No.101 2001.6.11
101回目のコチサニュースです。
毎朝5時に自転車で神田川沿いを疾走しているおじいちゃんに気が付いたのはここ数週間のことです。
(だって早起き散歩を始めたのが、まだ一月足らずだからね)
コチサはだいたい、ウォークキングにジョギングを混ぜた程度のスピードで周回コースを大周りで2周くらいするのですが、そのおじいちゃんは、コチサと同じ方向で周回コースを走っているので、3回から5回くらいコチサを抜いていくことになります。
コチサ
「なんか、周回遅れのランナーみたいでやな感じ・・・それよりあのおじいちゃん、なんでこんな周回コースを毎朝ぐるぐる回ってるんだろ」
コチサは周回コースの中央にある公園で、一休みとストレッチをします。
そしてここの公園は、早朝ウォーキング愛好家のご婦人たちの集合場所でもあるようです。
漏れ聞こえる話に興味を持つと、コチサの耳はダンボになります。
「知ってる知ってる、あのおじいちゃんでしょ、何なんでしょうね」
「私も。この横をあっと言う間に通り過ぎていくの」
「何か、ちょっとねぇ」
「目を合わさないようにしなくちゃねぇ」
どうやら、あのおじいちゃんが話の種になっているようです・・・
でもこういう話の種って、いつも決して「良い想像」が話されなくて、悪いイメージで作られていくのは何故なんだろう?
一休みして、再び散歩を続けるコチサ・・・
件のおじいちゃんに、何度目かに抜かれた時、子猫が飛び出しました。
おじいちゃんは、避けようとハンドルを切ると、バランスを崩し橋側の塀代わりの植木に体をこすり続けて行きます。
コチサ
「危ない」
思わず声が出て、足が出ます・・・
ズルズル、スルズル・・・
おじいちゃんは両足を踏ん張り、植木蜂を何個か落としてしまいましたが、どうやらバランスを立て直し持ちこたえました。
追いつくコチサ・・・
コチサ
「だ、大丈夫ですか?」
おじいちゃん
「あぁ、助かったよ」
コチサ
「お怪我は?」
おじいちゃん
「いや、大丈夫だよ・・・鉢壊しちゃったな」
コチサ
「鉢なんて壊れたっていいですよ、また買えばいいんですから」
おじいちゃん
「あら、おたくの鉢だったのか。そりゃ申し訳ないことを・・・」
コチサ
「い、嫌、違いますよ。私は単なる早朝散歩人です。この鉢は多分、この前の家の方のものだと思いますが・・・」
おじいちゃん
「そうかい。じゃぁまだ朝が早いから、後で出直して来て謝ろう」
コチサ
「あのー、つかぬ事を伺いますが・・・」
おじいちゃん
「なんだね?」
コチサ
「なんで、毎朝自転車でこの周回コースを高速回転しているんでしょうか?」
おじいちゃん
「人がいない朝早じゃないと、スピード出して回れないからね」
コチサ
「おじいちゃん、もしかして昔競輪の選手だったの?」
おじいちゃん
「今の転ばなかった運動神経を見て、そう思ったのかい」
コチサ
「いや、そうじゃなくて。スピード出して自転車でぐるぐる回る理由がそれしか思いつかなかったもんで・・・」
おじいちゃん
「いろいろあるんだよ。若い人たちが車でスピード出して走るようなもんかな。あれでいろんな事が吹っ切れたりするんだろ?まぁあんまり良いことじゃないけどな」
コチサ
「おじいちゃんは自転車暴走族なの?」
おじいちゃん
「人様に迷惑をかけるのはいけないよ。でもこうして朝早く自転車でぐるぐる回ってな、いろいろな事吹っ切ってな・・・」
コチサ
「でも危ないよ」
おじいちゃん
「あぁ、そうだな。でもわしはな、こうして一日を始めないと、もっと危ないんだよ」
コチサ
「・・・」
おじいちゃん
「まぁ、大丈夫だ。今日はたまたま猫を避けてこんな事になったけど、普段はもっと気をつけているからな・・・じゃぁお嬢さん、またね」
そして、おじいちゃんは疾風のようにまた走り去りました・・・
コチサニュース始まって以来の「連載ニュース」通信。
このお話は、次回に続きます。
こんな偶然があって良いのか?
涙なくしては読めない感動の結末、次回コチサニュース102号で感動のお伝えです。
・・・というわけで、ネタ不足のため、お話を2回に分けてみました。
次回この続きを読む前に、皆さまには、コチサニュースバックナンバー、第20号をもう一度読んでいただければと思います。
事実は小説より奇なり!
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