コチサニュース No.90 2001.5.16

 最近人気のコチサチームの音響君、砂太郎のお話・・・

 砂太郎の車は、ボロボロヘコヘコ車です。

 そして駐車場は実家の庭に入れているので、いつも葉っぱや熟しきった木の実などがこびり付いています。

 「汚いなぁこの車」

 先ず、会えば挨拶代わりのこの言葉から始まります。



 でもこの車は、コチサを始め、リスニングマガジンチームにとっては、無くてはならない大切な足です。

 録音機材を運んでのスタジオの往復、ロケ先での録音など・・・

 どこにこんなパワーがあるのかというくらい、こき使われています。

 そしてこの車は、5月の20日を持って車検が切れることになりました。

 一般の常識なら、車検が切れるんなら、更新してまた乗れば良いと言うことになるのですが、砂太郎を始めとしたコチサチームには、この常識が当てはまらないのです。

          

 先ず・・・

 砂太郎

 「この車、2年前に10万円で買ったんです・・・」

          

 そして

 砂太郎

 「もう、車検なんか通らないと思います・・・通すには買った以上のお金がかかります」

          

 ということで・・・

 コチサ

 「じゃぁ、いよいよ新車?」

 砂太郎

 「買わなくちゃダメでしょうね」

 コチサ

 「やったね、もう決めてあるの?」

 砂太郎

 「いや、まだ全然」

 コチサ

 「早くしないとだめじゃん」

 砂太郎

 「そうなんですけど、10万円以下でなかなか売り物が無くて・・・」

 コチサ

 「ま、また10万円で買うの?!」

 砂太郎

 「もっと安くて掘り出し物があれば良いんですけどね・・・」

          

 うぅぅぅ・・・

 また、10万円の車かぁ・・・

 現在の10万円の車も、最初から周りは錆びていて、エアコンは一週間目で壊れてたんだ。

 イベントの帰り道、「ただ汚かった」という理由だけで、パトカーに止められた事もあった・・・

 また同じ道を歩むのか・・・

 でもそういえば・・・

 前回の車の車検が切れた後も、この10万円の車を買うまでに暫くの時間があったんだ。

 (その間、砂太郎は、アルバイトをしてせっせとお金を貯めていたのだ)

 その時にも、何度か録音があった。

 その最初の録音の時。



 スタジオにて・・・

 コチサ

 「砂太郎、遅いね」

 ディレクター

 「そういえば、車無いじゃん、廃車にしたんだろ。どうすんだろ?レンタカーでも借りて来るのかな?」

 コチサ

 「聞いてないけど、多分。せめて駐車場代くらい出そうか」

 ディレクター

 「そうだな・・・早く次の車が見つかればいいな。砂太郎の仕事に車が無かったら、何にも出来ないだろう」

          

 砂太郎

 「・・・遅くなりました」

 やっと到着・・・

 手に機材を抱えた砂太郎がやってきました。

          

 コチサ

 「あーご苦労さま、機材は?運ぶの手伝う?」

 砂太郎

 「いや、あと1回下の駐車場まで取りに行けば済みますから大丈夫です」

 コチサ

 「車、レンタカー?」

 砂太郎

 「いや、知り合いの材木屋さんが貸してくれて・・・」

 コチサ

 「あ、そう、良かったね!」

          

 と言うことで、一件落着。

 その日の録音を終え、スタジオからみんなで機材を運び出し、地下の駐車場へ。

          

 コチサ

 「砂太郎、車どれ?」

 砂太郎

 「あっ、これです」

 コチサ・ディレクター

 「・・・」

          

 コチサは、田舎では良く見ていたけど、東京に来てからは初めて見ました。

 リヤカーです、リヤカー。

          

 ディレクター

 「すな、砂太郎、本当にこれ引っ張って来たの?渋谷から新宿まで?」

 砂太郎

 「はい」

 コチサ

 「道路を歩いて来たの?」

 砂太郎

「 はい。一昨日もコンサートの音響の仕事が入って、これ引いて行って来たんですよ」

 ディレクター

 「多分、そこからは二度と仕事来ないと思うよ」

 砂太郎

 「いや、結構懐かしがってみんな喜んでましたよ」

 ディレクター

 「それと、仕事は別だろ・・・」

 コチサ

 「さっ、早く詰め込んで、みんなで引っ張って帰ろうよ」



 実は、コチサはこの時、胸がちょっぴり熱くなっていました。

 今時、リヤカー引っ張って機材運んで・・・

 嫌な顔をせずにリスニングマガジンの録音にやってくる。

 まぁリスニングマガジンは、儲けるための仕事じゃ無いとコチサもわかってやっているけど、コチサだったらリヤカー引っ張ってまでは来ないかも知れない・・・



 そして・・・

 コチサ

 「じゃ、じゃぁ次は、古今東西、美味しかったけど二度と食べられないものゲーム!・・・コチサからね・・・イベントのホテルで出されたフカヒレ!」

 ディレクター

 「バブルの時に飲んだ、すげー年代物のワイン」

 砂太郎

 「うなぎ・・・ですか」

 ディレクター

 「そりゃ、悲しすぎるだろ・・・」



 ・・・わいわい騒ぐ3人組が、山手通りをリヤカーを押して歩いていました。

 砂太郎が前を引き、ディレクターが後ろを押します。

 コチサはレガッタのコックスのように、ちゃっかり機材と一緒にリヤカーに乗っかっています。

 中央ラインで追い越していく車が、物珍しそうに間抜けな3人組を覗いていきます。



 コチサは小さかった頃、積まれた藁に混ざって、リヤカーで畦道を揺られた事があります。

 でもまさか、この歳になって、それも東京のど真ん中、新宿の山手通りをリヤカーに乗って移動するとは夢にも思っていませんでした。



 結局、砂太郎のリヤカーが、10万円の今の車に変わるまで一月ほどかかりました。

 今度はどうなんだろう?

 また、暫くリヤカーで、スタジオ入りする日が続くのか?

 それとも運良く掘り出し物の車が見つかるのか?



 まぁどっちにしろ、リスニングマガジンの録音は続くし・・・

 取り合えずコチサは、何があっても良いように、古今東西山手線ゲームのネタだけは用意しておこうと決めました。


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