コチサニュース No.75 2001.4.6

 事務所の近くの小学校が入学式です。

 お父さんやお母さんに手をひかれた新一年生が、続々と集まって来ています。

 子供の笑顔もさることながら、お父さんお母さんの笑顔の方が輝いていて、思わず「おめでとうございます」と声をかけてしまいたくなります。

 そういえば・・・

 妹の子供も今年新一年生です。



 コチサ

 「かすみ、春から小学生だね、おめでとう」

 かすみ

 「あー、コチサぁー、ありがとう」

 コチサ

 「もう準備は揃った?」

 かすみ

 「うん、ランドセルは山じぃじが買ってくれた」

 (註:山じぃじはコチサのお父さんの事、詳細は第68号参照)

 コチサ

 「ふーん」

 かすみ

 「洋服と靴は、おじいちゃんとおばあちゃんが買ってくれた」

 コチサ

 「ふーん」

 かすみ

 「机はお父さん」

 コチサ

 「ふーん」

 かすみ

 「あと、おばちゃんもおじちゃんも、みんな買ってくれた」

 コチサ

 「ふーん、で、コチサからは何が欲しいの?」

 かすみ

 「コチサからはね、何にもいらないの」

 コチサ

 「どうして?コチサもかすみにプレゼントしなくちゃ」

 かすみ

 「コチサはね、貧乏だから何ももらっちゃダメだって」

 コチサ

 「誰が言ったの?」

 かすみ

 「お母さん」

 コチサ

 「ふーん、でも大丈夫だよ。コチサにだってかすみに贈り物するくらいのお金はあるよ」

 かすみ

 「でも、いらない」

 コチサ

 「何で?」

 かすみ

 「恩きせがましいから・・・」

 コチサ

 「だ、誰が言ったの?」

 かすみ

 「山じぃじ」



 出たな、山じぃじ・・・

 「あいつに贈り物などもろたら、ろくな事が無い。いつまでも恩着せがましく何あげただの言い続けられてかなわんわ」

 ・・・うーん、その光景が手に取るようにわかる・・・



 コチサ

 「だ、大丈夫だよ、かすみ。コチサも何かあげるよ。何がいい?」

 かすみ

  「いくら持ってるの?」

 コチサ

 「えっ?・・・そうだな二千円から三千円くらいかな・・・」

 かすみ

 「じゃぁ、二千円で買えるやつでいい、なんでもいいよ、ありがとう、じゃぁね(ガチャン)」



 ・・・あてにされていないのは知っていたけど、全く期待もされていない・・・

 二千円か三千円と言ったら、安い方で手をうってきた。

 情けないやら、ほっとしたやら・・・



 東京では、葉桜になりかけの桜並木を新一年生が歩いています。

 香川では、もう葉っぱだけになった桜の木の下をやはり、新一年生とその親たちが歩いていくのでしょう。

 その道は、かつて小学校高学年だったコチサが、新一年生になった妹を連れて歩いた道です。

 その妹が、今は母親として、新一年生の娘を連れて歩いています。



 あの頃、妹を連れて学校に行く時、いつもコチサの手には百円玉が握られていました。

 もし山道で妹が歩けなくなったら、バスを待って帰ってくるように・・・

 というお母さんからの預かりものです。

 結局それはお母さんのとり越し苦労で、100円玉は一度も使うことがなかったけれど・・・

 もしかしたらこれから毎日、妹もそうやってかすみの手に小銭を握らせて学校に送り出すのかもしれない・・・

 決めた、かすみへの贈り物は100円ショップの小銭入れにしよう!

 わーい、1900円浮いたぞぉー


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