No.109 2001.6.29
6月下旬なのに8月の気候と言われる東京の暑さ・・・
6月は6月の暑さでおさまってくれないと困ります。
亡くなったおばあちゃんを思い出しました。
「渡る世間は鬼ばかり」の「中華料理店・幸楽」のおばあちゃんほどではありませんが、我が家のおばあちゃんも益田家を取り仕切っていました。
おばあちゃんの家訓があり、一家はそれを守らないといけないのです。
その中で、衣替えに始まる、季節の変化への対応がありました。
コタツを入れる日、扇風機を回す日、冬物・夏物を着替える日、などが決まっていたのです。
(まるで学校の制服の衣替えの日みたい)
季節の雰囲気じゃなくて、日にちで決まっていたので、今年のように時期に似合わず、暑かったり寒かったりする年は大変でした。
やっぱり、6月に真夏のように暑かった年がありました。
コチサ(小学生)
「暑いぃー、お母さん、扇風機出してよ」
お母さん
「扇風機は7月3日からやろ、まだあかんわ」
コチサ
「そんなぁーもう我慢できないよ」
お母さん
「みんな我慢しとるんや、お前も我慢しぃな」
コチサ
「嫌だよ、コチサは特に暑がりだから、ほら首なんかベタベタだよ」
お母さん
「そやな、すまんなぁ・・・でもなぁ、出すわけにいかんわ、おばあちゃんが怒るからな」
その一言で、コチサも黙りました。
無理やり出してコチサが涼んでも、おばあちゃんは何にも言わないはずだけど、後でお母さんが嫌な思いをするかもしれない・・・
コチサ
「全く、益田家の決まりって嫌だなぁ!」
元旦の朝6時からの家族挨拶から始まって、大晦日の夜のすき焼きまで、益田家の決まりってちょっと多すぎるんじゃないかって思うくらい存在します。
・・・まぁ大晦日のすき焼きは大好きだけどね。
世間がお蕎麦を食べて年を越す時に、すき焼き食べているんだから。
(それも年に一回の(~o~))
その中でも、扇風機の7月3日とコタツの11月3日という決まりは、その中途半端な日にち設定からしても変なことの代表です。
もう思い出せないんだけど、結局その年はコチサも7月3日まで我慢したんだと思います。
おばあちゃんが生きていた間に益田家にイレギュラーな事なんかなかったのですから。
そんな事を思い出したので、実家に電話してみました。
コチサ
「お母さん、東京は暑いよ」
お母さん
「こっちの方も暑いで」
コチサ
「今年は異常気象だね、お母さん体壊してない?」
お母さん
「全然、クーラーいれてるから、外に出なけりゃ涼しいものよ」
コチサ
「お母さん、まだ6月だよ、扇風機は7月3日からでしょ」
お母さん
「扇風機はな、でもお母さんはクーラーを入いれてるんよ」
コチサ
「屁理屈だなぁ・・・益田家の伝統を守ってないな」
お母さん
「まぁ、暑いからな」
コチサ
「お母さん!、そんなこと言っていたら、頑なに伝統を守り通したおばあちゃんに申し訳がたたないでしょ。私だって東京のこの暑さの中、クーラー入れないで我慢してるんだよ。それもこれも益田家の伝統の為」
お母さん
「おまえは違うやろ」
コチサ
「へっ?」
お母さん
「電気代が無いんやろ」
コチサ
「失敬だな、コチサは益田家の伝統を・・・」
お母さん
「電気代くらい送ってやるから、クーラーつけなさい。無理に我慢してたら体に良くないからな」
コチサ
「お母さん・・・(ピッ!)」
お母さん
「あら、ほんまにつけたんやな、今ピッって音がしたで」
コチサ
「うん、つけたよ。電気代保証されたしね」
お母さん
「益田家の伝統はどないしたん?」
コチサ
「お母さん、伝統は変えていかなくちゃ残らないんだよ。そうじゃないと伝統は伝説になっちゃうんだよ」
お母さん
「全く調子ええな、おまえは」
クーラーの風が心地よく体を包みます。
おばあちゃんが生きていたら、この心地よい風、一緒に感じられたのになぁ〜。
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