No.86 2001.5.2
近所の100円スーパーのサービス品は、パンの耳50円です。
ところがこのパンの耳、半端じゃないのです。
はかってみました。
横は13センチ、縦に至っては38センチもあります。
そして何とこれが9枚入っています。
食べ応えがあります。
そして一枚当たり6円未満・・・
これは買いでしょう。
ただパンの耳というところが、料理のバリエーションをせばめてしまう不安が・・・
でも何とかなるだろう、買わなきゃそんそん・・・
ということで、大きさと長さだけではフランスパンにも負けないパンの耳を手にレジに並びました。
・・・と目の前にもパンの耳を持って並んでいる女性が・・・
コチサ
「パンの耳ですね」
女性(ハナちゃんと言う名前が後で判明)
「えぇ、安くて助かるんですよね」
コチサ
「それに美味しいですよね」
ハナちゃん
「良く買われるんですか?」
コチサ
「今日で2回目です、前の時は3日持ちました」
ハナちゃん
「私はだいたい、一週間は持ちます。蜂蜜かけたり、油で揚げたりすると目先も変わりますよね」
コチサ
ハナちゃん
「ひきわり納豆ですか?」
コチサ
「えぇ、これをこのパンの耳にうすーく伸ばして、はじからクルクル巻いていくんです。でっかいロールパンのようなのが出来るんです。それを巻き寿司の納豆巻きだと思ってかぶりつくとおいしいんですよ」
ハナちゃん
「うわぁー、アイデアですね。私もやってみよう」
コチサ
「あいにく、最後の一個をコチサが持ってきてしまいました。二個入りなので二人で分けましょう」
ハナちゃん
「ありがとうございます」
コチサ
「お互いさまです・・・時に劇団の方ですか?」
ハナちゃん
「えぇ、そこの○○座の、わかりますす?やっぱりわかりますよね、今時こんな恰好してパンの耳なんか買ってるの、劇団員くらいですよね」
コチサ
「恰好じゃなくて、醸し出している雰囲気がやっぱりわかるんですよね」
ハナちゃん
「あなたも、劇団の方ですか?」
コチサ
「いぇ、パンの耳を買う売れない大道芸人です」
ハナちゃん
「大道芸の方ですか?・・・じゃぁある意味お仲間ですよね」
コチサ
「お互い、夢の途中。頑張りましょう!」
ハナちゃん
「そうですね、頑張りましょう!」
50円の巨大パンの耳が取り持つ、友情の花。
コチサの売れない大道芸は望んだ道だから辛くもないけど、下積みの劇団員は大変ですよね、という言葉に、
「私も望んだ劇団の道だから辛くないんですよ」
と笑顔が輝きました。
その会話にちょっぴり照れくさくなったコチサは、
「なんか1970年代の会話ですよね」って答えたら、
「その頃はまだ生まれていません」
って言われてしまいました。
おいおい、それじゃぁ、せっかく開きかけた友情の花が一気にしぼんじゃうぞ、ハナちゃん。
ハナちゃん
「私、劇団のアパートに住んでいるんです。今度遊びに来て下さいね。パンの耳パーティーしましょう」
コチサ
「ありがとうございます、ひきわり納豆もって遊びに行きます」
ハナちゃん
「じゃぁ、夕方からの稽古が始まるのでまた」
この街は、小劇団が結構いっぱい存在してます。
それぞれが個性を持って、それぞれのカラーを活かした活動をしています。
ハナちゃんの劇団が、どんなテーマを持ってどんなお芝居をするのかは知りませんが、パンの耳が繋いだ縁、応援したくなりました。
街を歩けば人に当たる。
人に当たれば、元気に当たる。
元気に当たれば、勇気がみなぎる。
新しい出会いが、皐月の季節の幸運をコチサに予感させてくれました。
|