コチサニュース No.128 2001.8.13

 あらま。

 世間の会社はほとんど夏休み・・・

 ・・・って事は、会社のコンピューターからチェックしてくれる人の数が多い「コチサニュース」は今回はあんまり読んでもらえないって事でしょうか?
 (でもバックナンバーがあるから大丈夫か)



 一足早く夏休みを満喫したという「コチサ会員」のオーさんからお届けモノが・・・


 「実家の母の手作り「紫蘇ジュース」です。
       ご試飲ください。
       夏バテ気味の体が生き返ることうけ合いです」


 オーさんのお母さんの「チエちゃん」は77歳。

 2年前旦那さんと死別してからは、金沢で一人暮らしだそうです。

 ご自慢の「紫蘇ジュース」でご自身も健康、息子のオーさんも健康です。

 初めて飲む手作り紫蘇ジュースは、香りとのどごしに市販のどんなジュースより「一日の長」がありました。



 コチサ

 「やぁ、コチサです。紫蘇ジュースありがとう」

 オー

 「はい、気に入っていただけましたか?」

 コチサ

 「勿論さ。すごいよ、美味しかったよ。もう無いよ」

 オー

 「はー」

 コチサ

 「あのさぁ・・・」

 オー

 「もしかして、もっと送れってことですかぁ?」

 コチサ

 「違うよ、そんなずうずうしくないよ、失敬だな」

 オー

 「じゃぁ何か?」

 コチサ

 「あのさぁ、コチサも自分で作ってみるからレシピ送ってちょ」



 早速実家に電話してくれたオーさん、コチサにメールでレシピを送って来てくれました。

 そのレシピをもってコチサは八百屋さんへ。



 コチサ

 「紫蘇の葉、赤いやつ下さい」

 あんちゃん

 「紫蘇の葉?今無いよ」

 コチサ

 「じゃぁ、いつあるの?」

 あんちゃん

 「そうだな、梅干作る時かな」

 コチサ

 「じゃぁ、いつ梅干作るの?」

 あんちゃん

 「わかった、わかった・・・じゃぁ今度市場で出てたら仕入れて来てあげるから」

 コチサ

 「3本ね。それ以上はいらないよ。あとあんまり高いとやだよ」



 さぁ、これで準備万端。

 後は、美味しいジュースを作るのみ。



 オーさん

 「あのー、母から追加がありまして・・・クエン酸は入れすぎると酸っぱくなるから量加減には充分注意して下さいとのことです」

 コチサ

 「了解!」

 オーさん

 「さっき母がわざわざ、私の会社に電話をして来たんですよ」

 コチサ

 「それはご迷惑をおかけしました」

 オーさん

 「いや、そうじゃなくて・・・」

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 オーさんの会社にお母さんから電話がかかって来たのは、お父さんの急変を告げた電話以来、2年ぶりのことだそうです。

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 オーさん

 「だから、何事かと驚いちゃいまして・・・」

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 盆休みで帰省したオーさんを嬉々として迎え、食事を用意し、あれやこれやと楽しそうに動き回るお母さんも、オーさんの東京への戻りの日が近づくにつれ、めっきり口数が少なくなるそうです。

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 オーさん

 「まぁ、毎度のことですけどね・・・後ろ髪をひかれる思いですか?・・・いや、もうひかれる後ろ髪も無いですけどね」

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 オーさん曰く、お母さんにとっては、レシピを聞いたコチサの質問がとても嬉しかったそうです。



 きっと・・・・・・

 チエちゃん

 「そんなわが家の秘伝を、何処の馬の骨かわからない小娘に教えられるかい」

 オーさん

 「いや、そこを何とか・・・ほら世話になってる人だから」

 チエちゃん

 「そうかい、まぁお前が世話になってるんなら仕方ないな、そうかぁ、そうかぁそんなに気に入ってくれたかぁ・・・じゃぁ作り方はな・・・先ずはな・・・(以下レシピ詳細)・・・どうだわかったか?」

 オーさん

 「うん、大丈夫、書き留めたよ」

 チエちゃん

 「本当か?わが家の秘伝が間違って伝わったらご先祖様に申し訳ない、復誦してみな」

 オーさん

 「えっ?」

 チエちゃん

 「いいから、復してみな」

 オーさん

 「(復誦)」

 チエちゃん

 「そうだ、まぁ大丈夫だろ。だけどな、この紫蘇ジュース、いくら東京で頑張って作ったって金沢の水があってのものだって事は忘れんように言っとけや・・・そうかぁ、うまいってかぁ・・・」

 オーさん

 「勿論だよ」

 ・・・・・・こんな会話が交わされたのかもしれません。



 オーさん

 「・・・なんかよっぽど嬉しかったみたいで・・・声も元気に張りがあって。東京に戻る時の気まずい雰囲気も吹き飛びましたよ。ありがとうございました」

 コチサ

 「いや、コチサがお礼を言われる筋合いでは・・・」



 本当にコチサがお礼を言われる筋合いではありません。

 コチサがお礼を言わなくてはならない立場ですから・・・

 でも、母親の気持ちが手にとるようにわかったオーさんの「ありがとう」という言葉の意味、コチサもわからないでもありません。



 「どんなに元気でも、どんなに健康でも、歳を重ねてからの一人は寂しい」とコチサは思っています。

 誰かにしつこく相談されたり、まとわり付かれたりして、それがどんなにうるさくても鬱陶しくても・・・

 でもそれは「誰かに必要とされている」って言うこと。

 「誰にも必要とされてない」ことよりどんなに幸せかは決まっている。

 オーさんにとっては、お母さんがコチサの質問に喜んで答えてくれたことが、嬉しくもあり悲しくもあることだったのでしょう。

 お母さんが、コチサの質問を「また今度作ってあげるからさ」とあっさり聞き流さなかった事に、日頃のお母さんの寂しさを感じてしまったのかもしれません。

 オーさんのコチサへの「ありがとう」は、言えなかったお母さんへの「ごめんね」の代わりだった気がしました。

 「チエちゃん77」特製「紫蘇ジュース」は体も心も健康になること請け合い、超お奨めのドリンクです。


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