コチサニュース No.73 2001.4.2

 新年度となりました。

 この新年度というのは、企業人の方には1月1日に匹敵する程の、心新たに迎える日だと伺っております。

 しかしフリーの仕事屋コチサにとって、「仕事下さい」は年中行事なのであんまり実感が無く、とりあえず誘われたお花見に顔を出してきました。

 マイムの師匠が主宰するこのお花見は、朝から晩までいつ来ていつ帰っても自由のお花見大会です。

 もっと言えば、誰が来ても誰が来なくても自由です。

 誘われた人も、誘われなかった人も、なんでもかんでも有りのお花見大会です。

 とりあえず誘われたコチサは、「昼前くらいに顔を出して、午後2時頃には上がる」と自ら予定を立て、桜満開の某公園に出かけました。

 やっぱり・・・

 大道芸人が集まるお花見大会だもん・・・

 午前中に人がいるわけないよなぁ・・・

 集合場所にいるのは、ディレクターズチェアーに腰を降ろす、年輩のご婦人だけ・・・



 コチサ

 「おはようございます」

 ご婦人

 「おはよう」

 コチサ

 「まだ誰も集まってきませんね」

 ご婦人

 「まぁ気にしないで、おにぎり食べる?」

 コチサ

 「はい、いただきます」

 ご婦人

 「あたしが握ったのよ、どう?」

 コチサ

 「はい、美味しいです」

 ご婦人

 「で、あんたは何持ってきたの?」



 参加者は一応、一人一品持ち込みが唯一の約束事です。



 コチサ

 「あのー、アボガドを・・・」

 ご婦人

 「アボガド?・・・これどうやって食べるの」

 コチサ

 「お奨めは、短冊型に切ってわさび醤油で食べると、お刺身のトロのようで美味しいんですが・・・」

 ご婦人

 「じゃぁ、だれかが醤油とわさびを持ってくるのを待ちましょうね」

 コチサ

 「そうですね・・・で、桜満開で良かったですね」

 ご婦人

 「そうね、ところであんた誰?」

 コチサ

 「コチサです!・・・今日の主宰のチャックの弟子です」

 ご婦人

 「へぇーあんたが・・・一年でまだジャグリングが3つだけって言う・・・」

 コチサ

 「え、えぇ・・・でもコチサの目的はマイムの方ですから・・・」

 ご婦人

 「でもマイムもまだまだじゃない・・・」

 コチサ

 「あのー、ときにご婦人は?」

 ご婦人

 「あたし?あたしはチャックの母親よ」

 コチサ

 「えっ?師匠のお母さまですか。はじめまして、コチサです」

 ご婦人

 「はい、よろしく」

 コチサ

 「師匠は、お母さまに今日のお花見の席取りをお願いしてるんですか?」

 ご婦人

 「別に席取りってわけじゃないけど、私は天気がいいとよくここまで散歩に来るからね、ついでに場所をとっているだけよ・・・それよりそのアボガド貸してみて・・・ほら、ほら、ね」



 アボガドが3つ、起用に宙を舞います。



 コチサ

 「すごい、さすが師匠のお母さまです。アボガドジャグリングですね」

 ご婦人

 「こんなの、私たちの世代の人間はね、お手玉って言ってみんな出来るのよ、ほら、ほら、ほら、ね」

 コチサ

 「そういえば、コチサのおばあちゃんも、「おじゃみ」って言ってお手玉投げてました」

 ご婦人

 「そうよ、だから誰でも出来るの。ジャグリングなんて名前が付くから難しく感じるだけで、お手玉と思えば簡単よ。ほらやってみなさい」



 まさか、師匠のお母さんからも稽古をつけてもらうとは・・・

 アボガドが何度も地面に落ちて、もうぼこぼこ。

 でも、教え方はお母さんの方が上手です。

 ほどなくコチサの手の中で、アボガドがリズムをとって跳ね出しました。



 ご婦人

 「そうそう、そんな感じ、コツつかめた?」

 コチサ

 「えぇ、何となく、肘ですね、肘」

 ご婦人

 「そうね、肘よ肘の使い方ね」

 コチサはアボガドで、師匠のお母さんはおにぎりで、ジャグリングの競演です。

 「なんだこの二人?」

 通り過ぎる人が怪訝な顔で見ていきます。

 ひとしきり汗をかいたところで、午後2時になったので、コチサはおいとますることにしました。

 結局、この時間ではまだ誰も集合していません。



 コチサ

 「じゃぁ、コチサはそろそろ失礼します。楽しい一時をありがとうございます」

 ご婦人

 「えぇ、チャックには伝えておくわ・・・ねぇこのアボガド持って帰る?ちょっとぐちゃぐちゃになったけど」

 コチサ

 「そのくらいが一番美味しいです。是非師匠に食べさせてあげて下さい。弟子の血と汗の練習の成果が詰まっています。嫌がっても食べさせて下さい」

 ご婦人

 「ありがとう、たとえ泣き叫んでも食べさせるから安心していいわ」

 コチサ

 「では、失礼します」



 結局、参加者の人とは誰とも会えないお花見大会だったけど、何故か楽しく嬉しい一日となりました。

 師匠は、多分今50才から55才くらいだから、お母さんは80才近いのかも知れない。

 少なくてもコチサの倍以上は生きているから、コチサの倍以上の元気とパワーがあって当然です。

 コチサは、こういう単純な比例式が成り立つ歳の重ね方をされた人に出会うのが大好きです。

 毎日毎日元気に暮らしたら、20才の人より40才の人が元気が当たり前、40才の人より80才の人が元気が当たり前・・・

 新年度の初日は、ステキな人に出会えて、平成13年度のコチサの未来がとても明るく希望に満ちた一日となりました。


<BACK NEXT>