No.142 2001.9.14
前号の病院の話で思い出したこと・・・
小児科っていくつまで通っていましたか?
コチサの田舎は、病院が数えるほどしかなくて・・・
子供は新井小児科
大人は山手医院かオオトリ病院という決まりがありました。
もう一つ、○○病院というのもありましたが、よくある噂がやはりコチサの村にもあって「○○に行くと死んじゃうよ」と言われていて、村の人たちはあんまり行きませんでした。
でも、その病院は今も営業しているのですから、誰かは行っているんですよね。
ということで、コチサは風邪をひいたと言えば新井小児科、肩が抜けたと言えば新井小児科。
(子供の頃のコチサはよく肩が抜けたのです)
・・・とにかく何かあったら新井小児科に通っていました。
新井小児科までは、バスで30分。
お母さんに連れられて出かけます。
この時ばかりは、妹も弟も家で留守番。
コチサはお母さんを独占できて少し良い気分です。
帰りにお菓子なんか買ってもらうともう万々歳。
「妹と弟にとっておいてあげなきゃあかんよ」
というお母さんの言葉を無視して、バスの中で食べきっちゃいます。
だから・・・
何かあったら新井小児科というのが、コチサの中では決まりきったことだったのです。
中学2年の時、風邪をひいたコチサは迷うことなく新井小児科に向かいました。
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コチサ
「咽をやられて熱があるんですけど・・・」
新井先生
「はい、あーん」
コチサ
「あーん」
新井先生
「うん、少し赤くなっているね。お薬出しておきましょう」
コチサ
「ありがとうございます」
新井先生
「ねぇ、さっちゃん」
コチサ
「ん?」
新井先生
「さっちゃん、もうそろそろ小児科はなぁー」
コチサ
「へっ?」
新井先生
「さっちゃんも、中学生だろう」
コチサ
「2年です」
新井先生
「そろそろ小児科は卒業した方がいいんじゃないかな」
子供の頃から、それが当たり前だと思って何の疑問も持っていなかった事が変わる瞬間でした。
そう言えば、今までは登るように座っていた診察室の椅子も、今のコチサには低過ぎる椅子になっていました。
壁の周りに張られた紙細工の飾りも、注射を打たれた時泣きながらあやしてくれた視線より、ずいぶん低くなっています。
そして何より、優しいおじさんだった新井先生は、白髪の老人になっており、看護婦さんをしていた奥さんはもういなくなっていました。
帰りのバスの中・・・
人って、本当に些細な事から一歩ずつ大人になっていくんだなぁー、などと訳知り顔で景色を見ていたら、見慣れた風景さえ初めて見るような新鮮さがありました。
お母さん
「どうやった?」
コチサ
「うん、ただの風邪だって」
お母さん
「そう、じゃぁあったかくして寝てなさい」
コチサ
「うん・・・お母さん、コチサ今度から山手医院に行くね」
お母さん
「そうやな、お前も中学生やしな。それがいいかもわからんな」
お母さんは、あの時のことを覚えているでしょうか?
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