおいでよ、となり空いてるから」
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お友だちのおかちゃんです。
お父さんは、おかちゃんの隣に机を置いてくれました。
学校ではクラスの違うおかちゃんですが、これから塾ではずーと隣同士なんだ・・・
ちょっぴり嬉しいコチサでした。
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コチサ
「やぁ、おかちゃん、これからよろしくね」
おかちゃん
「うん、こっちもよろしく。でもコチサ、すごい机だね」
コチサ
「ん?」
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ふと周りを見回すと、20名くらいの生徒は各自机を持ち寄って席についていますが、みんな座高が高い。
コチサ以外の生徒は、それぞれ形は違っても、4つの足が折りたためるテーブル式の机です。そしてみんな椅子に座っています。
コチサは、おじいちゃんの立派な年代ものの和机です。
座布団を敷いて床に座っています。
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コチサ
「うわーお・・・」
おかちゃん
「・・・」
コチサ
「・・・だってお母さんが、座布団は用意してあるから机だけ用意して来いって・・・」
おかちゃん
「座布団って椅子の下に敷くやつだよ」
コチサ
「・・・」
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授業がはじまりました。
先生
「そこの、座り机に座っている君、そこじゃ周りが高くて見えないでしょ。一番前に来なさい」
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かくして、コチサはおかちゃんと離れ離れになり、20人ほどの生徒たちの中でただ一人座り机で一番前で授業を受けることになりました。
なんか、悪いことをして床に座らされている生徒みたいじゃないか・・・
帰りは机はそのまま置いて帰ります。
振り返ると、誰もいなくなった教室には、スクール形式にきちんと並べられた、20席のテーブル席と、たった1つの和机が鎮座していました。
担当さん
「すごい光景ですね」
コチサ
「始めはね、少し恥ずかしかったけど、そのうちね、慣れちゃって、何か人と違うのが自慢になったりしてくるもんなんだよ」
担当さん
「でも、みんなが椅子に座って勉強している教室で、たった一人座布団に座ってるのかぁ。変ですよね」
コチサ
「まぁね。でもその時は別にそんなに気にならなかったよ。だからコチサは今でも「塾」というと、みんなが机を持ち寄るもんだという気がしてね」
担当さん
「田舎ってすごいっすよね」
コチサ
「余計なお世話だい」
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