コチサニュース No.121 2001.7.27

 学校は今、夏休みです。

 夏休みといって思い出すのは、「ラジオ体操」です。



 コチサの小学校では、毎朝6時に地域の最年長(6年生の場合が多い)の生徒の家に集まってラジオ体操をする決まりがありました。

 そしてその最年長のリーダーから、「記録カード」にハンコをもらって帰るのです。

 毎朝眠い目をこすりながら、記録カードを首から下げて山道を歩いていく・・・

 コチサは、これが嫌いでした。

 でもハンコがもらえないと、新学期に先生に怒られるし・・・

 そんな苦節6年・・・

 ついにコチサも最年長生になりました。

 明日からは、コチサの家に生徒たちが集まってくる・・・

 お母さんからは新品の「益田」というハンコをもらい、ウキウキして床につきました。

 でもやっぱり朝は辛い・・・



 5時半ごろから、1年生2年生とぞろぞろ集まって来ました。

 でもコチサはまだ寝ています・・・

 6年生の特権です。

 コチサのグループはだいたい10人くらいでしたが、6時前には全員が揃いました。

 3年生の妹も早々と起きだしてその中に混ざっています。

 6時・・・

 ついにお母さんに怒られ、コチサがゆっくりと動きだします。

 そして定刻・・・

 仕度が間に合わなくて、寝巻きのまま庭に出て行きます。



 コチサ

 「おはよう」

 下級生

 「おはようございます」

 コチサ

 「じゃぁ、やろっかぁ」



 大きなラジカセからNHK第1放送が流れます。

 元気に体操をする生徒たち・・・

 あくびをしながら適当にするコチサ・・・

 そして、下級生たちは、「益田」というハンコをもらって帰っていきます。

 最初は、ハンコを押すことが嬉しかったコチサもだんだん飽きて来ました。

 みんなが帰った後、重いラジカセを持って部屋に上がり、また寝ます。

 どうせ寝巻きのままだから、すぐ布団に入れるしね。



 コチサ

 「全く、重いラジカセだなぁ・・・ん?ラジカセ?・・・ん?」

 ずる賢い事に関しては、どうしてこう頭が回転するんでしょうか?



 翌日・・・

 いつもの体操が終わったあと・・・

 コチサ

 「みんなぁ、明日からは9時に集合やで・・・」

 下級生

 「?」



 そして・・・

 気の早い子供は8時に来てしまっていましたが、一応9時に全員が集合しました。

 コチサ

 「じゃぁやるよ」

 ラジカセのカセットテープが回りだしました。

 心地よい汗を流した下級生たちが、ハンコをもらって帰っていきます。



 なんでこんな簡単な事に気がつかなかったんでしょう?

 カセットテープに録音さえしてしまえば、ラジオ体操なんていつだって出来る・・・

 「次は10時に集合させようか・・・」

 コチサの中で朝寝への野望は膨らんでいきます。



 ところが・・・

 「悪事千里を走る」の言葉有り。

 噂というのは早いものです。

 一日と置かずに、各地区のリーダーも真似をしだしました。

 あっという間に、6時集合は有名無実化し、適当な時間に適当にラジオ体操をするチームが続出しました。

 こうなると、学校へ伝わるのは時間の問題です。

 「誰がこんなこずるい事を考えたのか?」

 コチサにとっては、噂が一気に広まった事が幸いしました。

 どこの地区のリーダーが最初にはじめたのかの追求が、難しくなっていたからです。

 そしてそのうちに、

 「手軽に録音できる機械がある時代なんだから、そもそもラジオの放送時間に合わせる必要性があるのか」

 というちょっぴり高尚な議論が出てきて、犯人探しはうやむやになってしまいました。



 結局その夏、コチサチームのラジオ体操は後半の頃には、10時集合まで堕落しました。

 でもほとんどの子供の記録帳は「益田」のハンコで埋まる好成績を残して終了したのです。

 そして・・・

 「ラジオ体操第一!♪チャンチャーカ、チャチャチャチャ〜」

 コチサの小学校の毎年夏休みの恒例だった「ラジオ体操持ち回り教室」は、この年を最後に廃止されたのでした。


<BACK NEXT>