No.122 2001.7.30
日曜日、参議院選挙の投票所での一こま・・・
選挙の楽しみの一つに、小学校が投票所という事があります。
コチサの管轄の投票所のルートはなかなか味わい深いものがあります。
先ず正門入場、下駄箱に囲まれた大きな玄関を経て、教室に平行する屋外廊下を歩きます。
そして体育館に誘導され、投票。
出口は体育館の裏口になり、そこは校庭を背にした裏庭です。
そして渡り廊下に導かれ、校庭に出て、そこで解放です。
校庭を縦断して、反対口の門から帰るも、正門に戻るも自由自在です。
屋外廊下から覗く教室の中は懐かしくて、黒板に書かれている日直さんの名前や、壁に貼られているお習字やお絵かきの作品は、何故か懐かしい安心や喜びを感じさせてくれます。
かつてコチサもお習字の作品が壁に張り出され、それを目に留めた校長先生が全国大会に応募して、全国子供お習字選手権で最優秀賞をとったものでした。(嘘1)
投票所の体育館では、舞台の袖に校歌の歌詞がパネルとして立てられ、反対側の袖には小さな表彰状が飾られていました。
かつて、全国子供柔道選手権で全階級を制覇して「讃岐の柔ちゃん」と呼ばれていたあの頃を思い出させてくれました。(嘘2)
投票が終わって、渡り廊下沿いに歩く裏庭には、生徒たちが実習用に使う花壇と、飼育係りが大切に育てているだろう鶏やウサギが・・・
かつて、通学路で熊に出会い、素手で仕留めて学校まで担いで来て、先生に誉められた記憶が甦ってきました。(嘘3)
校庭には、サッカーゴールとバスケットゴールが、お互いをけん制しあうように立っていました。
サッカー部とバスケット部で校庭争いをしてるのかな?
かつて、小学校2年生だったコチサが、体育の時間に何気なく放ったシュートに、
「ま、益田ぁ、お前、それダンクシュートって言うんだぞ。なんで身長100センチのお前がそんな事出来るんだ?」
と驚いた先生の顔が甦りました。(嘘4)
小学校は、夢が無限に膨らむパラダイスです。
一歩この門を出ると、夢はシャボン玉のように破裂してしまいます。
でも、この中にいる限り、夢はどこまでも果てしなく広がり、手を伸ばせばいつでも掴むことが出来る気がします。
だからいつも空想の世界は現実の世界と紙一重で、「嘘」という言葉は「夢」という言葉に置き換わっていました。
小学生に与えられた、期間限定の特権です。
つかの間の「あの時」を満喫したコチサは、校門を出る前に小さく深呼吸をして振り返ることなく外に歩き出しました。
ところで、そんな小学校での一日で、一つだけ気になった本当のこと。
受付の女性の愛想の良い挨拶と、奥に控える温厚そうな立会人の人たち笑顔に導かれて、楽しい気分で投票を終えようとしたコチサが目にした光景です。
おばあちゃん
「この、比例っていうのは、政党名を書けば良いのかい?」
受付の女性
「はい、そうです。政党名を書いて下さい」
えっ?
体育館は空いていました。
コチサとおばあちゃんと、もう一人の女性しか、投票に来ていた人はいませんでした。
おばあちゃんと受付の女性の会話は、体育館にいた誰にも聴こえていました。
選挙管理委員の人たちも・・・
その後ろに座っていた、立会人の人たちにも・・・
でも誰も何にも言いませんでした。
「今回は非拘束名簿方式という形をとっているので、候補者名か政党名どちらを書いてもいいんです。候補者名か政党名をお書きくださいね」
というのが正しい解答なのじゃないのかとコチサは思いました。
コチサも自信があれば、そこで何かを言ったと思いますが、実はあんまり自信がなかったので黙りこんでしまいました。
きっとおばあちゃんは、政党名を書いたと思います。
コチサは、何もいえなかった自分が少し悔しかったです。
「知らなければ聞けばいい」
そう思っているのですが、教えてくれた人が違うことを言っていたら自分にはどうしようもありません。
世界中のたくさんの事を知るのは不可能なことだとわかっていながら、もっと勉強しよう、もっと知識を吸収しよう、と思ってしまいました。
せっかくの小学校で、少しだけ気分が曇った出来事でした。
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