コチサニュース No.63 2001.3.9

 虫が知らせたんだと思います。

 一ヶ月ぶりに、それも昼間に実家に電話をしてみました。

 誰も出ません。

 いつもなら、あぁきっと何処かに出かけたんだろうと思うところですが、何か体の中から囁く声が聞こえます。

 絶対追いかけなければならない、そんな気持ちに迫られます。

 弟の会社に電話してみました。



 コチサ

「お母さん、知らない?」

 

 「実は今連絡があって、病院に行ったんだ」

                

   数日前から、お腹の辺りに激痛が走り、二日前についに我慢できなくなり病院に行ったそうです。

 とりあえず薬をもらって帰って来て一安心もつかの間、その朝医者から直接に電話がかかってきたとのこと・・・

 お母さん

 「すぐ来て来れっていうから取り合えず行ってくるわ。万一の用意で入院の支度をして来てくれっていうから、その時は家のこと頼むで」

 そう言って弟の携帯に電話がかかって来たそうです

                

 コチサ

 「それで、あんたは病院行かんの?」

 弟

 「ボクは会社があるし、それにお父さんが付いてるから、心配やけど何かあったら連絡来るから」


 コチサは妹の嫁ぎ先に電話をかけます。


 コチサ

「もしもし、あんた知っとった?お母さんのこと」

 

 「一昨日、病院行ったんやろ」

 コチサ

 「なんや知っとったのか。でも今日病院に呼ばれたのは知らんやろ、すぐ行ってやって」

 妹

 「そんなぁ、まだ何があったかわからんのやろ。お父さんも付いてるし・・・それに同じ香川言うても、ここから2時間もかかるんよ。子供もおるし急には出れんのよ」



 コチサはすぐに、旅行会社に電話しチケットの手配をしました。

 もうその時は涙がぽろぽろ・・・

 「お母さん・・・」

 準備が整い出かけようとした時、また電話



 妹

 「今、病院に問い合わせたわ。大丈夫やて、家に戻ったと先生が教えてくれたわ」

 コチサ

 「ありがと・・・よう病院がわかったな」

 妹

 「何言ってんの、あそこらで大きな病院なんて二つしかないやろ。どっちかかければ当たるわ」

                

 病院に電話かぁ・・・

 どうして気が付かなかったんだろう。

 なんか妹や弟の方が冷静だ・・・

 言い分も向こうに分がある気がする・・・

                

 その後、コチサはお母さんがいつ家に着くかと、5分おきに電話を鳴らし続けます。

 延々と一時間も経った頃、

                

 お母さん

 「もしもし・・・」

 コチサ

 「あっ、お母さん?」

 お母さん

 「あっサチコ、どないしたん?元気なん?」

                

 お母さんは、とぼけています。

 自分が病院から帰って来たことなんか、これっぽちも出しません。

 いつもなら・・・

 「こらこら、こっちは何でもお見通しですぞ」

 と冗談の一つも言うコチサですが・・・

                

 コチサ

 「お母さん、何言ってるの?大丈夫なの?」

 お母さん

 「あら、知っとったの?何で知ったん?」

                

  結局お母さんの激痛のもとは、胆石ということでした。

 肝機能の問題を疑った先生が取り合えず確認の為、呼びつけたものでした。

                

 コチサ

「お母さん、痛かったやろ、まだ痛むん?」

 お母さん

 「全く、お前だけには知らせんといてと妹弟たちにも、強く言っとったんのになぁ」

 コチサ

 「どゆこと?それ?」

                

 最初に病院に行くことになった時、我が家では、コチサにだけは言うなと箝口令がひかれたそうです。

 「あいつに言ったら、何でもないことでも大事になる」

 お父さんの、きついお達しがあったそうです。

 まぁ、案の定そうなったのですが・・・

                

 コチサ

 「なんで仲間はずれにするんだよ」

 お母さん

 「やっぱりお父さんの言う通りや、弟の会社や、妹の嫁ぎ先まで電話して大騒ぎして・・・」

 コチサ

 「それはお母さんが心配だったから・・・」

 お母さん

 「大騒ぎしなくても心配のし方はあるんよ。タローやハナコだってお前と同じくらい心配してくれているんよ、それも静かにな」

                

 あーぁ、心配したのに怒られて・・・

 きっとこの後、我が家では、お父さんによって、長女コチサに対する箝口令が一層強く徹底されるんだろう・・・

 そうだよ、そうだよ、コチサはとにかく大騒ぎしましたよ。

 でもね、家族の誰かが具合悪いなんて聞くと、何も手に付かなくなっちゃうんだよ。

 お父さんがいくら箝口令を敷いたって、不思議とコチサは今回のように、かぎつけるし結果がわかるまで大騒ぎするんだよ。

 ただ、もうこれからは、妹や弟には迷惑をかけないよ。

 旅行会社に連絡してから4時間で、そっちに着くことがわかったからね。

 何か異変を感じたら先ず、飛んでいくことにするよ・・・

 ふっふっふっ・・・

 このコチサ様を仲間外れにしようたって、そうはいかないのだ。

                

 小さい頃、両親は大きなソファーのようにコチサを包んでくれる、安心と言う名の強い強い宝物だった・・・

 そして今、両親は相変わらず大事な大事な宝物だけど、いつしかガラス細工のように大切に守ってあげたい存在になっている・・・

 あまりに少しずつすぎて、その変化が心の中で行われている事に気づきもしなかった。

 自分が成長していく事は、両親が年をとっていくことでもあるんだ。



 再び電話が・・・

 「あのー○○ツーリストですが、先ほどご予約いただいた、東京−高松便の・・・」

 コチサ

 「あーごめんなさい、キャンセルということで・・・


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