コチサニュース No.037 2001.1.8

 元旦、思いもかけない年賀状が届きました。

 16年前の自分からです。

 去年の年末のニュースでは取り上げられていたようですけど、1985年、茨城県で開かれた「つくば科学万博」での催し「ポストカプセル2001」で投函された手紙がコチサにも届いたのです。

 16年前、自分が「つくば万博」に行ったことも、ポストカプセル2001に16年後の自分への手紙を投函したことも忘れていました。



 ー16年前、茨城県「科学万博会場」にて・・・

  コチサ

 「おかちゃん、すごい人だね。やっぱり東京ってすごいね」

 おかちゃん

 「サッチ、ここは東京じゃないよ。茨城県だよ」

 コチサ

 「そうかぁ、じゃぁ東京に行ったら、もっと人がいっぱいなんだね。息つけるのかな?酸素全部とられちゃうかもね。あぁ早く東京に行きたいな。ね、おかちゃん」

 おかちゃん

 「それより、今は科学万博に来たんだから、こっちを楽しもうよ」

 コチサ

 「そだね。ねぇ、おかちゃん、原宿行ったらラフォーレ行こうね」

 おかちゃん

 「あ、あれ、ポストカプセル2001だって、面白そう。行ってみようよ」

 コチサ

 「うん」

 (会場内に響きわたる、若い足音)

 おかちゃん

 「ここに手紙を投函すれば、16年後の2001年の元旦に届くんだって・・・なんかロマンチックね」

 コチサ

 「まぁ注目度を集める為の、郵政省の集客作戦だね」

 おかちゃん

 「サッチ、現実的。ぜんぜんロマンチックじゃない。じゃぁあたしだけ書こうっと」

 コチサ

 「ちょ、ちょっと待ってよ。あたしも書くよ」

 (会場内に響きわたる、青春の筆の音)

 おかちゃん

 「出来た!さてこの袋に入れて投函しようっと」

 コチサ

 「こっちも出来たよ。これはお父さんとお母さんへ、そしてこれは16年後の世界のMCサッチ様へ」

 おかちゃん

 「ねぇ、サッチ、住所何処にする?」

 コチサ

 「へっ?・・・そうかぁ16年後の住所かぁ・・・」

 おかちゃん

 「16年後に何処に住んでるかなんてわかんないよね」

 コチサ

 「あたしは、南青山は決まっているんだけど、細かいところまではなぁ・・・」

 (註:そのころコチサは、東京と言えば「南青山」という地名が一番おしゃれでかっこいいと思っていたのだ。行ったこともないくせに)

 おかちゃん

 「16年後に、名前も変わってるかもしれないよね」

 コチサ

 「そだね、結婚とかしちゃってね、くっくっくっ」

 おかちゃん

 「サッチ、気持ち悪い笑いかたやめてよ」

 コチサ

 「じゃじゃぁさ、今の住所にしとけばいいよ。うちもおかちゃん家も実家は16年経ってもかわらないよ。2001年の元旦になって届いた手紙を、お父さんかお母さんに、嫁ぎ先の住所に送ってもらえばいいんだよ」

 おかちゃん

 「そっか、そうだね、そうしよう」



 その後、コチサ達は、東京へ向かい、渋谷、原宿とわいわい遊び騒いだので、この茨城県の「科学万博」の思い出は、すっかり記憶から消えてしまったようです。

 西暦2001年の思わぬプレゼントは、稚拙な文字で、しかししっかりと確かに、夢と希望が書き綴られていました。

 お父さんとお母さんへの手紙には、健康で今この手紙を読んでいてくれる事への感謝と喜びが・・・

 自分自身へ宛てた手紙には、しっかり世界のMCになっているか?

 日々精進を忘れてないか?

 と、叱咤激励がしたためられていました。

 16年前の幼いコチサが16年後の自分に宛てた手紙には、予想に反して甘い夢やロマンチックな言葉に彩られることの無い、心の底からの一途な思いがありました。

 16年前からコチサは、「世界のMC」という言葉を言い続け、そして16年後もその野望は完結しないことを知って、日々の努力を自分自身に言い続けていたようです。

 今では覚えていないことだけど、中学校の一放送部員にすぎなかった小娘が、一枚の白紙を目にしたとき、遠い未来を初めて真剣に考えたのかもしれません。

 2001年の贈り物。

 コチサは16年前の自分の言葉を真摯に受けとめ、目の前に開けた21世紀に一層の精進を誓うのであった。



 ところで後日談・・・

 おかちゃんとの電話。

 コチサ

 「おかちゃん、16年前の自分からの手紙届いた?」

 おかちゃん

 「ううん、まだ。実家には届いたみたいだから、転送して送ってもらってるとこ。サッチは?」

 コチサ

 「こっちはおかちゃんのように名前も変わらなかったし、正月と言えば実家にいるから元日に読んだよ」

 おかちゃん

 「・・・でも、サッチだって、名前変わったじゃん。コチサになったじゃん」

 コチサ

 「ま、まぁね。名前ひっくり返しただけだけどね」

 おかちゃん

 「そ、そんなことないよ、すごいことだよ。だってもし「たまこ」とか言う名前だったら、ひっくりかえしたら「こまた」だよ。ちょっと恥ずかしくてひっくりかえせないじゃん」

 コチサ

 「ありがとね。電話切るね、ばいばい」



 同じ放送部にいた同級生のおかちゃん。

 「同じ夢を語った思い出を大切にする」と言って、大阪に嫁いでいったおかちゃん。

 今では二人の子供のお母さんで、コチサのHPを楽しみに覗きに来てくれているおかちゃん。

 何年か前、コチサの大阪公演を見に来てくれたおかちゃんの言葉、

 「サッチ、幸せっていっぱい、たくさんの形があるから嬉しいよね」

 コチサもそう思う。

 だから、いろいろ違うたくさんの人たちの幸せを見ることが、楽しい気持ちになれるんだよね。

 幸せの道が一本だけの道だったら、渋滞の高速道路みたいでイライラしたりストレスが溜まっちゃうもんね。

 西暦2001年。

 今年もよろしくお願いいたします。


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