コチサニュース No.135 2001.8.30

 コチサの出没する事務所は、不況の波にさらわれる事もないような小さな小さなオフィスですが、それでも厳しい状況にはあるようで、会議の招集がかかりました。



 コチサ

 「やぁ、会議?」

 社長

 「うん、ちょっとね」

 コチサ

 「で、議題は?」

 社長

 「人は何故、やらなくてはならない仕事を後回しにするか? 副題「仕事の遅延」についてだ」

 コチサ

 「フ−ン、コチサには関係ないね。コチサ仕事速いもんね」

 社長

 「そうなんだよ。君は仕事が速い。しかしね、気が付いたことがあるんだ・・・」

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 仕事の遅延には、

 「仕事を仕上げる作業が遅い」

 「仕事に着手するまでが遅い」

 の2種類あるそうで・・・

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 社長

 「これまでは、着手までの手続きが遅いことの弊害をあまり考えていなかったんだが、実はそれも大きな問題だと気がついてね・・・それで目の前にちょうど良い研究材料があったものだから、この一週間観察させてもらったよ」

 コチサ

 「研究材料?もしかしてコチサのこと?」

 社長

 「うん。で、君は典型的に「仕事に着手するまでが遅い」人間であることが判明した・・・例えば、実質1時間で片付く仕事があるとする。仕上げるのが遅い人間はまぁ2時間かかる・・・でも君ならまぁ30分位だろうと思ってお願いしたのがこれだ」

 コチサ

 「あっ、これってこの前頼まれた、クライアント別台本雛型リストじゃん」

 社長

 「うん、で、これがこっそり取った記録」

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 13:00 仕事依頼

 13:03 EXCEL開く(作業用アプリケーション)

 13:04 でもIE開く〜化粧品のBBS巡回

 13:34 メールソフト開く〜メール受信〜読む

 13:40 消防車が通る〜気になってベランダに出てみる
      〜 ついでに空を見ている

 13:45 フランクリン手帳を開く〜予定表を確認しているフリを
      しながら、図書館カードで休日確認をしている

 13:55 あくびをしながら立ち上がり、お茶を沸かしてる

 14:00 自宅に電話して留守番電話のチェックをする

 14:10 銀行に電話して、通帳入金の有無の確認をしている

 14:15 救急車が通る〜ベランダに出てみる
      〜 ついでに花に水をやるふりをしてやめる

 14:25 「うーん、乗らないなぁ〜」と一言、同意を求める目で
      こっちを見る。
      無視されてしぶしぶ「新規作成」のEXCEL画面を見る

 14:30 でもまたIE開く〜2CH掲示板を巡回している。
      睨まれて慌てて「ビリーの小部屋」のHPに切り替え
      「あーまた更新してない」と大きな声でいかにも
      被害をこうむっているような事を言う

 14:45 体が痒くなったのか薬箱から「ムヒ」を取り出し肘に塗る

 14:50 薬箱から爪切りを見つけたらしく、爪を切る

 15:00 「ちょっと失礼」と言ってトイレに入る

 15:20 ニコニコ顔で出てきて、マシンの前に座る。
      「新規作成」のEXCEL画面を見つめる

 15:25 見つめているうちに、スクリーンセーバーが動き出す

 15:30 「ちぇっ」と一言。天を見つめる。背中を掻く。

 15:40 「新規作成」のEXCEL画面にようやく文字を打ち始める
      〜 作業に没頭

 16:00 作業終了〜出力

 16:03 提出

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 社長

 「実質作業時間は、予想よりはるかに速い20分だ。でも全体終了時間は、仕事を仕上げるのが遅い人に見積もった2時間を大幅にオーバーした3時間かかっている」

 コチサ

 「・・・」

 社長

 「その表をよく見て、自分がいかに「着手までが遅い」か、そしてその遅さがどれだけの無駄を産んでいるか検証してみてくれ」

 コチサ

 「社長はこの間、何してたの?」

 社長

 「ん?」

 コチサ

 「ずーとコチサの動きを追っていたとすると、この3時間は社内的には6時間ってことになって、実質20分の「クライアント別台本雛型リスト」作成は6時間分の時間が費やされたことになるよ」

 社長

 「そうだ。恐ろしいことだな。君の「要領は良いが作業着手までが遅い」という性格が、わが社をしてこのような無駄に追い込んだのだ」

 コチサ

 「うーん、先ず救急車と消防車が来たのが予測できない遅延だったね。それからビリーの小部屋が更新してなかった事も・・・体が痒かったのも、爪が伸びていたのも不可抗力だよね・・・」

 社長

 「あのさ、そういう検証じゃなくてさ、もっと別な次元で気が付かない?・・・さっさとやってれば13:20に終わっていたんだということだよ」

 コチサ

 「車運転する?」

 社長

 「するよ、知ってるじゃん」

 コチサ

 「じゃぁ、ハンドルに何で「遊び」があるか知ってるよね」

 社長

 「あぁ」

 コチサ

 「じゃぁ、まぁ、そういうことだよ」



 と、一応は煙に巻いてやったものの、このリストを見直すたびに「着手するまでの遅延」の恐ろしさに改めて驚きました。

 「やれば速いんだ」と高をくくっていることが、いかに無駄を生み出しているか・・・

 そしてこの無駄はなんと実りの無い無駄か・・・

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 よく働きすぎの人に言う「言葉」に、

 「死ぬ時に、あぁもっと仕事をしとけば良かったと思う人はいないよ」

 というものがあります。

 これは、もっと家族とか趣味とか、そういうものに「生きがい」を見出さないとね、という意味で言われるのだと思いますが、もし死ぬ時に今回のようなこのリストを見せられたら、悔しくて死にきれないと思いました。

 「なんて多くの無駄を積み重ねたんだろう」

 って・・・

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 「仕事に着手するまでが遅い」遅延というのは、「仕事を仕上げる作業が遅い」遅延より始末が悪くてどうしようもないものだと実感しました。

 そういう意味では、なんだ役に立つ事もするんじゃんと、この社長に感謝の気持ちも湧いて来ました。



 でもコチサは知っている。

 「仕事に着手するまでが遅い」のは、社長も同じ。

 コチサをスケープゴードにすることで、自分の事も客観的に理解したかったんだね。

 題して、社長の「人のフリ見て我がフリ直せ」作戦。

 まぁ今回は成功ってことで・・・


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