コチサニュース No.127 2001.8.10

 8月13日は、父方のおばあちゃんの命日です。

 この季節になると、決まって夢に出てきて教えてくれます。

 おばあちゃん、夢に出てこなくたって、コチサはおばあちゃんの命日を忘れたりしないよ。



 コチサ

 「やぁ、おばあちゃん、今年も来たね。今年は天国も猛暑?」

 おばあちゃん

 「天国は暑うも寒うもないで」

 コチサ

 「良いね、快適で羨ましいよ」

 おばあちゃん

 「そんな言わんでも、いつかお前も来ることになる」

 コチサ

 「えっ?コチサも天国行けるの?もしかしたら地獄かと思って少し心配してたんだ」

 おばあちゃん

 「今、ギリギリのところや、これ以上悪さしたら、いくらおばあちゃんでも助けてあげられへんで」

 コチサ

 「えっ?コチサ、ギリギリなの?」

 おばあちゃん

 「そうや、大変なところなんやで」

 コチサ

 「おばあちゃん、コチサあとどのくらい悪い事しても大丈夫なの?」

 おばあちゃん

 「そういう考え方を止めんといかんなぁ」

 コチサ

 「だって、それがわからないと調子がわかんないじゃん。サッカーだってイエローカードあと何枚っていうので、動き方かわるでしょ」

 おばあちゃん

 「天国には屁理屈言う子はおらんで」

 コチサ

 「じゃぁ、コチサが第一号だね」

 おばあちゃん

 「・・・」



 その後、おばあちゃんは、新築された実家の事、お父さんとお母さんの事、妹弟のことなどをひとしきり話し、元気に帰っていきました。

 今年も命日に帰ることが出来なくて申し訳なく思っていると、おばあちゃんはこうして毎年やってきてくれます。

 「忙しいし、お金もないんじゃろ。ええって、ええって。そうやっておばあちゃんの事思いよるだけで、おばあちゃんは嬉しいんや。おばあちゃんのお墓参りは、実家のみんながちゃんとやってくれよる。お前は安心して、仕事をしぃや」



 お父さん

 「・・・で、それが盆に戻らん理由なんやな」

 コチサ

 「そだよ。ちゃんとおばあちゃんとは話がついたんだよ」

 お父さん

 「ついに、ばあさんまで呼び出したか。お前は「いたこ」か」

 コチサ

 「おばあちゃんから伝言があるよ。「もっとサチコをかわいがらんか」ってさ。コチサはどっちでもいいけどね」

 お父さん

 「まぁばあさんが生きてたら言いそうな事だな」



 幼稚園の頃、幼稚園に行くのが嫌なコチサは朝から泣きながら庭を逃げまくっていました。

 毎度の事で、さすがに堪忍袋の緒が切れたお父さんは、今日は必ず幼稚園に連れて行くと鬼のような形相で迫ってきました。


 コチサ

 「おばあちゃーん、助けてぇ」
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 駆け寄るコチサ・・・
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 おばあちゃん

 「ツヨシぃー、もうやめんね。行きとうないいうて泣いとるやないか」

 お父さん

 「母さんが、そんな甘い事ばっかり言うとるから、こんなつけあがった子になったんです。今日という今日は、絶対に幼稚園に連れて行きます」

 コチサ

 「行かへん、行かへん、幼稚園には鬼がおるから嫌じゃー、わーん」

 おばあちゃん

 「ツヨシぃー、可哀想やろ、こんなに嫌がって泣いておろうが」

 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 おばあちゃんの胸に必死にしがみついて離れないコチサ
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 コチサ

 「いやじゃー、鬼がおるから、いやじゃー」

 お父さん

 「そんなに嫌ならここにいろ、一歩も動けんように縛りつけてやる」

 お父さんは、縄を持ってきてコチサを柱に縛りつけようとします。

 コチサ

 「いやじゃー、柱もいやじゃー、おばあちゃん、助けてぇー」

 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 ますますおばあちゃんにしがみつくコチサ。
 おばあちゃんも、コチサをヒシと抱きしめてくれます。
 おばあちゃん、良い匂い・・・
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 お父さん

 「お母さん、サチコを離して下さい」

 おばあちゃん

 「そんなぁ、可哀想じゃて」

 お父さん

 「じゃぁ、仕方ないです」

 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 そう言うやいなや、コチサはおばあちゃんごと柱にぐるぐる巻きにされてしまいました。
 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 おばあちゃん

 「ツヨシぃー、なんで、わたしまで縛るんや」

 お父さん

 「母さんが、サチコを離さないからです」

 おばあちゃん

 「ツヨシぃー、親を柱に縛るとはどういう了見じゃー」

 お父さんは、さっさっと部屋を出て行きます。

 おばあちゃん

 「ツヨシぃー、離さんね、ツヨシぃー、待たんね」

 コチサ

 「ツヨシぃー、戻らんね、ツヨシぃー」

 おばあちゃん

 「サチコ、お父さんにそんな呼び方、あかんで」

 コチサ

 「ツヨシぃー!!!!」



 お父さん

 「ふっ、そんなこともあったな」

 コチサ

 「おばあちゃん、いつも助けてくれたよ」

 お父さん

 「本当に、お前は「きかんぼう」だったからな」

 コチサ

 「おばあちゃんがいたから、お父さんもああやって強く叱れたんだよね」

 お父さん

 「そうだな。後でばあさんがフォローしてくれるって安心感があったんだな」

 コチサ

 「縄を解きに来てくれたのは、お母さんだったよ。みんな役割があったんだね」

 お父さん

 「わしだけ、恐い人の役回りで損やな」

 コチサ

 「コチサだって、怒られる役回りで損だよ」

 お父さん

 「それは違うだろ、お前が怒られるような子供じゃなかったら、わが家はそんな役回りも必要ない家族になっとったはずや」



 賑やかな大騒ぎがこだました、あの時あの夏・・・

 変わらないのは蝉の鳴き声・・・

 命日のおばあちゃんへ(#^.^#)


<BACK NEXT>