コチサニュース No.038 2001.1.10

 今年の仕事始めは、元旦にお隣の徳島県に行って自分がパーソナリティーを務めるラジオ番組を聴くことでした。

 FM徳島のみの放送の為、コチサが実際のON AIRを聴くことは、こういう機会(実家に帰る)でもないと不可能なのです。

 放送が始まって、2度目のお正月を迎える今年も早速出かけました。

 放送日の月曜日が元旦のためか、それとも家族にとってはもう興味の無いことなのか、去年は家族全員で聴きに行ったのに、今回は弟と二人きりの旅となりました。

 車が走り出して約1時間、大きな山を越えるともうそこは電波受信圏。

 小高い山の中腹に、車を止めて放送を待ちます。



 浩二

 「姉ちゃん、まだ20分もあるわ。なんか飲み物飲む?」

 (がさがさコンビ二袋をあさる弟、浩二)

  コチサ

 「浩二、ガサガサ音を立てない。もっと神妙にしてなさい」

 浩二

 「神妙にって言ったって・・・放送が始まったらちゃんと聴くよ、でもまだ20分もあるんよ」

 コチサ

 「お前、初日の出見て来たやろ。日の出の一時間も前からたくさんの人が集まって、ずーと厳粛にその時を待っとったやろ、それと同じや」

 浩二

 「でも、ここへはラジオを聴きに来てるんやで、初日の出を見に来てるんやないで」

 コチサ

 「同じや。姉ちゃんにとっては、初日の出と同じくらい厳粛な気持ちや。だから浩二も一緒に心を入れて、その時を迎えんとな、わかった?」

 浩二

 「うん、わかった。でも姉ちゃん、姉ちゃんにとってそんなに大事なものやのに、なんでお父さんも、お母さんも、今年は来いひんかったんやろな?」

 コチサ

 「月曜日がたまたま元旦に重なって、忙しかったからや」

 浩二

 「去年は、来てくれたのにな」

 コチサ

 「あれは、1月の3日だったからや」

 浩二

 「つまんなかったんやろな」

 コチサ

 「へっ?」

 浩二

 「元旦でも3日でも、面白かったら聴きにくると思うねん、な、きっとつまんなかったんやろな」

 コチサ

 「まっ、わ、若者の番組やから、わからんのやろな」

 浩二

 「そうかな?でもお父さんもお母さんも、若者向けのテレビ番組とかようけ見とるで」

 コチサ

 「あっ、ほら、ほら始まった」

           

  −FM徳島「ハートクラブ・酒物語」ON AIR 中−

           

 浩二

 「(スイッチをプチッ)面白かったでぇ。良かったでぇ」

 コチサ

 「ありがとう」

 浩二

 「今の番組、何人くらいの人が聴いていてくれたんやろな?」

 コチサ

 「さぁ?」

 浩二

 「ありがたいことやな」

 コチサ

 「そだね。ありがたいことやね」

 浩二

 「お父さんもお母さんも、今年は聴いてくれへんかったけど、その他のたくさんの人が聴いてくれたんやから、姉ちゃんは幸せもんやな」

 コチサ

 「そうだね、コチサは幸せものだね」

 浩二

 「(カーステレオをガチャガチャ)ほら、姉ちゃん、カセットテープにちゃんと録音しといたで、後でお父さんとお母さんにも聴いてもらおう」

 コチサ

 「・・・ありがとう、浩二。お父さんとお母さん聴いてくれるかな?」

 浩二

 「姉ちゃんの前では、そんなつまらんものとか言って聴かないと思うけど、きっと後でこっそり聴くでぇ」

 コチサ

 「そかな?」

 浩二

 「うちが初めてビデオデッキ買ったん覚えとるやろ?あれやって、姉ちゃんがテレビに出るっていうんで買ったんやで。それまでは、ボクが何度も欲しいって言っても買ってくれへんかったんやで」

 コチサ

 「・・・」

 浩二

 「お父さんな、NHKじゃないと何も認められへんみたいな事いってるけど、あれ嘘やで。姉ちゃんの出た民放のテレビ、一人で何回も見よったからな」

 コチサ

 「死んだおばあちゃんからも、その話聞いたよ」

 浩二

 「徳島の知り合いには、「ハートクラブ」聴いてくれって話したりもしちょうしな。去年聴きに来て、ちょっと目が潤んでしもうたから、今年は恥ずかしくて聴きにこれへんかったのが本当のところやろな」

 コチサ

 「そ、そっか(急に元気になるコチサ)・・・浩二、お前もこんな素敵な姉ちゃんを持って、鼻高々やろ」

 浩二

 「へっ?・・・もしそうなら、ボクの鼻、もうちょっと高くなっているはずなんやけどな」

 コチサ

 「照れるな、照れるな・・・でもな、一つ心配なんは、あんまり素敵な姉を持つ弟は、その姉が理想の女性になってしまうから、なかなか結婚出来へんていうやろ。姉ちゃん、生まれながらに罪なことしてるんやろか?」

 浩二

 「姉ちゃん、その話題は墓穴っちゅうもんと違うやろか。お母さんに言ったら、上が嫁がなくちゃ下が行かれへんって、嫌な思いをするんは姉ちゃんのような気がするんやけどな」

 コチサ

 「さぁ!、山を越えて我が家に向けてしゅっぱぁ〜つ!」



 自分の声を聴いてくれる人がいる。

 電波に乗って届くコチサの声を、どこのどんな人たちが、どんな気持ちで受け止めてくれるのだろう。

 こうして、自分がリスナーになって自分の声に耳を傾けていると、その感謝の気持ちは一層大きく、かけがえのないものに思えてきます。

 「自分の声が、これまでも、これからも、たくさんの人の心を、暖かく和ますように・・・」

 ちょっぴり感傷的な元旦の夕暮れ、急な坂道にちょっぴり車酔いしながら、田舎道の道祖神にお願いをしたコチサです。


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