コチサニュース No.87 2001.5.4

 病気っていうのは、とても怖いと思います。

 病気そのものは、お医者さんに任せるしかないのですが、病気のせいで気持ちが落ち込んでしまうのは、周りが元気付けなくてはいけません。

 胆石で病院に運ばれてからというもの、お母さんに元気が無い・・・

 妹からの電話で、

 「ここは一つ、万年元気だけが取り得のコチサが、元気付けてあげなくちゃ」

 ・・・ということで、恒例の電話を・・・



 コチサ

 「あっ、お母さん、元気?ヤッホー」

 お母さん

 「あたしゃ、山じゃないよ」



 おっ、これは聞きしにまさる重症だ。



 コチサ

 「お母さん、山じゃないよ、コチサだよ、コチサ、わかる?」

 お母さん

 「何年、あんたの母親やってるのよ、わかるに決まってるやろ」

 コチサ

 「どう?体の調子は?」

 お母さん

 「なんでもないよ、元気よ、何か用かい?」

 コチサ

 「おかーさん、それじゃ、とりつく島が無いよ。久しぶりの娘からの電話なんだからゆっくり話そうよ」

 お母さん

 「お前、3日前も電話してきたやろ、久しぶりじゃないやろ」

 コチサ

 「まぁそうだけど・・・時にお母さんが元気が無いと、風の噂で・・・」

 お母さん

 「出所がすぐわかる風の噂やな、弟か?妹か?」

 コチサ

 「まぁまぁ、どっちでもいいじゃん、そんなの・・・それでお母さん最愛の愛娘コチサがわざわざ電話をかけた次第です」

 お母さん

 「相変わらず、恩着せがましいな、切るでぇ」

 コチサ

 「ちょ、ちょっと待ってよ・・・元気出そうよ、お母さん」

 お母さん

 「あたしは元気一杯よ、用が無いなら切るでぇ。お母さん忙しいのや」



 フッ、可愛いお母さん、お母さんこそ用が無いのに忙しがっちゃって・・・

 体が弱気になると、こういう娘の電話が嬉しいものなんだ・・・

 お母さん照れ屋だから、素直にありがとうって言えなくて・・・

 でも遠慮して、電話を切ろうなんて・・・

 もっと元気付けるために話してあげよう・・・



 コチサ

 「時にお母さん、田植えの調子はどうですか?」

 お母さん

 「何言ってるの、昨日から始まって大忙しよ。弟も妹もみんな休みをとって手伝いに来てくれてるわよ」

 コチサ

 「(やぶへび)あっ、そう・・・それはご苦労さん」

 お母さん

 「お前も、手伝いに来てくれるんか?」

 コチサ

 「いや、それはその・・・コチサはほら子供の頃から、田植えの手伝い嫌いだったし・・・」

 お母さん

 「でも、ようけ米は食べたな」

 コチサ

 「そりゃ、益田家のお米は世界一ですから」

 お母さん

 「今も、ようけ食べてるな、相変わらずただで」

 コチサ

 「そ、その話は無し・・・妹も弟もお金を払ってるけど、コチサはただって話はもう書いたし・・・」

 お母さん

 「書いたって、どこに?」

 コチサ

 「いや、こっちの話」

 お母さん

 「じゃぁ、切るでぇ」

 コチサ

 「なんか、お母さん全然元気そうじゃない」

 お母さん

 「だから最初から言ってるやろ、元気やって・・・(奥に向かって猫なで声で)あーちょっと待っててやぁ、今行くからなぁ・・・(コチサへ)切らんなら、電話代わるで、お母さんは呼ばれてるんや・・・」



 どゆこと?



 妹

 「あー、コチサ姉、あのな、お母さん元気やで」

 コチサ

 「元気やでって、あんたがお母さん元気が無いからって言ってきたんでしょ・・・それであたしの声聞くと元気が出るから電話してやってって・・・」

 妹

 「そやからな、違ったみたいなんよ・・・暫くあたしが実家に帰らんかったから元気が無かったみたいなんや」

 コチサ

 「どゆこと、それ?コチサよりあんたの方がお母さんは好きなの?」

 妹

 「何、子供みたいなこと言ってるん。姉妹でどっちが好きかも無いでしょ」

 コチサ

 「ある、お母さんはコチサの事が一番好きなの、あんたは二番」

 妹

 「はいはい・・・でな、お母さんはカスミに会いたかったんよ」

 コチサ

 「カスミ?・・・あのお父さんの事を「山じぃじ」、お母さんの事を「山ばぁば」と呼ぶ失礼千万な小娘の事かぁ?」

 妹

 「失礼って、そっちこそ失礼な事言わないでよ。カスミは私の娘よ」

 コチサ

 「じゃじゃじゃぁ何かい・・・お母さんは、コチサよりカスミの方がいいんか?」

 妹

 「うん、多分」

 コチサ

 「コチサはカスミに負けるのか?」

 妹

 「勝ち負けの問題じゃないと思うけど、うん、多分」

 コチサ

 「で、お母さんは今何してるの?」

 妹

 「カスミと遊んでる」

 コチサ

 「コチサの電話を放っておいてか」

 妹

 「うん!」

 コチサ

 「お母さん、元気なんやな」

 妹

 「うん」

 コチサ

 「いいさ、いいさ・・・元気なら・・・コチサは例え何があってもお母さんの事を心配しているから、いつでも戻って来いって伝えてくれる?」

 妹

 「うん。なんか、娘を嫁に出す父親みたいやな」

 コチサ

 「まぁ、そんな心境さ」

 妹

 「じゃぁ、切るでぇ」



 大都会の喧騒の中、必死で母を思う娘の叫びは、この人ごみにかき消されて届かないのか・・・

 突然現れた、謎の生物「カスミ」に、お母さんは身も心も奪われてしまうのか・・・

 まぁ、いいけど、ちょっと冷た過ぎるんじゃないかい、お母さん


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